王子、肉食恐竜を復活させるのをやめてください!

リーシャ

第1話お前などもう必要ないと王子が言うから

「ハクア!お前はもう役立たずだっ。だからお前など必要ない。どこへでもいけっ」


 パーティ会場に響き渡る怒鳴り声。

 草食動物達に与える食べ物や健康について頭でいっぱいな彼女は、あまり話を聞いてなかった。

 なぜ突然役立たずなどと言われなくてはならないのか。


(役立たずなんて、一番役立たずな無駄飯ぐらいに言われたくない)


 王子という名のプライドだけ肥大化している男はハクアの婚約者だ。

 しかし、自分を確保したいが為に結ばれたので相手の男にはこれっぽっちだって興味もない、好意もない。


 相手の男は昔から自分を下に見て、文字通り見下す顔で、人を指差す。

 へし折りたくなるから、辞めて欲しい。


「そっですか」


(家に帰ったら資料を作らないと)


 おざなりな返事に我慢出来なくなったのかズカズカと、こちらへ足音荒くやってくる元婚約者。


 ハクアの生まれたジュラ家は最適なものが生まれてくるように出来ている。

 空に集う女神が専門の存在を招く。

 自分が転生者なのは全ての人が知っている。

 最適な魂。


(どうせくだらない理由でしょ)


「私はどちらでも構いません。お好きに。〇〇の卵は後程契約に基づき返却してもらいますね」


 王家との契約。

 この世界に居る生物。

 現代の世界では太古の生物と有名な恐竜。

 その雄大な姿は女神らの使徒。


(隣に女……謎は解けた)


「その必要はない!」


 王子が大きく声を張り上げる。


(そんなわけないでしょ)


「これはジュラ家と王家の古くからのお約束ごとです。否やは存在しません。お引き渡しを」


 咎めるように睨みつけると、王子は勝ち誇った顔をして隣の令嬢を前に少し出して目立つように演出する。


首を傾げると、浮気相手かなと確認。

 正直、ただのパートナー契約に婚約を使ったのはお飾りだ。


 昔から暗黙の話として、そういうノリでのやりとり。


 あくまで円滑に仕事をするために城に来やすいように、顔パスが出来るのが本来の目的。


 それなのに何もしてないのに、婚約を解消するのは道理も通らない。

 彼はなにをもってして、解消に行き着いたのだろう。


「彼女は女神により選定された恐竜の専門家だ」


 どうやら専門家が愛人らしい。

 専門家は一人だけではなく、さらに細かい枝分かれした細部のところまで考えて、負担にならぬようにされている。


 2人目が出てこようと100人出てこようと、特に思うところはない。


 思うところがあるのは向こうの方なのだろう。

 こちらを挑むように見ている。


 何か言いたいことでもあるのなら、さっさといって欲しいわと息を吐く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る