第14話 悪魔

 依頼をこなしていく内にカイのレベルが結構上がった。カリーナに教えてもらった魔法の種類のレパートリーも充実してきた所で、シュメルが「資金も力もついてきた所で次の町に行きませんか?」と皆に提案を持ち掛けた。


「そうだな、ここら辺の魔物も戦い慣れてきた所だ。丁度いい。」

「お、いよいよ次の場所に行くんだな!」

「ええ、本来ならばもっと早くに行く予定だったのですが……」

「わ、悪かったよ。あの時は金の大事さが分かんなかったんだよ!」

カイたちの仲も初日と比べてかなり良好になっている。


「どうしたんだ? カリーナ変な顔して、もう金を散財した事怒ってないぞ?」

カリーナは何か思いつめた顔をしていた。「うんうん大丈夫!」と彼女は気を取り直して返事した。


 出発は明日の朝になった。シュメルが目的地の町までの馬車を護衛する依頼がないか探していた所、たまたまその依頼があったのだ。「凄く運がいい」とシュメルは皆に自慢していた。


「いよいよ、この町ともさよならか……」

「どうしたんだ、柄にもない事言って」

「いいだろ別に、次の町はこの国から結構離れた場所なんだろ? 魔王を討伐するまで戻ってこれないかもしれないし、今のうちに干渉に浸っておこうと思ってな」

俺とカイは同じ部屋で他愛のない会話を楽しんでいた。

初めて会ったこいつは調子に乗った馬鹿かと嫌いだったが、今ではそこまで嫌いじゃない。もしあのままずっと不機嫌だったら見捨てていた所だ。

「ん? どうしたんだロード?」

俺の心を読んだのか、カイが俺の事を心配してきた。

「なんでもない……、カイ聞いてくれ、俺はお前たちの仲間じゃない。ただの案内役でこの世界の観察者だ。勿論、そこらの奴とお前たちを天秤にかけられたら助けるだろう。だが俺は面白い方に事を進める。それだけは頭の中に入れてくれ」

「なんだよ、ここまで来ておいて見捨てるっていうのか?」

「ああ、だから死なないように頑張ってくれといつも言っているだろう? 勇者様」




 颯爽と吹き抜ける風に揺られてしなやかになびく一筋の緑、朗らかな太陽の光がとても気持ちがいい、周りに魔物の気配もない静かで平和な道のりが続いている。

「いやあ、まさか勇者様御一行に護衛していただけるなんてね。安心して馬を走らせる事が出来るよ。冒険者といっても感じの悪いやつもいるのでね。」

御者の親父が嬉しそうに話しかけてくる。

カイたちも依頼主が良い人そうで安心している。

「しかし、ここらの魔物は俺たちが狩り過ぎて、ほとんどいなくなったんじゃないのか? さっきから全く見当たらない。」

カイはいつでも戦える準備万端だ。

「まあ、戦わないで越したことはありませんよ。依頼の物を運ぶのと依頼主の安否が第一優先です。」

「そうですよ、何事も無ければ……。」


「どうしたんだカリーナ空ばっかり見て、さては乗り物酔いか?」

「ええ、まあそんなとこ……」

カリーナが適当にカイの質問に返答した。


 

 ドゴンッ


一瞬の出来事だった。

突如爆発音が鳴り響き、カイたちと荷物を載せた馬車吹き飛んだのだ。

荷物は散乱、カイたちは吹き飛ばされて頭や身体から血を流している。

カリーナを除いて



 いち早く立ち上がったのはアデリナ、ふらふらになりながらも周囲を見渡す。何が起きたのか、敵はどいつでどこにいるのか、しかし一向に見つからずにいた。

当たり前だ敵は真上にいるのだから。


 カイとシュメルもアデリナが起き上がってから直ぐに気を取り戻した。2人共一体何が起きたのか把握できていなかった。

「お、おじさん?」

依頼主の男は死んでいた、依頼主を守れなかったショックと初めて目の当たりにする人の死で頭が真っ白になったカイ。アデリナが「しっかりしろ」とカイの胸元をグッと掴んで怒鳴った。

そう、敵はまだいるんだからな……


「アデリナ殿、上です!」

シュメルの【気配感知】によって敵が上空にいる事をしったアデリナは、得意の矢を放った。しかし、残念ながら矢は虫を振り払うように弾かれてしまった。

「な、なんなんだアイツは……」

上空からゴミを見るように見下す存在、悪魔がカイたち勇者一行に立ちふさがる。



「面白くなってきたな……」

俺はニンマリとこれから起きる展開を見る為、特等席に座った。

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