あこがれ。

天照うた @詩だった人

ねぇ、好きだよ。

 君への憧れが、止められない。

 この高鳴る鼓動は、いつまで経っても止むことを知らない。

 君の隣に居ればいるほど、私が私ではなくなってしまうようで、少しだけ怖い。


 ――でも、このままでいたいって。君のことを、憧れ続けたいって思うのは、悪いことなのでしょうか?


 ◇◆◇


 私、世界が怖くってさ。自分が生きてることが不思議で不思議でたまらなくて。

 自分の存在の意味がわからなくて。

 生きてる意味なんてないと思ってた。愛されることなんて一生ないってわかってた。


 なのに、世界への憧れが止まらなくて。

 いつか自分もあの中に入れるんじゃないかなって、心のどこかで希望を持ってしまっていた。


 中学校入学。

 今までとは違う世界。

 一歩足を踏み入れた途端、全てが歪んだ。

 今までの常識。自分の性格。見える世界。

 全てが今までとは違っていて。私の今までとは違っていて。

 それが怖くもあり……少しだけ刺激的だった。


 でも、それは直ぐに崩れていった。

 今までと変わらないものもあったから。

 世界が変化したのに、君だけが変わらないだなんて、なんだか卑屈だね。

 私たちの関係も全てが崩れてしまえばよかったのにさ。

 そんなことを考えて、ひとしずくの涙を零す。

 そんな毎日が続いた。



 一生、このままなのかなって思ってた。

 私に与えられるのは「罰」だけで。その下にずっとずっと生きていかなければならない、って。

 重りを背負って、私だけが犠牲になって。

 そうすれば世界はまるで平和になる?

 そんなの平面上のことじゃないの?


 ねぇ、誰か私を救ってよ。もう私は、限界だよ。

 心の中の叫びを聞いてくれたのは――




 君でした。




 最初は、みんなと同じだと思ってた。

「みんな」は私のことなんて気にもとめない存在として一括りにしてた。


 でも、君はその糸から潜り抜けて。

 私へ手を差し伸べてくれたんだ。


 その手がどれほど暖かいものだったか。

 私にとって助けになるものだったか。

 きっと君は知らないでしょう。


 きっと君にとって、この行為は、他の人ともしている「普通」のことで、きっと特別なんかじゃない。

 そんなのわかってた。


 でも、私にとってそれは「特別」で。

 どうしようもなく愛しいもので。

 君のことを、憧れるようになってしまったのです。

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