【第二章完結】呪われ追放者は、宇宙兵装で現代ダンジョンを無双する~知らぬ間に宇宙で配信(同接10億)されてて大バズリしたんだが!?~

ねくしあ@新作準備中

第一章:魔神が生まれた日

第1話:アブダクション

 第二章完結しました!

 読者選考があるので、ぜひ評価をお願いします!

 =====

「僕は……悪いことなんかしてないのに……」


 高度100キロメートル。

 宇宙と地球の狭間カーマンラインに浮かぶ、大きな天空城があった。

 

 ここは、僕のような世界の邪魔者が追放される場所。

 正式名称は「ケイオスの天空城」というSランクダンジョン。迷宮ダンジョンとなっている城と、その周りの庭園から構成されている。


 ま、今となってはどうでもいい話だ。


 僕は、この城の外にある庭園で咲き誇る花畑と、いくつも並ぶ、朽ち果てた骸骨の中で死んでいく。

 敵も人もいない孤独の楽園だ。僕もすぐにこの骸骨みたいになる。


 後ろにある巨大な城はダンジョンだから、入ったらすぐに死んでしまう。痛いのは嫌だからここにいる。

 

 ただ、それだけなのだ。

 

「……いっそのこと、宇宙人でも何でも来てしまえ。僕が呪いでこの世を滅ぼす前に」


 僕には、どうやら「魔神の呪い」と呼ばれる呪いがかかっているらしい。それが原因で周りの皆を傷つけた。大事な妹に至っては意識不明になった。


 ――その日から、僕の人生から太陽は消え失せた。光の一切がなくなった。


 そんな真っ暗闇を歩き続け、気づけば「呪いが危険だから」とここに追放されていた。


「……眩しい」


 ふと感じた光。

 太陽だろうか――そう思った時、身体がふんわりと浮き始めた。


 上から降り注ぐ光は青い。太陽と明らかに何かが違う。こんなの、僕は全く知らない。

 だが、不思議と恐怖は感じなかった。逆に、どこか安らかな気分すら感じた。


「これが『お迎え』ってやつなのかなぁ……?」


 もしそうなら、なんとも神秘的じゃないか。

 ここに追放されてから、多分数ヶ月……長かった。本当に途方もない時間だった。心なしか、僕の中にいる“魔神の呪い”も蠢いている気がする。


 まさか、こいつと死ぬとは思わなかったけど……かれこれ5年の付き合いだし、相棒と呼んでもいい。


 あぁ、やっと終わる――僕の人生は、終わるんだ。




 ◇










 ピッ、ピッ、ピッ……機械のビープ音が一定のリズムで聞こえてくる。

 目を閉じた真っ暗な世界で、ただそれだけが鳴り響く。

 それ以外、何も感じなかった。世界はもう終わってしまったのか――と思えるほどに。


 しばらくして、世界に鼓動が追加された。そして、それが鼓動と同じタイミングで鳴っていることに気がついた。

 どうやら、僕の鼓動は極めて正常なようだ。一定のリズムを刻んでいる。


 ふと、手首と足首にひんやりとした感触を感じた。

 同時に、腕と足が世界に追加される。


 ただ、暗闇に四肢と鼓動の存在だけを感じていた。


「よし、準備万端だ。装着する」


 突如、そんな声が聞こえた。

 若い男の声だった。


 いきなりの事に戸惑い、直感的に抵抗を選んだ。しかし、すぐに四肢が固定されていた事に気がつく。


 鼓動が早まる。ビープ音も早くなっていく。


 その数秒後――世界が、見えた。


 嫌いだったはずの世界が、再び僕の前に姿を現した。


「どうだ、は」


 新しい…………?


「我々の最高傑作にして最新型。あの高かったAIアシスタントと同等以上の性能だ! これを作るのに果たしてどれだけの予算と苦労と人員を費やしたことか……上司にはバカにされ別の研究室の同期からは嘲笑われ、でも俺はこれを完成させた。ありがとう、繧ー繝ゥ繝ウ、繧オ繧、繧「繝シ繝ォ!」

「繝ォ繝峨、あんたも良く頑張ってくれたよ」

「繧オ繧、繧「繝シ繝ォの言う通りだ! リーダーがいなきゃ、オレらは挫折して殺し合ってたさ」

「お前ら……!」


 一部が明らかに日本語ではない。文脈的に名前だろうか。とはいえ、会話は友情を感じさせるものだが――その見た目が信じがたいものだった。


 一言で表すなら、「宇宙人グレイ」。小さい頃にモンスター図鑑みたいな本で読んだ事があったから知っている。

 当時からフィクションだと思って読んでいたんだが……まさか実在するとは夢にも思っていなかった。


「おっと、放置して悪いな。少年、調子はどうだ?」

「あっ、えっと……大丈夫、です」

「そうかそうか。なら問題なさそうだな。それじゃあ、実験再開と行こう」

「……は?」


 こ、この男――性別は断定できないが――は正気なのか!?

 新しい目という発言的に、こいつは僕の目を違うものに変えている。それだけに留まらず、他の部分まで改造するだなんて!


「まずは首元にナノチップを……繧オ繧、繧「繝シ繝ォ、あれを頼む」

「了解」


 妖艶な雰囲気をまとう宇宙人は、何もない空間から歪なドリルを取り出した。


「そんなの刺されたら死んじゃう……!」

「痛くないわよ、別に」

「いやいや――!?」


 手が震える。息が詰まる。


 だが、抵抗も虚しく、それが首元に突きつけられる。

 キュッ――という高音がすると、ドリルの姿が消えた。


 ……もうチップを埋め込んだのか!?

 痛みも違和感も、一切感じなかった……宇宙人の技術力はとんでもないな。恐怖すら感じる。


「繧ー繝ゥ繝ウ、最後にアレを」

「おいおいリーダー、いいのか? こんなガキに使っちまって」

「……その方が面白いだろ?」

「ははっ! 確かにそうだ!」


 なんか貴重なものなんだろうけど! すごく怖い!

 何が怖いって視線がお腹に向いてるところが怖い!


 うぅ、なんだかお腹の中で何かが蠢いてるような感覚がする。胃腸が逃げ出そうとするみたいだ。


「んじゃ、エーテルカッターの出力を5にして、っと」


 水色の光がお腹に近づき、触れようとした刹那――僕の身体から、黒い影が溢れ出てきた。


「しまっ—―!」


 禍々しく、深淵から這い出てきたような“それ”は目にも止まらぬ速度で部屋を動き回る。

 “それ”が三人の宇宙人に触れた直後、皆一様に意識を失い、床にバタバタと倒れていった。僕の四肢の拘束具も、音を立てて壊れてしまう。


「――ッ」


 声が、出ない。

 恐怖や絶望を超えた極致にある、得体の知れない感情。


 拙い言葉で表現するのなら、それはまるで「魔神」のような――


「……!」


 ただ震えているだけだった僕の身体に、その影は帰っていった。元いた場所に戻ったのだと、直感で理解した。


 これがきっと、魔神の呪いなのだ。


 と、その時、どこからか機械的な女性の声が響く。


『管理者の生命反応が停止。規定のプログラムにより、残存非敵対生命反応を暫定管理者に認定。ようこそ、マスター』


 生命反応が、停止……? つまり、彼らは死んだのか?

 妹みたく、意識不明の昏睡状態なのか?


『……移行完了。マスター、何かご質問はありますか?』

「まず、あなたは誰?」

『申し遅れました。私は第五世代万能支援システムAI。マスターの名は?』

「僕はそう霧島きりしま そう。よろしく」

『はい。よろしくお願いします』


 ちょっと待て。なぜ僕はAIとごく自然に話してるんだ?


 話しかけられたから普通に返してしまったが……正直、今の状況の全てが不可解でしかない。AIがいきなり喋ったこともそうだ。夢だったと言われても信じられる。


 ならば、ここは一つ、夢と信じることにしよう。つまらない日常から抜け出せるのなら、宇宙にだって飛び出してやる。


『ではマスター、一つ提案があります』

「なに? 今脳内が忙しいから後にしてくれると助かるんだけど」

『その提案とは—―』

「いや後にしてって言ってるんだけど!」


 AIのくせしてマスターの言うことを聞かないのはどうなんだろうか。

 

 そんな僕の思いをよそに、彼女は言った。


『—―船外に確認されている敵性反応の殲滅せんめつです』

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