私はあの子の模造品
うり北 うりこ@11/1ざまされ②書籍化
第1話
はじめは、ただのあこがれだった。
マイカみたいになりたくて。マネをした。追いかけた。
いつしか、私もマイカになれるのだと信じて。
「マイカとメイって、いつも一緒だよねー」
「まーね。マイカのことなら、何でも知ってるし」
「そうなんだぁ? これ、マイカとおそろい?」
「そう。いいっしょー」
なんて笑いながら、色違いで買ったリュックを自慢げに見せる。
本当はあまり趣味じゃない……気がする。
でも、マイカが「これがいい」と言った。だから、これはいいものなのだ。
「マイカって、センスいいよねー」
そう。私と違って、マイカはセンスがいいのだ。キラキラと誰よりも輝いているはずなのだ。
だから、私の気持ちがおかしいんだ。
私も好きなはずで、好きじゃなきゃいけないのだから。
「本当に、メイってマイカが好きなんだね」
「当然っしょ」
私は幸福なんだ。
一緒にいられて、一番近くにいられるのだから、嬉しいはず。そうじゃなきゃ、いけない。
それなのに、最近はマイカといるのが息苦しい。
マイカは私よりも可愛くて、人気者。
私の友だちはマイカの友だちだけど、マイカの友だちは私の友だちではない。
私は、いつでも『マイカの友だち』なのだ。
マイカがうらやましい。
私がマイカになりたかった。
マイカがいなければ、私はその場所にいられた?
いや、他の誰かがそこにいるだけだ。
マイカのマネをしたところで、もうマイカにはなれないのだと、思い知った。
だけど、変えてしまうのも怖い。もとの自分も、もう分からない。
うらやむばかりの私は、これからもマイカの後を追いかけるのかな。
それって、いつまで?
「ねぇ、メイってそういうのが好きだったっけ?」
指差されたリュックに心臓が嫌な音を立てた。
必死に蓋をしているのだ。お願いだから、気付かせようとしないで……。
「入学してきた頃と、ずいぶん印象が変わったなって。私、あの頃のメイに少し憧れてたんだよね。シンプルで自分があるって感じで」
「…………そっか」
「うん。でも、趣味や考えって変わるものだしね。今のメイも好きだよ」
その言葉に、私は今の自分が好きじゃないな……と思った。前の自分の方が好きだった。
隣の芝生は青かったのだ。まぶくして、マネをせずには、いられなかった。
だけど、うらやんでばかりではなく、自分の芝生も見てみたら、思ったよりも悪くなかったのかもしれない。
他人からしたら、うらやましいものかもしれない。
それでも、私の芝生は、私が変えてしまった。
何が好きだったのかも、もうあいまいで、分からない。
私はマイカの模造品だ。
あこがれて、マイカになりたがって、自分を捨てた。
もう、私は……。
私はあの子の模造品 うり北 うりこ@11/1ざまされ②書籍化 @u-Riko
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