第29話 村人のリュウ

 ゴラス・マゴットを追い返すことが出来た大山リュウは、晴れて全裸男から村を救った英雄となった。


「いやぁ、君の事を誤解していたようだ」

「村を救って頂きありがとうございます」


 犯罪者から英雄へクラスチェンジしたリュウは村人たちから感謝されている。

「いえいえ、当然のことをしたまでですよ!」

リュウは満更でもなさそうにしている、今までの仕打ちも許したようだ。


「あ、マキ~、無事に釈放されたぞー」

マキの姿を発見したリュウが彼女に手を振った。

彼女は微笑んだ後リュウの元へ向かった。

「よかったですね、疑いが晴れて」

「ああ、これでようやく一緒になれるな!」

リュウは純粋無垢な表情でマキに伝えた。

マキは顔を真っ赤にし、その彼女の事を周りの女性陣が茶々を出し始める。

「ん? どうしたんだマキ?」

リュウはまだ自分が言った事を理解できていないようだ。


 「おいリュウ、告白したところ悪いがそろそろ時間じゃないのか?」

俺は親切にリュウに教えてやった、そろそろリュウの【変幻〔人間〕】が解ける頃だろう、リュウも思い出してくれたようだ、「やばっ!」と言った後、急いで食べかけの料理と飲み物を胃袋に流し込んだ。

「すみません皆さん、また今度顔を出しますので! 牢屋の修理はしますので」

リュウは大急ぎで山奥の中に消えた。


「い、一体どうしたというのだ。」

「しかし、真面目な男だ、我々を助けるために牢屋を破壊したのだろうに、その修理をすると約束したぞ、別にいいのに……」

「そんなことはいいのよ! マキちゃん、彼とどういう関係なの?」

「そうそう、マキちゃんあの人と何処までいったの?」


村人全員がマキに集中攻撃し始める。

その時、山の奥からドラゴンの咆哮が響き渡った。


「ド、ドラゴン、戻って来たのか?」

「い、一体何が目的なんだ?」




 ドラゴンに戻ったリュウは、またどっしりと山から村を見守っている。

「よう、英雄さんよ、それともシンデレラって言った方がいいか?」

「ロード、タイミング悪くないか、せっかく楽しんでいたのに……」

リュウは不満を俺に言ってきたが、仕方がない、時間切れなんだから、MP切れなんだから。

「まあ、MPが回復するまでじっと待っている事だな、ドラゴンのお前はそうやって回復を待つしかない、ポーションとかあれば回復する事も出来るが、この村にそんな薬なんてないだろうからな。」

「あ~、またダラダラ生活を送るのか~」

「まあ、気長に待つんだな、まあ檻に入っていた時より楽しいだろ、ほれあの子が来たぞ」

俺は昼寝をしようとするリュウの目蓋を強制的に開かせて、彼女の事を見るように向けた、リュウは大きい体を起こして、しっかりと彼女の方を見る。

「なんだか、久しぶりだね」

「はい、確かに一緒になれましたね……」

2人は久々に沢山会話した。

俺は空気を読んでこの場を離れることにした。




 数日後、MPが全回復したリュウは再び村に戻った。前回宴を途中退席したことを誤った後、牢屋を壊してしまった弁償をしたいと伝える。村長は「そんなこといいから」と許してくれた。


「ただ、もし行く当てがないのであればこの村の用心棒になって欲しい」

「用心棒?」

「ああ、この村は近隣の国に税を払っている訳ではないからな、魔物や族に襲われた時は自分たちで守らなければならないのだ。自給自足の生活、金はほとんど払えんが衣食住は保証しようどうかね?」

 

村長はうるうるした目でリュウの返答を待っている。

リュウほどの奴がいれば村を襲ってくる奴なんていないだろう。

しかし、老人の必死のお願い顔より若い女が頼んだ方がいいだろうよ、リュウみたいな男は特に、まあでもこいつが断る理由は無いだろうよ。


「わかりました、受けましょう!」

「おお、ありがたい、ありがたい」

村長は深く深く、リュウにお礼を言った。


「ところで、住む場所なのだが、そなた紅林マキちゃんと仲が良いのか?」

「え、ええ、まあそうですけど……」

「そうか、マキちゃんを見る限りお2人さんの仲は良好と見た、どうかね紅林家の……」

「え、いいんですか? いや、そんな……」

「隣の空き家が空いているのだ、そこに住んでみるのはどうだろう?」

リュウが一瞬で真面目な顔に戻った。

コイツは何を期待しているんだろうか、むしろ隣に住まわせてくれてラッキーだろ


「あ、はい……そちらの物件を一度拝見させてください」

「そうかそうか、では今から見に行こう」

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