青鉄の騎士〜あいつは俺の親友だった〜

改宗

一話



 ここはヴァハニト王国。女神ヴァルハを信仰している王権国家だ。その国ではある日大聖堂にてとある神託が女神ヴァルハから承った。それは魔王を討伐せよという神託だった。



近年の魔物発生率は異常な程高くなっており、騎士団が出動しても中々被害は収まらなかった。それどころか魔族が暗躍することで近隣の国家ですら恐怖していた。



中にはたった3日で大国であるリューセン帝国が侵略を受けた後壊滅。当時最強と言われた帝国が3日しか持たなかったことで当時は大いに国々が荒れた。



そして女神の神託と共に5人が選ばれた。勇者エルデル、聖女ニーナ、賢者グリナ、剣聖ミナード、盾聖ゼゴラ。計5人は各国から集められ、魔王討伐へと向けて10年という月日を費やして魔王を討伐した。



その間に魔王軍はいくつもの国々を滅ぼし続け、かくゆうヴァハニト王国も滅ぼされかけたが魔王を倒した英雄たちによって寸前のところで残りの敵を殲滅し、無事に平和を取り戻すことが出来たはずだった。



 魔王を討伐し、世界が魔族の領地をどうするかを考えるまでは。



 魔王が無事討伐された彼らに待っていたのは名誉、富、名声全てが手に入った。世界中に彼らの名前は伝わり、詩になり、またある場所では石像が彫られたりするなどして各地でその爪痕が残されていった。



富はもちろんもらったが彼らはそれを国の復興費に回すように断った。もちろんそれもあり、彼らの名は世界に轟くことになった。



「ルジャス家の者よ大義であった。お主には褒美として『青鉄の騎士』の称号をやろう」

「ありがたく頂戴いたします。この称号に恥じぬよう今後もこの国のため、民のため死力を尽くすことを微力ながら努めさせていただきます」



 俺は魔王討伐のセレモニーやパーティーなどが終わると数年ぶりに親友と会うことが出来た。親友は青髪で身長は俺と同じで170ぐらいだ。特徴なのはその身に着けている先祖代々から伝わる魔槍だ。



この槍には伝説があった。かつて女神ヴェルハが魔神ハウゼとその幹部との戦いの際に20本の槍を作り出した。そしてそれを俺の親友であるドラスの先祖であるキャッシュ・ルジャスは仲間に渡し、邪神の尖兵をその槍で全て封印したという話がある。



「勇者や剣聖がおらぬ時はよく国を守ってくれた」

「勿体なきお言葉でございます。当然のことであります」

「何か褒美はいらんか?」

「でしたら、私の親友である剣聖ユイド・デルスに屋敷を」

「それは良いがいいのか?」

「はい。私にはこの称号があります故」



 全く俺の親友は欲がない。俺も魔王討伐がなければこんな風に称号をもらっていたかもしれないが正直ドラスよりは褒美を言う可能性もあった。



 それから式典が終わり、パーティが開かれることになった。しかし、復興のためドラスは王様にパーティを止めるよう言うと王様はそれを了承した。



「どうしてパーティをやめたんだ?」

「僕には勿体無い。それにまだ国民たちも飢えや貧困で困っているかもしれないのに僕だけこんなことは出来ない」

「...まあお前らしいな。なあ酒場でも行かないか?勇者パーティーのメンバー集めて祝勝会をするんだが」

「...いいのか?」

「当たり前だろ!!」



 相変わらずこいつはいっつもこうだ。自分よりも他人を優先する癖がある。だけどこいつは絶対に損をした顔をしない。だから今回は俺がこいつに得くさせてやらないとな。



 冒険者ギルドの近くにある酒場に行くとそこには既に勇者パーティーの仲間たちがいた。エールを頼んで既に出来上がってるみたいで。



「よう!ユイド!そいつが例の『青鉄の騎士』様か?」

「ああ。俺の親友だ」

「よろしく。ドラスです」

「俺は盾役タンクのゼゴラだ。よろしくな!」



 肩を組んだのは盾役のゼゴラだ。元々は傭兵だったが騎士団が大規模魔物掃討作戦の時に雇った傭兵の1人でその時に知り合った。



その他は勇者エルデル。元は辺境生まれで実家が農家をやっているらしい。冒険者になって村の皆に楽をさせたいという理由で王国にやってきた。



次は聖女ニーナ。元々教会でシスターをやっていて急に神託を授かったことにより聖女となった。ちなみに勇者とは恋仲だ。



そしてもう1人は賢者グリナ。この国ヴァハニト王国魔法学園を主席で合格、卒業し、新たな魔法理論による発明で魔法界から注目された。ちなみに魔王を討伐する前にグリナからは俺の親友が気になるとか言ってたな。



そして、最後は俺。元々はただの一介の騎士だったが、世界一の剣を競う大会に参加するとそこで優勝することで剣聖になった。ちなみに俺には一つ上に綺麗な婚約者がいる。



そんな感じで簡単な自己紹介を済ませると仲間たちが食うのを再開し始めた。



「大将!エール6つで!!」

「ミナード。お前は全く」

「まあいいじゃねえか!魔王は倒された!ここは俺の奢りだ!!全員浴びる程飲め!!」



 他の野次馬たちもそれに倣って歓喜を上げながら木の盃を掲げながらずっと飲んでは食っていた。



「ところでよ。お前は婚約者でも出来たのか?『青鉄の騎士』さんよ」

「...はー。君こそ早く結婚して子供を見せてくれよ」

「な?!お前それは!」



 ちくしょう!とか言いながら笑いあって酒を飲む。こんなことですらもうかなり久しぶりだったんだなと思いながらハメを外しまくっていた。



「あの、ドラスさん。誰かお付き合いされてるお方はいるんですか?」

「あ、それ俺も気になるかも」

「私も凄く気になります。だってあの『堅物のドラス』で有名でしたから」

「...。いえ、いません」



 そうこの俺の親友ドラスはいつもたいてい休暇日になると寮を離れて1人でいつも街に行ってるんだ。だから俺もこいつのことは酒を一緒に飲む日ぐらいしか知らない。



にしたってグリナの奴凄い勢いでドラスに聞きに行くな。確かにドラスは口下手だからな。グリナとくっ付けば一番良いんだが。



「あ、すいません。今から用事があるのでお先に失礼します」

「マジか。今から用事って何かあんのか?」

「いつもの見回りです。お金は置いとくのでそれでいくらでも食べてください」



 それだけ言うとドラスは1人店を出ると酒の場がシーンとなる。なんだこの気まずい雰囲気は。グリナの顔が段々と涙目になってきて見てられないんだが。



「えっと。ドラスならいつもこの酒場から近いところにいるから追いかけてきたらどうだ」

「あ、ありがとう」



 するとグリナは近くに置いてあった自分の杖を持ち上げるとそのまま酒場を飛び出し、ドラスの方に向かって行った。だけど、あいつは本当に堅物だからな。正直心配だ。



***



「おお!ドラスさんじゃないですか!」

「君はエルドかい。元気にしてたかい?」

「もちろんでっさ!お陰で真っ当な道行けることになったのもドラスさんのお陰ですよ」



 この大柄で少し横暴そうな感じの男は元ここら辺の盗賊の下っ端で生きることに必死だったから悪さをした時に少し叱って、働く場所を提供したらこうなってしまった。



 初めて会った時は金品を寄越せとか言われたけどあの時はビックリした。騎士団の鎧を着ているのに金品を寄越せって行ってくるんだから。



「ここの連中はみんなドラスさんのお陰で職にも付けましたからね」

「ところでドラスさんや。結婚とか考えてないんですかい?」

「僕はいいよ。独身を貫くつもりだ」



 僕には大切な人との思い出があるだけで十分だから。それに僕たちの一族にはとあるジンクスというかなんというか呪いみたいな物がある。



それはこの今身につけている槍は実は今まで何体という魔物だけでなく、伝承ではかなりの化け物も封印したなど多くの話を聞く。だけどその中には呪いを持った魔物なんかもいてそのせいで僕たちの一族でも長男はこれを使えば必ず20歳の時に死んでいる。



先代はそれに苦しみ早くに亡くなってしまった。そして長男だった僕は家ではいないものとして扱われた。しかし、この槍だけはお前が持てとお父さんに言われたので持って行くことになった。



それからは歴史書を漁ったりしたけど、やっぱりどの世代でもご先祖様は20歳で亡くなっていた。呪いはどうやら聖女様でも治せないらしく、僕も治そうという努力はした。けど治らないと言われてしまった。



もちろん最初は絶望というか自暴自棄になってた時もあったけど、お爺さんのお兄さんはそれでも最後まで国民を守ったって話を聞いて僕もそれに憧れて今は家も持たずただ街の治安を守っていた。



「でも兄貴」

「良いんだこれで。それでもしもの用意は出来てるかな?」

「はい!もちろんでっせ!」



 それは良かったと言うと僕は3人にお礼とばかりに銀貨の入った袋を渡すとそのままいつも通りの道を歩いて行く。



この時間は人が多く、時間的にも擦りや強盗、人攫いが起こりやすい。最近は無くなったけどそれでも日々そういうことはどこかで起きているのだからやらないとね。



***



 私の名前はグリナって言います。元々は平民出身でキャバレー村って言う冬はスキーが出来るところで冒険者たちに人気な観光地なんですけど私はそこで産まれました。12歳まで村にいてその後は私にはどうやら魔法が使えたらしくてそれで村の人から魔法学校に入学したら?と言われたので流されるまま入学しました。



最初は正直村から出たこともあんまりなかったので心配でした。だけど、入学してからは楽しいことばかりで今では友だちも出来て主席で卒業することが出来ました。




だけど、その時私には好意を抱いている人がいました。その人は隣の学園の騎士養成学校と呼ばれる騎士の卵が入学する場所で将来騎士団に入ったり、貴族の子供がよく入る場所で正直言ってあんまり最初は印象は良くなかったです。



だけどある日たまたま遠征の授業で山でキャンプをしていると魔物に襲われそうになるとあのドラスさんと後に剣聖と呼ばれるミナードさんもいた。



ミナードさんは当時からずっと強かったけど、ドラスさんも負けじと強かった。魔物に襲われてパニックになっている私たちを青い槍で守ってくれたお陰で被害は最小限になった。



魔物を倒す姿はまるでどこかの物語に出てくるような騎士様みたいで賞賛を求めず1人帰って行く姿はまるで英雄のようだった。



その時にはもう既にドラスさんのことが気になって仕方がなかった。剣聖さんみたいに確かに顔はいい方ではないけれど、性格は穏やかでいつも国民の味方で分け隔てなく接するその姿勢に惹かれて行った。



だから神託を受けてこの国を出ることになった時正直言って付いて来て欲しかった。そしたらドラスさん程頼りになる背中はなかったから。旅の間に手紙でも送ろうとしたけど、家名が分からなくて手紙が増える一方だった。



だけど、ある日ヴァハニト王国に魔王軍の軍勢が攻めて来たと手紙が来た。しかし、その手紙が届いたのは魔王を討伐してから5日後の話だった。



王都に着くと最後まで戦っているのが見えたのはドラスさんだった。何回も魔王軍に襲撃されたけどドラスさんが何度も撃退させることで王都は守られたらしい。



王都から離れた場所には最後の将軍を倒して立った状態で気絶していたらしい。戦いは一ヶ月にもなり、寝る間も惜しんでドラスさんは食糧だったり、治安の維持を続けることでなんとか暴動も起こらず国は護られた。



 正直言うと本当にあの手紙が来た時背筋が凍るような気持ちだった。息が上手く出来なくて、急いで行こうとするも魔王討伐で負った傷が癒えてなかったりして正直何かが違ったらドラスさんが死んでたかもしれないと思って怖かった。



だけど、ドラスさんは何度も魔王軍を退けながら私たち勇者パーティが来るのを待っていた。



ドラスさんが死んじゃったら私頑張ってる意味が無かったんです。だから生きててくれて良かったと思い涙を流した。



そしてパレードや式典が終わり、夜会が開かれることになったけどそこにはドラスさんはいなかった。



 時が過ぎて王都も復興が早々に終わるとドラスさんの授与式が行われた。幾千もの戦いに参加し、大きな功績を上げたことで勲章と異名を授かっていた。



『青鉄の騎士』それはかつての戦争で邪神が率いる20体の眷属が世界各国で暴れ回り、世界が終わりかけた戦争で、そこで『青鉄の騎士』は女神ヴァルハ様からいただいた封印の能力がついた槍をもらい、後にそれを封印したという英雄の異名だった。



式典が終わると酒場に皆に呼ばれて行くとそこには剣聖さんを除いた皆さんがそこで飲食をしてある人を待っていた。



「ちょっとユイド。僕は今の時間」

「はぁ?お前今日の主役だぞ?お前いなかったら進めねえだろう!ほら!大将エール6つ!!」



 大将の声とユイドさんの声が響くとそのまま皆さんは適当にいつも通り話しながらゆっくりとくつろいでいた。ゼゴラさんとユイドさんは酔いに酔って急に腕相撲を始めたりして皆で盛り上がっていた。



それを横目に私はチビチビとお酒を飲みながらじっとドラスさんの方を見ていた。ドラスさんは昔見た時のあの姿が今でも忘れられない。きっとドラスさんは私のことを覚えてもないし、知りもしないかもしれないけど。



「あの、ドラスさん。誰かお付き合いされてるお方はいるんですか?」

「あ、それ俺も気になるかも」

「私も凄く気になります。だってあの『堅物のドラス』で有名でしたから」

「...。いえ、いません」



 よかったと思ってしまうと少しだけなんてことを思ってしまったのだろうかと思った。だってまるでドラスさんが私のものだと言っているみたいで凄く自分勝手なことを思ってしまったことを戒める。だけど今ここから私のことを知ってもらえばいいわけで、しかも今はお酒も飲んでるから勢いで今なら。



「あ、すいません。今から用事があるのでお先に失礼します」

「マジか。今から用事って何かあんのか?」

「いつもの見回りです。お金は置いとくのでそれでいくらでも食べてください」



 話しかけようとすると席を立ちお金だけ置くとそのまま一人で外に出て行ってしまう。それをユイドさんが哀しそうに見つめていた。



「グリナ。行ってやってくれねえか。あいつ堅物だから色々困るかもしれねえけど俺の親友なんだよ」

「分かりました!!頑張ります!」

「頑張れよ嬢ちゃん!」

「良い見上げ話し待ってるぜ!!」



  ユイドさんたちに背中を押されながら酒場を出るとそのままユイドさんのところに向かう。やっぱり騎士さんだけあって歩くスピードも速いのか気を抜けばすぐに置いて行かれそうになる。だから急いで『身体強化』の魔術を掛けるとそのまま走り出す。酒場を真っ直ぐに走って行くとそこには野次馬のような人たちが数人集まると私は建物の後ろに隠れてしまう。



会話を盗み聞く訳じゃないけど話しを聞いているとどうやら彼らはドラスさんに過去に何かあった人達らしいことが分かった。職がなかった彼らにドラスさんは職を与え住む場所や食べ物まで配っていたらしい。



本当に凄い。私だったらほとんどのお金をいつでも魔術の研究や触媒にしてお金なんてすぐに無くなるのに。どうしてそんなにドラスさんは自分を犠牲にしてでも助けようとするんだろうか。



 それから尾行に気づかれたのだろうか。ドラスさんの動きがまるで追跡者を巻くような動きで動くせいで段々と自分が行っている道が分からなくなってきた。



お酒も飲んでいるせいでさっきまで大丈夫だったのに急に口から虹色の何かが流れていると壁に手をついてずっと蹲っていた。



「お、こんなところにカワイイ嬢ちゃんがいるじゃねえか」

「なあ俺たちと良いことしようぜ」



 な、なんか変な人に絡まれちゃった。ドラスさんを追いかけてただけなのに。どうしよう。酔ってて上手く術式が頭で練れない。このままだと乱暴にされるかもしれない。



「何やってんの?二人とも」

「ゲッ!ドラスだ」

「ズラかろうぜ!」



 そう言うと二人は走って行くとドラスさんが背中をさすってくれて少しだけ気分が楽になる。ゆっくりで良いよと言ってくれるのでゆっくり呼吸を整えると意識が少し戻ってくる。



「あ、ごめん。嫌だったかな?」

「そんなことないです」

「魔法士が一人でこんなとこお酒飲んで歩いてたらダメだよ」



 嫌だこんなかっこ悪いところドラスさんに見られたくなかった。それに人のこんな見て絶対に気分悪いだろうし。ああ泣きそう。こんな恥ずかしいところをまさか見られてると思うと凄く胸が苦しくなる。ましてや好きな人の目の前でなんて。



「ゆっくり息を吸って。魔法で詠唱するイメージで息を吸ってみて」



 いつもの魔法を使う時の詠唱のように呼吸すると空気中にある魔力が中に入ってきて少しだけ気が楽になる。息も少しだけしやすくてゆっくりと私は視界が開ける。するとドラスさんに背中をさすってもらっていることにびっくりしてすぐに動いてしまう。



「ごめん。嫌だったね」

「あ、いや、そんなわけじゃ。むしろもっとやって欲しいというか」

「え?」

「あ!なんでもないです!!」



 マズい!こんなこと言ってしまうなんてかなり酔いが回って来てるみたいで私変なこと言ってる。いつもはこんなこと言わないのに。



「宿まで送るよ」

「...はい。お願いします」



 するとドラスさんが私の腕をそのまま優しく抱き寄せるとそのまま角度を入れ替えてそのままお姫様抱っこをしてもらってそのまま歩いて行く。恥ずかし過ぎて手を顔の前に持ってくるとそのまま動けずに言われた通りの返事だけをするとそのまま黙って歩いてくれる。こんな時間がいつまでもあればいいのにと思いながら短い時間を過ごす。



やがて街路地を出て宿に着く。するとそのまま卸してくれそうになると私はそのまま首に抱きついた状態になる。ここで言わなかったら今までの旅の間に考えてたことが無駄になる。



「グリナさんどうしましたか?ひょっとして寝ちゃった?」

「...あの、ドラスさん。大事なお話しがあるんです」



 ゆっくりと降りるとそのまま服装を直すと少し崩れた髪も直さず正面を向くドラスさんの顔が正面にあった。



私よりも身長が高くて、それでいて紳士的で誰にでも優しい。そしていざという時になったら自分の命も省みず誰かのために戦う姿を見て私は好きになった。普段と戦っている時は戦っている時は少しだけ無理をしているように感じていた。



だから、その横で私もドラスさんと戦うことが出来たら、きっとドラスさんの負担や少しだけどドラスさんの力になれると思うんです。



「ドラスさん好きです付き合ってください!!」

「...」



 ドラスさんは何も言わない。やっぱりダメなのかな。私じゃ頼りないかな。流石にあんな醜態晒した後にこんなこと言われても困るよね。それに私なんかじゃきっとドラスさんの負担を軽くすることだって出来ないし。



「...ごめん。それは出来ない」

「そ、そ、そう、ですよね。ごめんなさい!」



 それだけ言うと私はすぐに宿に逃げるように走る瞬間のドラスさんのなんだか悔しそうな顔が私が最後に見たドラスさんの顔だった。





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