【KAC20252】サバサバとは程遠い場所にいる嫁の悩み

ゆうり

嫁としての劣等感

サバサバしている性格だったら、もっとうまくやれているのだろうか。


旦那さんの実家で過ごしていると、頭にそんな言葉が浮かぶ。


旦那さんの実家に理由あって約1週間の滞在中だ。

義実家というのは、自分の実家とは違って、どうやったって気を遣う。


HSP×エンパスでもある私(自分調べ)は、自分の意見を素直に口にするのが苦手だ。


水が飲みたいけれど「水をくれますか」の一言が言えない。

朝ごはんを抜きたいけれど「朝ごはんは大丈夫です」の言葉が出ない。


洗濯物だとか洗い物だとか、ご飯の用意だとかを全部、お義母さんがやってくださるのだが、それも気まずい。


「アッ、洗濯物ありがとうございます」

「アッ、洗い物しましょうか」


などはなんとか言えるのだが、必ず言葉を発そうとすると、出だしに「アッ」と言ってしまうし、言っているときの私はどう見たって挙動不審だ。

効果音をつけるのならばびよびよびよといったかんじだろう。


さらに自分で自分を疲れさせてしまっているのが、ずっと脳みそがフル回転させてしまっている(無意識)ということだ。


「アッ、洗濯物ありがとうございます」の言葉を発するまでに、私の脳みそは(洗濯物出しててよかったかな)(干すのくらいはやったほうがいいかな)(だけどお義母さんにはお義母さんのやり方があるだろうし、二階はプライベートスペースだろうから立ち入るのもなぁ)(あっ、今、洗濯物取り込んでくださっている?たたむくらいはやったほうが……)とフル回転し続けている。


そして、たたまれた洗濯物を見てからやっと「アッ、洗濯物(中略)」という言葉を出している。


私は、こんな私が好きではない。


もっとハキハキとコミュニケーションをとれる性格だったら、お義母さんたちも接しやすいんじゃないだろうか。


そんなふうに考えながら、頭の中には高校時代の同級生の顔が浮かぶ。


友人と言うほど仲良くはないが、同じグループだったその子は、サバサバとした性格で、友人の親ともすぐに距離を縮めることのできるようなコミュニケーション能力の持ち主だった。


私もその子みたいにサバサバとした性格だったら、お義母さんと並んでキッチンに立ったり、自分の洗濯物は自分で片したりすることができるんじゃないだろうか。


どんどん、どんどん、自分の不甲斐なさが情けなさくなっていく。


いろんなことが浮かび、どんどん自分が追い詰められていく。



夜中、息子が寝た後、旦那さんにこっそりと心のガサガサとした部分を打ち明けた。


すると旦那さんは言った。


「なんで自分をそんなに自分を悪く言うんだろうって、正直少しむかついたところはある。だけど、そこも含めて、それが君の良さなんだよね。そうやって考えすぎてしまうところも気を遣いすぎて疲れちゃうところも、全部含めて君のいいところだと思う。君だからこそできていることなんてたくさんあるよ。第一、俺の実家で一週間も滞在できるのは君だからだよ」


その言葉を聞いて、心がまろやかになっていくのが分かった。

思いがけず、泣きそうになってしまう。


正直、旦那さんがこんな人じゃなかったら、私はとっくに無理だった。


そのとき、誰かが言っていたのか、なにかで読んだのか、こんな言葉を思い出した。


【夫婦は尊敬しあってこそうまくいく。尊敬がなくなった夫婦はうまくいかない】


尊敬と憧れは似ているのかもしれない。


劣等感からの憧れよりも、素敵だなと感じる感情からの憧れの方が、心はこんなにも優しくなる。

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【KAC20252】サバサバとは程遠い場所にいる嫁の悩み ゆうり @sawakowasako

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