第28話 ゴラス・マゴット

 先頭のボスであろう大男は近づくにつれニヤケが激しくなってきた。あの邪悪な笑みは、着いた後男どもをどう殺してやろうか、若い女は何人いるのだろうか、最低な事を考えているヤツの顔だ。


「おい、若い娘は結構いるんだよな?」

「はい、しかも俺らが行った時は村に強い奴はいなさそうでした。」

前回リュウに返り討ちにあった男が、へこへこしながらボスの機嫌を取っている。

「それは良かった、安全に人さらいが出来るってもんよ」

「へ、へえ……」

「そんな雑魚村の娘1人すら攫う事が出来なかったのか?」

いきなりボスは失敗した男を睨み付ける。

男は恐怖で尻もちを付いてしまった、そんな情けない男を見れて満足したのか、人さらい一行は歩みを続けた。

「まあ、ドラゴンがいたんじゃ仕方がないよな!」

「え、ええ、ほんとその通りです」



 カンカンカンと村の鐘が鳴り響く、大勢の武装した男たちの存在がバレるのに時間は掛からなかった。「敵だー」と、鐘を鳴らしながら村の男が叫ぶ、その声に答えるように村の男たちは武器を手に取る。


「この村、ロクに戦える奴がいないな……」


山に囲まれた閉鎖的な村、この村の存在を知らない者は多いだろう。

だから平和なのだ、自分たちを守ってもらうための騎士団に払う税も必要ない、だから金に困ることもほとんどない。何かあっても自分たちで何とかしないといけないのだ。族に襲われることになっても


「さてさて、あのデブのステータスは……」

俺は人さらいのボスのステータスを見た。


【名前】 ゴラス・マゴット 【種族】 人間

【年齢】43【職業】・闘士【レベル】28

【称号】・盗賊・人間殺しヒューマンスレイヤー

【HP】400【MP】100

【攻撃力】80【防御力】17【魔力】9

【素早さ】12【魅力】18【運】12

【スキル】・筋力増加・悪魔の火デーモンフレイム


「ほう、クソ野郎らしく【人間殺しヒューマンスレイヤー】の称号を持っているじゃねえか、まあリュウの相手じゃないな」


ボスの名はゴラスと言うらしい、【人間殺しヒューマンスレイヤー】の称号は人をただ殺すだけでは付かない、何人も何人も殺して、人体の事を知り、朝の朝食を作るぐらい殺しが簡単に思えたら完成だ。普通の人間はこんな称号は得られない

あの男はどうせ自身のスキルとか知らないだろう、アスリートがふと急に課題が出来るように、あの男も急に人間の解体や殺しが上手くなったのだ。

悪魔の火デーモンフレイム】は悪魔と契約したのかどうかは知らんがな


 さて、対して村人チームはというと、残念ながらほとんどがスキルなしの者だ。

中年ぐらいの男共は【農業の知恵】とか、農業スキル、生活に役立つ称号しかない。つまり戦闘において全く役に立たないのだ。よく今まで生き残れたと感心してしまった。



「やあやあ、ゴミみたいな村の皆さん! うちの若いのがお世話になったそうで」

ゴラスは村の男どもを挑発し始める。男どもを見て確信したのだ、絶対に負けるはずは無いと


「さあ、お前ら存分に暴れて来い!」

ゴラスは部下たちに指示を出した。部下たちは世紀末の敵キャラの様に襲い掛かる。その時だ、敵のモブ1人が盛大に吹っ飛んだ。


「な、何事だ!」

ゴラスがテンプレみたいな台詞を吐いた、人さらい共だけでなく、村人たちも驚いている。いきなり自分たちの後ろから人が現れ、族の1人を倒したのだから

「あ、全裸男!」

村人の1人が正体に気が付いた様だ。

そう助けに来た男は、全裸の不審者として自分たちが捕まえた男、大山リュウなのだ。


「む、村の連中は戦える奴はいないんじゃ……」

「てか、なんだあのスピード、ただ者じゃない」

「ボ、ボス助けてください!」


仲間が吹っ飛ばされたのを見て、族のモブたちは一気に弱腰になってしまった。

ボスに助けを求めるが、肝心のボスもヤバいと思い近づこうとしない。


「さあ、誰が相手でもいいぞ!」


リュウが人さらい共を威嚇する。


 結局、リュウの強さにビビった人さらい共は背を後ろにして逃げて行った。

俺は「追って仕留めておかなくていいのか?」と一応聞いてみたが、リュウは「それならもう一度戦うまでだ」と、少年漫画の主人公みたいな事をぬかして来た。まあ、リュウらしくて良いのだが


「もっと強い奴連れて来るかもよ」

「大丈夫だろ、俺強いし! ハッハッハッハー」


こいつ自分の力に溺れているな……



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