prologue

第1話

「……チュ、パ」




飴玉を舐めさせようと、不躾に突っ込む指を咥えて悦ぶ様な音をわざと出す。


もう、羞恥なんて言葉は私から消え去ってしまった。



ただ、目の前には彼がいて。

その瞳の中には、ぼんやりとした私が映ってて。


…ああ、私ってこんな顔だったっけって、そこでやっと思い出す。

記憶の、どっか片隅にあった私を引っ張りだそうとするけど、それは彼の手によって遮られた。




「…俺の名前を呼べよ」


「……ア、キラ」



途切れ途切れに弱弱しくそう、口にするとアキラは満足そうに微笑む。

この顔はとてつもなく、好きだ。


このグレーがかかった優しい瞳に吸い込まれてしまいたい。

何度も何度も思ったんだ。



「…タエ」


「……」


「お前は俺のモノだ」



そう言うと、顔を歪める。

彼はその顔を隠す様に、私に口付けをした。

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