知りたいけど知りたくない。それが”あこがれ”
リュウ
第1話 知りたいけど知りたくない。それが”あこがれ”
「あっ」
僕は、思わず声をあげた。
通学途中のバスの中から、彼女を見つけた。
高校に通うため、このバスに乗るようになってから、彼女を見つけた。
最初は、後ろ姿だった。
女性にしては、高身長。僕と同じくらい。
スカートから伸びる足は、運動部らしいしまったふくらはぎ。
スッキリしたアキレス腱と窪みが綺麗だ。
僕は、歩くスピードを上げ、追い越し際で、彼女の顔を横目で見た。
かわいい。
幼さが残っているので、美人と言うよりは、かわいい。
歳を重ねても、美人になることは間違いが無いだろう。
そのまま、彼女を追い越して友だちを待っている体で待ち伏せする。
時々、背伸びなんかして、友だちを探しているフリをした。
正面から彼女を見つめる。
彼女の周りに何か見える。
輪郭にそって、ゆらゆらと空気が揺れるような。
蜃気楼のような。
そうだ、オーラだ。
スターは、それを持っているというのを聞いたことがある。
遠くに居ても、姿が見えなくても、その存在が分かるという。
姿が見えた時に鳥肌が指の先から、頭頂部に向かって流れるような感覚。
それを感じさせるオーラを発すると言う。
僕は、見惚れていた。
「待ち合わせか?」
その時、僕の頭を叩いたのは、友人の智也だった。
智也は小学からの友だち。高校も一緒だ。
僕の見ていた方に目を向ける。
「おっ、彩加じゃん」
「知ってるの?」
「知らないヤツなんていないよ。
長距離の陸上部。
今、注目されてて、テレビにも出てた。
”リトルモンスター”って、オリンピック選手のヤツ。
けど、そのインタビューがさ。恥ずかしそうに話すんだ。
それがたまらない。シャイなんだよね」
「話したことあるの?」
「あるはずないだろ。あの制服みろよ」
僕は、彼女の制服を確認する。
「えーっ、南高」
「そうさ、進学校の南高。
頭も良くて、運動も出来て、美人で、スタイルもいい。
俺らからすると、雲のまた上の人さ。憧れるよね」
そうだ、これは”あこがれだ”。
好きを超えている。
ただ、存在しているだけで良い。
特別な人なのだ。
彼女の事をもっと知りたい。
いや、知りたくない。
知りすぎると、”あこがれが”萎むかもしれないから。
明日も明後日もずーっと見ていたい。
その為に、僕は生きる。
そんな事を感じさせる。
考えさせる感情、”あこがれ”。
「あれ、リカのこと待っててくれたのぉ」
彼女を見つめている二人に声を掛けたのは、同級生の里香だった。
茶髪で化粧して短いスカートの里香。
「こいつが、彩加にあこがれてるんだってさ」
智也が、ニヤつきながら、彩加の方を親指を指す。
「へぇー、そうなんだ」
里香が彩加を見つめていたが、急に口角が上がった。
「リカ、サヤカの事、知ってるよ。色々、知ってる。知りたいっ」
里香が悪戯っぽい笑顔を二人に見せる。
「いや、いや、知りたくないです」
僕は、あわてて断り、その場を離れる。”あこがれ”が萎んでしまう前に。
後ろの二人の声が聞こえる。
「トモヤもあこがれてるのぉ。リカのこと、好きだって言ったじゃん」
「いやいや、憧れているのは、ア・イ・ツ。
俺は、里香のこと大好きだよ」
「ほんとう?」
「あっ、遅刻するぞ!」
智也の声がするのと同時に、僕は智也に追い越された。
「まってよぉ」
里香が、智也を追いかけた。
僕は、振替っってみたが、彩加さんの姿は無かった。
僕は、智也と里香の後を追った。
知りたいけど知りたくない。それが”あこがれ” リュウ @ryu_labo
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