第40話:知識の遺産


 バレンフォードの丘の上に建つ「賢者の学院」は、朝日を浴びて輝いていた。白い石壁に大きなガラス窓、そして中央に聳える高い塔。丘陵地帯を見下ろす学院の姿は、まるで新時代の灯台のようだった。


 レインは塔の最上階にある自室の窓から、広がる景色を見渡していた。開校から半年が経ち、学院には王国各地から生徒が集まっていた。若い騎士や見習い魔法使い、商人の子弟、そして何より、普通の市民の子供たちだ。彼が夢見た、知識を万人に開かれたものにするという理想が、形になりつつあった。


「準備はいいですか?」


 アイリスが扉を開けて入ってきた。彼女は白い教師用の制服を着ていた。エルフの血を引く薬学教師として、学院の重要な役割を担っていた。


「ああ」


 レインは微笑んで振り返った。「今日はケインの村からの生徒も到着する日だったな」


「そうね。彼らも『創造者の血』を引く子供たちよ。特別なクラスを用意したわ」


 二人は階段を下り始めた。壁には古代の地図や天文図が飾られ、所々に「創造者の工房」から持ち帰った遺物が展示されていた。それらは単なる装飾ではなく、生徒たちの学びの対象でもあった。


「リーザの授業はどうだ?」


「大盛況よ」


 アイリスが嬉しそうに答えた。「彼女の魔法理論は、従来の学説とは一線を画すものだけど、生徒たちは食い入るように聞いているわ」


 彼らが中央ホールに降りると、そこは既に活気に満ちていた。制服を着た生徒たちが行き交い、各教室への移動や朝の準備に忙しそうだった。教師たちも資料を抱えて急ぎ足で通り過ぎていく。


「学院長!」


 若い生徒が駆け寄ってきた。「今日の特別講義、楽しみにしています!」


「ありがとう」


 レインは優しく微笑んだ。「今日は『創造者』と『淵の影』について、深く掘り下げてみよう」


 生徒が去った後、アイリスが小声で言った。


「子供たちに本当のことをどこまで話すの?」


「彼らが理解できる範囲で」


 レインは答えた。「次元の扉のことも含めて。未来を担う彼らには、真実を知る権利がある」


 一年前の「星の間」での発見以来、レインたちは次元の扉の研究を進めてきた。エドガー王子との密接な連携のもと、「創造者の工房」は徹底的に調査され、多くの新事実が明らかになっていた。


 そして今、彼らは予言された時が近づいていることを知っていた。来月、星々は特別な配列を形成し、次元の扉が開かれるだろう。


「心配ね」


 アイリスが静かに言った。「扉が開いたとき、何が起こるのか」


「創造者たちの帰還かもしれないし、単なる現象で終わるかもしれない」


 レインは答えた。「いずれにせよ、私たちには準備する責任がある」


 彼らが職員室に向かう途中、リーザが急いで駆けてきた。彼女の表情には興奮の色があった。


「大変よ、レイン! 『星の間』からの信号が!」


「何?」


 彼は驚いて足を止めた。


「通信結晶が反応したの。『星の間』の装置が活性化し始めているわ」


 彼らは学院の地下室に急いだ。そこには「創造者の工房」と連絡を取るための特別な装置が設置されていた。通信結晶は確かに青く輝き、活発に脈動していた。


「予定より早いな」


 レインは眉をひそめた。「予測では来月のはずだったが」


「計算に誤差があったのかもしれない」


 リーザが言った。「次元の扉が今開かれようとしているわ」


 レインは即座に決断した。


「エドガー王子に連絡を。そしてケインにも。『創造者の血』を持つ三人が必要になるだろう」


 アイリスが通信結晶を使って連絡を始める中、レインは学院の運営を一時的に他の教師たちに任せる準備をした。


「生徒たちには?」


「実地研修のための出張と伝えておこう」


 彼は言った。「パニックを起こさせる必要はない」


 午後になって、エドガー王子が王都から急いで馬を飛ばしてきた。彼はもはや王子という立場だけでなく、「古代文明研究」の権威としても知られるようになっていた。


「状況は?」


 彼は学院に到着するなり尋ねた。


「『星の間』の活性化が進行中です」


 レインが説明した。「まだ扉は開いていませんが、間もなくでしょう」


「ケインは?」


「既に工房に向かっています。私たちも急ぎましょう」


 彼らは最小限の装備だけを携え、「創造者の工房」へと出発した。エドガーはレインと共に馬を走らせながら、最近の発見について語った。


「王室の古文書からも、かつて創造者たちが『故郷への帰還』を語っていたという記録が見つかった」


 彼は言った。「しかし、彼らは実際に帰還を果たしたのか、それとも何かの理由で計画を断念したのか、その後の記録は残っていない」


「創造者たちは既にいないのに、なぜ今になって扉が開くのか」


 レインは疑問を口にした。「彼らの残した自動システムなのか、それとも…」


 言葉が途切れた。彼らは皆、創造者たちの一部がまだどこかに生き延びているという可能性を考えていた。


 山道を登り、彼らが「創造者の工房」に到着したのは夕方だった。入口では既にケインが待っていた。彼の表情は緊張に満ちていた。


「来たか」


 彼は二人を見て安堵した様子を見せた。「中で何かが起きている。音と光が」


 三人は慎重に工房内に入った。以前の訪問とは明らかに違う雰囲気だった。廊下の照明が強く輝き、床は微かに振動していた。


「『星の間』へ急ごう」


 彼らは急いで奥へと進んだ。扉は既に開いており、内部からは青白い光が漏れ出していた。


「これは…」


「星の間」に入ると、そこには驚くべき光景が広がっていた。中央の装置が高速で回転し、天井の星図が激しく輝いていた。そして最も驚くべきことに、空間の一部が歪み、ゆっくりと開き始めていた。


「次元の扉だ」


 レインは息を呑んだ。扉の向こうには、彼らの知る世界とは全く異なる景色が見えた。複数の月が浮かぶ夜空、そして奇妙な形をした建物の輪郭。創造者たちの故郷の光景だった。


「どうすべきか」


 ケインが緊張した声で尋ねた。「扉を閉じるべきか、それとも…」


 言葉が途切れたとき、扉の向こうから光の筋が伸び、部屋の中央に集中した。それは次第に形を成し、人型の輪郭を形成していった。


「守護者だ」


 エドガーが認識した。それは以前に彼らを出迎えた白い光の存在だった。しかし今回は、より明確な形をしていた。


「選ばれし者たちよ」


 守護者の声が彼らの心に直接響いた。「時が来た。創造者たちの最後の計画が実行される時だ」


「何が起きているのですか?」


 レインが尋ねた。「創造者たちはどこに?」


「彼らは既にいない」


 守護者は答えた。「この世界に来て数世代後、彼らは完全に同化した。彼らの血は今や王家や特別な一族にのみ残っている」


「では、扉の目的は?」


「交流のため」


 守護者は説明した。「創造者たちは故郷との絶えざる交流を望んでいた。彼らは故郷が淵の影から回復することを願い、五百年ごとに確認するよう計画していた」


「そして今は?」


「あなたたちのおかげで、淵の影は変化した」


 守護者の声には感謝の色が感じられた。「故郷の世界も同様に、長い闘いの末に平和を取り戻した。今、二つの世界は安全に交流できる状態にある」


 三人は互いの顔を見合わせた。これは単なる危機ではなく、むしろ、新たな可能性の始まりだった。


「どうすればいいですか?」


 レインが尋ねた。


「選択は自由だ」


 守護者は答えた。「扉を閉じることも、開いたままにすることも、あなたたちの判断に委ねられる。ただし、いずれの選択にも責任が伴う」


 守護者は二つの世界の状況をさらに詳しく説明した。創造者たちの故郷は技術的に進んでいるが、荒廃の痕が残っていた。交流すれば、互いに利益をもたらす可能性があった。しかし、急激な変化は社会に混乱をもたらすかもしれない。


「議論する時間をいただけますか?」


 エドガーが申し出た。これは一人や二人で決められる問題ではなかった。


「扉は一日開いたままだろう」


 守護者は言った。「その間に決断してほしい」


 三人は「星の間」の一角に集まり、深く議論した。それぞれの懸念や希望を語り合い、可能な限りの結果を考慮した。


「王国や他の国々の意見も聞きたいところだが、時間がない」


 エドガーが言った。


「創造者の血を引く者として、私たちには特別な責任がある」


 ケインが述べた。「先祖の意志を尊重すべきだろう」


「そして何より、世界全体の利益を考えるべきだ」


 レインが付け加えた。「短期的な混乱を恐れて、長期的な発展の機会を逃すべきではない」


 彼らは長い議論の末、扉を開いたままにし、二つの世界の慎重な交流を始めるという決断に達した。しかし、その交流は制限され、管理されるべきだった。


「賢者の学院が中心的役割を果たせる」


 レインは提案した。「知識と文化の交流の窓口として」


 三人は守護者のもとに戻り、決断を伝えた。


「賢明な選択だ」


 守護者は満足げに言った。「創造者たちもきっと同じ決断をしただろう」


 守護者は次元の扉の制御方法を彼らに教え、以後は「星の間」と扉の管理を彼らに委ねることにした。


「私の役目は終わった」


 守護者は次第に淡くなっていった。「これからは、あなたたち自身で未来を築いていくのだ」


 彼らが「創造者の工房」を後にする頃には、既に夜が更けていた。星空の下、三人は静かに山を下りながら、今日の出来事の重大さを噛み締めていた。


「すぐに王に報告しなければ」


 エドガーが言った。「国としての対応を検討する必要がある」


「村の長老たちにも伝えねば」


 ケインも頷いた。「彼らの知恵も必要だろう」


「そして学院では、扉の研究と管理のための特別チームを組織する」


 レインは決意を語った。「リーザを中心に、最も優秀な生徒たちも参加させよう」


 彼らが山の麓に着いたとき、アイリスが待っていた。彼女は彼らの表情を見て、何か重大なことが起きたと察した。


「聞かせて」


 彼女はレインに近づいた。


 彼は起きたことの全てを詳細に伝えた。アイリスは驚きながらも、すぐに実務的な提案を始めた。


「学院のカリキュラムを調整する必要があるわね。生徒たちに異世界との交流に備えた教育を」


「まさに私が考えていたことだ」


 レインは嬉しそうに言った。「君と一緒に計画を立てよう」


 翌日、レインとアイリスは学院に戻り、教職員に状況を説明した。予想通り、最初は混乱と不安が広がったが、レインの冷静な指導のもと、すぐに建設的な議論が始まった。


「これは恐れるべきことではなく、千載一遇の機会です」


 彼は教職員会議で語った。「私たちの学院は、二つの世界の架け橋となる重要な役割を担います」


 リーザは特別研究チームの編成を即座に始め、最も才能ある魔法使いや学者を集めた。ガルムは学院の安全体制を強化するため、新たな警備計画を立案した。


 数日後、王国からの使者が到着した。エドガー王子からの書状と共に、国王自身からの勅書があった。国王は次元の扉の管理を「賢者の学院」に正式に委ね、必要な支援を約束するものだった。


「国王陛下の信頼に応えましょう」


 レインは学院の全スタッフに向けて言った。「これは単なる責務ではなく、世界の未来を形作る機会です」


 一ヶ月が経ち、「賢者の学院」は大きく変化していた。新たな教科が追加され、「星の間」との定期的な訪問が組織され、異世界からの初めての使者を迎える準備が整っていた。


 ある晴れた日の朝、レインは学院の塔の上から朝日を眺めていた。丘の下では町が目覚め、学院には続々と生徒たちが集まってきていた。


「考え事?」


 アイリスが彼の傍らに立った。


「ああ」


 彼は微笑んだ。「ここまでの道のりを振り返っていた。転生してこの世界に来たとき、こんな未来が待っているとは想像もしていなかった」


「素晴らしい旅だったわね」


 アイリスも微笑んだ。「あなたが単なる商人から始まり、今や二つの世界を繋ぐ架け橋になるなんて」


「一人でできたことではない」


 レインは彼女の手を取った。「皆の協力があったからこそ。特に君がいなければ、ここまで来られなかった」


 彼らの会話の途中、リーザが急ぎ足で塔に上がってきた。


「レイン、準備ができたわ」


 彼女は興奮した様子で言った。「今日、最初の使者が『星の間』を通って来るはずよ」


「ありがとう、すぐに行こう」


 レインはアイリスに頷き、二人で塔を降りていった。学院の中庭では、教師たちが生徒に最後の指示を出していた。今日は歴史的な一日となるだろう。


 馬車で「創造者の工房」に向かう途中、レインは窓の外の景色を眺めていた。季節は春で、野原は花で覆われ、木々は新緑に輝いていた。


「まるで世界が新しく生まれ変わったようだ」


 彼は呟いた。淵の影との闘いから一年以上が過ぎ、世界は確かに変わっていた。魔力の流れはより調和し、豊かな自然が戻ってきていた。


「創造者の工房」に到着すると、そこにはエドガーとケインが既に待っていた。三人は無言で頷き合い、中へと進んだ。


「星の間」では全てが準備されていた。次元の扉は安定し、明確な輪郭を持って開いていた。扉の向こう側には、異世界の研究施設らしき場所が見えた。


「彼らが来る」


 ケインが言った。扉の向こうで動きがあった。何人かの人影が近づいてきていた。


 緊張感が高まる中、扉を通って最初の使者が現れた。彼らは見た目は人間に似ていたが、より背が高く、肌は青みがかっていた。目には特別な輝きがあり、服装は彼らの世界では見たことのない素材でできているようだった。


「我々は創造者の故郷、アストラリアから参りました」


 先頭の男性が流暢な古代語で話した。「あなた方の世界と再び繋がれたことを、心から喜んでいます」


 レインたちはあらかじめ準備していた歓迎の言葉で応じ、使者たちを「星の間」内に招き入れた。


 それから数時間、彼らは二つの世界の現状と歴史、そしてこれからの交流の可能性について話し合った。アストラリアも長い闘いの末に淵の影から解放され、今は回復の途上にあった。二つの世界の文化や技術、知識の交換は、互いに大きな利益をもたらすだろう。


 会談の後、使者たちは「賢者の学院」への訪問に同意した。彼らはレインたちの世界に関心を示し、特に淵の影との闘いや、その変化の方法に強い興味を抱いていた。


「あなた方が成し遂げたことは、我々の世界では不可能と思われていたことです」


 使者の一人が敬意を込めて言った。「『創造者の血』と現代知識の組み合わせが、奇跡を起こしたのですね」


 それはレインにとって誇らしい瞬間だった。前世からの知識が、この世界で真の価値を持ったのだ。


 使者たちが「賢者の学院」を訪れた日は、学院史上最も重要な日となった。生徒たちは好奇心と畏敬の念で使者たちを迎え、質問や議論が活発に交わされた。


 夕方、歓迎の宴が開かれ、新たな交流の始まりを祝った。エドガー王子は王国を代表して正式な友好の意を表明し、アストラリアの使者もまた、永続的な関係構築への希望を語った。


 宴の合間、レインはアイリスと共に学院の庭に出て、星空を見上げていた。


「あれが彼らの世界の方角だろうか」


 彼は星々を指さした。


「いつか行ってみたいわね」


 アイリスの目は好奇心で輝いていた。「彼らの世界の植物や薬草がどんなものか見てみたい」


「きっとその機会も来るだろう」


 レインは彼女の肩に腕を回した。「これはまだ始まりにすぎない」


 彼らが庭にいると、リーザが興奮した様子で駆けてきた。


「レイン! 使者たちが提案を持ってきたわ。アストラリアへの訪問団を組織したいそうよ」


「訪問団?」


「そう! 『賢者の学院』の代表者たちを招待したいと言っているの」


 彼らは宴に戻り、その提案について詳しく話し合った。訪問団は学院の教師と優秀な生徒たちで構成され、アストラリアの知識と文化を学ぶ機会を得るという。


「素晴らしい申し出です」


 レインは感謝の意を表した。「喜んでお受けします」


 夜が更け、使者たちは「星の間」で過ごすために戻っていった。次の数日間、彼らは学院と王国を見学し、この世界をより深く理解する予定だった。


 レインは再び学院の塔に上り、夜空を見上げていた。星々は今、かつてないほど明るく見えた。それは単なる錯覚かもしれないが、二つの世界が再び繋がったことで、宇宙そのものが喜んでいるようにも思えた。


「先生」


 彼は小声で言った。真理の結晶は既になかったが、彼はしばしばギルバート先生に語りかける習慣を失っていなかった。


「ついに全てが繋がりました。私がこの世界に来た理由、あなたが私を導いてくれた理由。全ては大きな計画の一部だったのですね」


 風が優しく彼の髪を撫で、まるで応答しているかのようだった。


 数週間後、「賢者の学院」は大きな転換点を迎えていた。アストラリアへの最初の訪問団が準備を終え、出発の日を迎えていた。レイン自身も団長として参加することになっていた。


 出発の朝、学院の中庭には多くの人が集まっていた。訪問団のメンバー、見送る教師や生徒たち、そしてエドガー王子も王国を代表して来ていた。


「歴史的な瞬間だ」


 エドガーは微笑みながらレインに言った。「最初の公式訪問団。創造者たちでさえ、実現できなかったことだ」


「彼らの働きがあってこそ」


 レインは謙虚に答えた。「彼らが道を準備してくれたからこそ、私たちはこれを実現できた」


 アイリスも訪問団の一員として、既に荷物を整えていた。彼女はエルフの知識とアストラリアの薬学の融合に大きな期待を抱いていた。


「準備はできたわ」


 彼女がレインに声をかけた。「みんなも揃ったわよ」


 訪問団は三十名ほどで構成されていた。「賢者の学院」の主要教師たち、選ばれた上級生徒たち、そして王国から派遣された調査員たち。全員が緊張と期待に満ちた表情を浮かべていた。


「皆さん」


 レインは訪問団の前に立ち、短い挨拶を始めた。「今日、私たちは新たな世界への第一歩を踏み出します。これは単なる訪問ではなく、二つの世界の未来を形作る旅です」


 彼の言葉に、全員が真剣な表情で頷いた。


「私たちは知識を求め、友情を育み、帰ってきたらそれを皆と分かち合いましょう。これこそが『賢者の学院』の精神です」


 エドガーも前に出て、王国を代表する言葉を述べた。そして最後に、訪問団は「創造者の工房」へと向かう馬車に乗り込んだ。


「星の間」に到着すると、アストラリアの使者たちが既に扉の向こうで待っていた。彼らは歓迎の意を示し、訪問団を迎え入れる準備を整えていた。


「行きましょう」


 レインはアイリスの手を取り、訪問団の先頭に立った。「新たな冒険の始まりだ」


 彼らが次元の扉に足を踏み入れる瞬間、レインの心に前世の記憶が鮮明によみがえった。東京のオフィスで疲れ果てていた日々、死の瞬間の恐怖と後悔、そして異世界での新たな人生の始まり。長く曲がりくねった道のりだったが、全ては今この瞬間へと繋がっていた。


「ありがとう」


 彼は心の中で、この人生に感謝した。そして、彼らは光に包まれながら、新たな世界へと一歩を踏み出した。


 これは終わりではなく、新たな始まりだった。賢者の商会から始まった旅は、今や星々の間の架け橋となり、無限の可能性へと続いていくのだった。


(第四十話 終)

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転生賢者の異世界商会 折口詠人 @oeight

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