第11話 魔王討伐へ

 アクセル達は騒ぎが想定以上に大きくなってしまった事に若干焦り、新聞社の前に一旦屋敷に帰ってベネディクトに報告する事にした。


 「はぁ………お父様に多大な迷惑を………………」


 「大丈夫よゾーイ、あのじじいは何よりもあんたを優先するはずだし、デッドラインだってサポートするわ。あんたの考えている様な事にはならないから安心しなさい。」


 「そうだといいのですが………………」


アクセルはゾーイとペロパニーの少し後ろを歩き、町並みを眺めて楽しんでいた。


 「(そういえばペロパニーにお菓子を買ってやらんとな、何処かにお菓子を売ってる所は………………)なあ、リアナ? この辺にお菓子を売っている所って無いか?」


アクセルは隣を歩いていたリアナに話しかけ、リアナはゾーイから少し距離を取ってアクセルに肩をくっつけながら、アクセルにだけ聞こえる程の小声で耳元で言った。


 「気安く話しかけるな、要件は何だ?」


 「お菓子を売っている所って何処かに無いか?」

 

 「菓子か……………近くには無いな。ただ、そこのおもちゃ屋が少し菓子を売っていたはずだ。」


 「へぇー、少し寄るかな。なあゾーイ! そこのおもちゃ屋に寄らないか!」


 「え? 何でだ?」


 「ペロパニーがお菓子を所望してたからな。」


 「そういえばそうだったわね。」


 「私は構わないが?」


 「それじゃあ行こうか。」


 アクセル達はおもちゃ屋に向かった。レンガを基調とした外観、ショーウィンドウには兵隊のおもちゃや何かの乗り物の様なおもちゃ、着せ替え人形などが並んでおり、大人でも少しワクワクする様な雰囲気を醸し出していた。お洒落さと子供らしさを両立した陳列にはセンスを感じる。アクセルは勝手に60代位の渋めの爺さんが趣味でやっているんだろうなんて思ったが………


 「ん? あの男…………」


アクセルが外から店内を見ると、コロシアムでラインハルトの剣を受け止めたかもしれない男がおり、子供と何か話していた。


 「これが欲しいのかい?」


 「うん! お父さんと同じ剣だよ!」


 「そうなんだぁ~……………勿論お金があれば買う事はできるよ?」


 「お金は持ってなくて………………」


 「じゃあ来んじゃねぇよ、ガキ。泥とかで遊んでろ。」


 「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!! ご、御免なさい!!!」


子どもはそのままドアを開けて店の外へと逃げて行った。


 「ひ、ひでぇ………………」


 「ちょっと注意しに行ってくる!」


 「あっ! ちょっと待て!」


そう言ったゾーイを追ってアクセルは店内に入って行った。


 「ん? 何だ君たち………」


アクセルは男が自分を見た際、一瞬苦い顔をしたのを見逃さなかった。


 「(やはりこの男、何かあるな。)」


 「子供へのあの態度は一体なんだ! 大人のする事か!」


 「おいおい、一旦何なんだよ……って、これは、ディアマンディス卿、此処には何をしに?」


 「さっきの態度は何だ! 貴様に人を慈しむ心は無いのか!」


 「随分前に売っちゃいましたよそんな物。」

 

 「今すぐさっきの子供に謝罪をしにいくんだ!」


 「ったく……面倒な事に…………」


 「なあお前、ちょっといいか?」


アクセルが割って入った。


 「………何ですか?」


 「さっき、ラインハルトの剣を持ってただろ? あの速度の剣を取ったのか?」


 「知らんな。」

 

 「本当か? 嘘は良くないぜ。」


 「本当に知らんよ………………」


 「あれ~? 社長? どうかしたんですか?」


店の裏からおもちゃ屋の店員とは思えない程露出の多い服を着て、モデルみたいな歩き方をした若い女が出てきた。


 「大人のおもちゃのお店だっけ?」


 「物は使いようさ、例えばこの人形なんか………………」


 「話しを逸らすな!」


ゾーイが強い口調でそう言った。


 「もしかしてまた社長がお金を持ってない子供を追い返したんですか?」


アクセルとゾーイが揃って頷いた。


 「すみません、後で強く言っておくのでここはどうか……………」


 「どうするゾーイ?」


 「………………もう二度とあんな事はしないと誓え。」


 「はいはい、誓いますよ。」


 「全く…………」


 「俺の話しはまだ終わってない、あんたは何者なんだ?」


 「ただのおもちゃ屋だ。それ以上でもそれ以下でもない。」


 「本当か?」


 「何なんだ、そう言ってるだろ。今日はコロシアムの崩壊に巻き込まれり、因縁つけられたり散々だ………………」


 「まあいい……………お菓子って置いてあるか?」


 「右の棚だ、早く買って帰ってくれ。」


そうしてペロパニー達とも合流し、お菓子を選び始めた。


 「私はこれにするわ。アクセルも何か買ったら?」

 

 「う~ん、良く分からん。」


 「これとか美味しいぞ、アクセル。」


 「何でもいいからさっさと済ませてくれ。」


アクセル達はお菓子を選び、買い終わり、店の外へと出て行った。


 「ありがとうございました~! …………危なかったですね社長。」


 「ああ、流石にビビった。」


 「コロシアムに行かなかったら良かったんですよ。」


 「深緑の騎士の実力を見たくてね、馬鹿ばっかで助かったよ、あのパンチは恐らく全力に近い威力だったはずだ。」


 「バレなかったですかね? バンリ帝国のスパイだって事。」


 「多分な。」





一方、アクセル達は………………


 「ん、美味い。」


 「だろ? 子供の頃から好きなんだ。こっちも食べてみてくれ。」


 「んっ。」


アクセルはゾーイの手から直接お菓子を食べ、ゾーイもアクセルに食べさせて貰ったりしてイチャイチャしていた。


 「美味しいなアクセル。」


 「ああ………………」


 「若いっていいわよね~………まあ、私は若すぎるんだけど。」


 「お菓子なんて食べた事なかったら新鮮だ…………ん?」


その時アクセルはお菓子の包み紙に何か変な模様が描かれているのが見えた。


 「何だこれ?」


 「ああ、それはリネア教のシンボルだ。」


 「シンボル?」


 「そこら辺にも一杯あるぞ、あそこの旗とか。」


その模様はあみだくじの様な線の模様だった。一本の線からどんどん枝分かれしていって、最終的には8本の線になっている。


 「これは線、人の運命を表している。何が起ころうとある一つの運命に到達するという意味だ。」


 「随分地味なシンボルだな。」


 「そうか? これを見ると安心する、心の拠り所なんだ。」


 「へぇー、まあ感性は人それぞれだよな。」


アクセルは大して気にもせず、町中にあるシンボルを見ながら何か心に変化があるか確かめた。が、特に何もない。アクセルは口の中にある飴をかみ砕いて屋敷まで歩く速度を少し上げた。


 



ディアマンディス邸にて……………


 「なあアルバート、結局深緑の騎士とは何だと思う?」


 「さあな………ただ、魔王は深緑の騎士に一切触れていなかった。多分恐れていたんだろう。何がそこまで魔王を恐れさせたのかは分からないけどな。」


 「魔の王………自らの王位が奪われる事を恐れたんじゃないのか?」


 「それも分からない。」


 「お父さま! 帰りましたぁぁ!!!」


ゾーイ達が屋敷に戻ってきた。


 「アルバート、懐に入ってろ。」


ベネディクトはアルバートを懐に入れ、ゾーイ達を向かい入れた。


 「お父さま! 実は色々あって………………」


 「コロシアムをぶっ潰したんだろ?」


 「え!? な、何故それを………………」


 「この国の事なら何でも知ってるさ。まあ気にするな、どうにかするよ。後、アクセル。」


 「何だ?」


 「次は何かを破壊したりするなよ? やるならせめてそいつの家にしとけ。」


 「分かった、肝に銘じておくよ。」


 「新聞社の方も私が調査しておく、そして、アクセルには正式に魔王の討伐を依頼する事にした。」


 「何時行くんだ?」


 「今だ。パーティーはアクセル、ペロパニー、アルバート。」


 「え? お父様、私は?」


 「駄目に決まっているだろう。家で待っているんだ。」


 「い、嫌です! 私もアクセルと行きます!」


 「駄目だ。」


 「嫌です!」


 「駄目だ。アクセルもそう思うだろ?」

 

 「まあ、危ないからな。」


 「そんな………アクセルまで………………」


 「ペロパニーは構わないか?」


 「当然でしょ、監視しなくちゃいけないんだから。」


 「じゃあ決まりだ。準備してきてくれ。」


 「私は……………わ、私も行かせてください!」


 「駄目だ。悪いが、ゾーイはついて行けない。足手纏いがオチだ。」


 「………っ!!」


ゾーイはそのまま自室の方へと走り去ってしまった。


 「幾ら何でも言い過ぎだろ。」


 「ああ言うしかない。アクセルもそう思うだろ?」


 「そうだけどさ……………」


 「しっかり準備しておけよ。」


 「あっ、そうだ。ちょっと頼みがあるんだ。」


アクセル思い出したかの様にそう言った。


 「何だ?」


 「俺の部屋にコートがあったんだが、あんたのか? 貰ってもいいか?」

  

 「コート? そんなのあったかな………………」


 「ちょっと見てくれよ。」


アクセルはベネディクトを連れて自室に向かい、ロッカーを開けてコートを取り出した。


 「思い出した、前にこの部屋を使っていた奴が置いてったんだ。何時か戻るからその時まで置いておいてくれって。」


 「じゃあ貰えないか………………」


 「いや、いいよ。やる。何年も戻って来ないんだ。あいつが悪い。」


 「そう? じゃあ遠慮なく。」


アクセルはコートを着て、ベネディクトに見せた。


 「似合ってるよ、ピッタリだ。」


 「気に入った、着てこっと。」


 「(あいつが着てたにしては大きすぎるな、アクセルでピッタリとは。何であいつはこんなの持ってたんだ?)」


 「ゾーイにも見せようか…………ん?」


アクセルがコートのポケットに手を突っ込んだ時、何かが手に当たる感触があった。

 

 「何だ? ……………紙?」


アクセルが取り出したのは紙切れ、乱雑にノートか何かから千切った様なその紙には、何かの模様が描かれている。


 「これは………リネア教のシンボルと…………目?」


そこにはリネア教のシンボルの上に目の模様が描かれていた。


 「なあ、これが何か分かるか?」

 

 「ん? これは………リネア教のシンボルだな。だが、上の目は何だ?」


 「あんたも分からないか……………」


 「まあただの落書きだろ。」


 「そうだよな…………ちょっとゾーイにこのコート見せてくれるよ。」


アクセルは捨てる気にもなれずその紙をポケットにしまい、ゾーイの部屋の前までやって来た。

 

コンコンッ


 「入っていいか?」


 「………………ああ。」


アクセルが部屋に入ると、ベッドで俯きながら座るゾーイの姿が目に入った。


ぼふっ

 

 「直ぐに戻るよ。」


アクセルはゾーイの隣に腰掛け、ゾーイはアクセルの肩に頭を乗せてきた。

 

 「私も行く。」


 「危険過ぎる。速攻でぶっ倒して直ぐに戻るからさ。」


 「嫌だ、行かせてくれ。絶対に足手纏いにはならない。」


 「そんな事心配してないよ、ただゾーイが心配なだけさ。ベネディクトもな。」


 「分かってる。分かってるけど………………」


 「本当に直ぐに戻るからさ。帰ったらイチャイチャしようぜ?」


 「あ、あのなぁ………………私もアクセルの事を心配して、本当は魔王討伐には行って欲しくないんだぞ?」


 「俺が負けると思うか? 魔王軍を壊滅させるさ。一瞬で。」


 「気を付けてな?」


 「ああ、勿論。」


そうして二人は唇を重ね、そのまま離さずにベッドに倒れ込んだ。


 「しようか。」


 「えっ………………うん………………」


 「いいのか?」


 「アクセルから誘ったんだろ…………あっ、お父様が近くに居るのか、じゃあ流石に…………」


 「多分大丈夫だよ、バレっこないって。」


 「だ、駄目だ……………そ、そうだ! アクセルが帰ったらしよう。それまでお預けだ。」


 「ええ~? まあ仕方ないか。帰ったらな。」


アクセルは再びゾーイにキスをし、立ち上がってコートを見せた。


 「どう?」


 「どうしたんだ? それ。」

 

 「俺の部屋のロッカーにあったんだ。」


 「へぇー、いいじゃないか、似合ってる。」


 「そうだろ?」


アクセルはくるりと一回転し、後ろまで見せた後、ベッドに戻って腰かけた。


 「帰ったらさ………………」


 「何だ?」


 「いや、何でもない。」

 

 「何だよ、気になるじゃないか。」


 「帰ったらな。」


 「…………?」


コンコンッ


 「ゾーイ? 入っていいか?」


ベネディクトがドアをノックしてそう言ってきた。


 「ちょ、ちょっと待ってください! あ、アクセル、ちょっとどいてくれ。」


 「分かってるよ。」


アクセルはちょっと嫌がりながらゾーイの横を離れ、椅子に座った。


ガチャ


 「ゾーイ、やっぱりアクセルに同行してくれ。」


 「え!?」


唐突過ぎるベネディクトの話しにアクセルもゾーイも言葉を繋げられずにいた。


 「ちょっと事情があってな。アクセル、何があってもゾーイを守れよ?分かったな?」


 「な、何でそんな急に…………そりゃあゾーイは絶対に守るけど、事情って何だよ?」


 「事情は事情だ。リアナも連れて行かせるから、よろしくな。」


 「じゃ、じゃあ私もアクセルと行っていいって事ですよね?」


 「そう言ったじゃないか。」


 「よ、良かった! 一緒に行けるぞアクセル!」


 「あ、ああ…………(おかしい、あそこまでゾーイの事を大切に思っているのに何故急に行っていいなんて言い出すんだ? どんな事情があったらゾーイが行く事になるんだよ? 嬉しいけど。)」


 「準備はしっかりしておけ、まあ、必要な物は全て揃えてあるがな。」


 「分かりました! 悪いがアクセル、甲冑を着るから部屋を出て貰ってもいいか?」


 「ああ。」


 「甲冑は飛行船に積んである、ここにはないぞ。」


 「飛行船? 何ですかそれ?」


 「上に停めてある、確認してきてくれ。それとアクセル、ついて来い。」


 「ん? ああ、分かった。」


アクセルはゾーイと共に部屋を出て、ゾーイは上に、アクセルはベネディクトに促されて廊下の奥へと連れていかれた。


 「何だよ?」


 「ここじゃ無理だ。」


 「勿体ぶるな、碌な話しじゃなさそうだがな。」


 「腕を貸せ。」


アクセルは腕を出すと、ベネディクトがそれを掴んで、瞬間移動した。


 「ま、前の部屋か、あのドラゴンと戦った………………」


瞬間移動した場所はアクセルがアルバートと戦った鉄の部屋だった。前と違う事があるとすれば、目の前にリアナが居た事だ。


 「いいかアクセル? 良く聞けよ?」


 「分かってるよ、何だ?」


 「数日以内にバンリ帝国がロストンに侵攻してくる。」


 「え? バンリ帝国って隣国の事だっけ?」


 「余り良く知らないよな、説明してやる。」


パチンッ


ベネディクトが指を鳴らすとその場に一瞬にして机と椅子が現れた。


 「もう驚かないからな。」


 「座れ。」


リアナも一緒に座り、ベネディクトとは向かい合う様に座った。


 「バンリ帝国という国はほぼ大帝の独裁状態にある。完全な独裁だ。誰も逆らえない。」


 「それで?」


 「手段を択ばないその国にロストン王国は囲まれているんだ。」


 「囲まれている?」


 「地図を見せよう。」


ベネディクトは指を鳴らし、地図を机の上に出現させた。


 「見ての通りだ、西以外は全てバンリ帝国に囲まれている。」


その地図はこの大陸の地図であり、ロストン王国とバンリ王国の位置が正確に記されている。ベネディクトの言った通り、ロストン王国はバンリ帝国に囲まれており、唯一接していないのは西だけだった。


 「何でこんな事になってんだよ、こんな状況に置かれている国の将軍がGOATか?」


 「色々あるんだよ。」


 「ここまで来たら西が気になるな、山と海がある様だが?」


 「そこが魔王の本拠地だ。」


 「八方塞がりだな。」


 「バンリ帝国は恐ろしい国だ。どんな卑怯な手を使ってもこの国を占領しようとするだろう。」


 「だからゾーイを魔王討伐に連れていくのか? 危険な事に変わりないと思うが………………」


 「色々な事を考慮した結果、魔王よりもバンリ帝国の方が恐ろしく、危険であると判断した。実は魔王の事よりもバンリ帝国には分かっていない事が多い。」


 「そんな事があるのか? バンリ帝国ってでかい国なんだろ? 人間だしさ。」


 「ここからは国家機密どころじゃない話しをする。絶対に口外するなよ? もしもの時はお前を殺さなきゃならない。」


 「おいおい物騒だな。」


 「マジな話しだ。」


ベネディクトは真顔でアクセルにそう言い、アクセルにも事の重大さが伝わってきた。


 「もし、魔王を討伐し、この事を口外しないまま帰ってきたらゾーイとの結婚を許そう。」

 

 「え!? ま、マジ!? っていうか、そういう関係だって事知ってたのか!?」


 「当り前だ。ずっとゾーイの様子がおかしかったし、どこか楽しそうだったからな。」


 「そうか…………絶対に約束は守るよ。」


 「先ずはだ………………」


ベネディクトは一瞬躊躇い、上を見上げた後、覚悟したかの様に真っすぐアクセルを見つめ、話し始めた。

 

 「ロストン王国は長らく魔王と取引をしている。」

 

 「…………? 何言ってんんだ?」


アクセルには意味が理解できなかった。ベネディクトは分かっていたかの様に頷き、再び口を開いた。


 「バンリ帝国に囲まれていると当り前の事だが資源の枯渇が著しくてな。他国との国交や文化交流の障壁になっている。そこで魔王と取引していたんだ。西から資源を受け取り、ロストン王国は人間を送っていた。」


 「な!? 人間を!?」

 

 「罪人が殆どだがな。何に使っているのかは知らない。」


 「そんなの…………奴隷にしてるか……………もしくは………………」


 「分かっている。だが、必要な事だったんだ。他にも海を渡る為に船や安全を保障してもらってる。バンリ帝国なんかよりもずっと交流しているんだ。」


 「そんなの……………討伐する意味はあるのかよ?」


 「魔王の目的は一貫して人類の滅亡だ。私が会った時にはそう言っていた。」


 「会った!?」


 「姿は見ていない、声だけだがな。基本はリアナに物資の取引の監督者になってもらっている。偶に私も行くんだ。」


 「何故このメイドにやらせてるんだ?」

 

 「透視が使える事は知っているだろう? 物資の中に異物や毒物、爆発物が無いかを見分ける存在が必要だったんだ。武器を隠しもっている魔物が居ないか調べる為にもな。」

 

 「必須って訳か。」


 「そうだ。これ以上魔王と取引を続ける訳にはいかない、やってくれ。」


 「…………なんか、勝手な気がするんだよな。」


 「お互い様さ、人類滅亡なんて言ってる物騒な連中を野放しにはできん。」


 「何故人類滅亡なんて言ってるんだ?」


 「さあな、知りたくもない。後、勢力と新聞の話しをしなくちゃいけない。」


 「勢力と新聞?」


 「新聞の事なんだがな、恐らく情報を流した奴が居る。」


 「誰だよそれ?」


 「デッドラインだ。」


 「裏切り者が居るって事か?」

 

 「多分な。」


 「マジかよ…………」


 「デッドラインは全八名。」


第八位 オスカー・オッターバーン


第七位 チェスター・サンダーズ


第六位 ジェイ


第五位 ジーン・ジャスティス


第四位 ペロパニー・ペロットパーン


第三位 ジル・キング


第二位 ドット・J・ライト


第一位 ガスパール・ルフェーブル


 「それぞれに二つ名があってな……まあそれいいか……とにかく、この中の誰かが裏切っている可能性が高い。まあ、確定した訳じゃないがな。バンリ帝国にも大帝の親衛隊が居るそうなんだが、詳しい事は分かってない。」


 「ペロパニーが裏切っている可能性は? 連れて行くのはリスキーじゃないか?」


 「その可能性が最も低い。多分あいつは何も知らないだろう。」


 「この事を知ってる奴は?」


 「ここに居る者だけだ。」


 「そんな重大な事が起こってるってのに魔王討伐に向かっていいのか? 俺が居た方が良くないか?」

  

 「バンリ帝国が攻めてくるのは多分、お前が此処から居なくなるからだろう。」


 「俺の事を知ってんのか?」


 「タイミングが不自然なんだ。何故今なのか私でも分からない。何か何時もと違う事があるとすればお前だ。」


 「憶測の域を出ないだろ? こんな時に魔王討伐に行くほどじゃない。」

 

 「やばかったらペロパニーに連絡して直ぐに戻ってきてもらうさ。何より、此処には私が居る。それだけでロストン王国が破れる事は無い。」


 「大した自信だな。」


 「魔王や親衛隊について詳しくはアルバートから聞いてくれ。もしかしたらデッドラインの誰かと戦う事になるかも知れないからな。」


 「直ぐ戻るよ。」


 「ああ、期待してるぞ。」


ベネディクトは立ち上がり、アクセルに近づいて行って腕を掴み、リアナはアクセルのもう片方の手を掴んで、瞬間移動した。


 「ここは………………」


 「上だ。」


そこはディアマンディス邸の上の草原だった。そして、そこには………


 「な、何だあれ………………」


アクセルが見たのは大きな楕円形の白い塊と、その下に付く木で作られ、窓が埋め込まれている四角い箱。


 「飛行船だ。飛ぶんだよ。」

 

 「飛ぶって、マジかよ………………」

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