第36話:暗雲の到来
朝の光が三角山の頂に射し始めた頃、レインの意識が闇から浮かび上がってきた。まぶたが重く、体の節々が鉛のように感じられた。彼はゆっくりと目を開け、青い空と白い雲が視界に広がった。
「戻ってきたのか」
彼は自分の声を確かめるように呟いた。喉は乾き、声は掠れていた。記憶が少しずつ戻ってくる。『星の門』での儀式、『淵の影』との対峙、そして三人の意識が一つになった瞬間。
「レイン!」
アイリスの声がした。彼女は驚きと喜びに満ちた表情で、レインの側に駆け寄った。「目が覚めたのね!」
「ああ」
レインは体を起こそうとしたが、突然めまいに襲われた。アイリスが慌てて彼を支えた。
「無理しないで。あなたは一晩中眠っていたのよ」
「エドガー王子とケインは?」
「二人ともまだ眠っているわ。でも、状態は安定している」
アイリスは小さな水筒を差し出した。レインは感謝の表情を浮かべ、喉の渇きを癒した。水が体内に染み渡る感覚に、生きている実感が湧いてきた。
周囲を見回すと、彼らはまだ三角山の『星の門』にいた。祭壇の周りには小さなテントが張られ、エドガーとケインは別々のテントで休んでいるようだった。リーザとソフィア王女がケインのテントから出てきて、レインが起きたことに気づいた。
「レイン!」
二人が駆け寄ってきた。ソフィアの表情には安堵の色が見えた。
「兄上たちは本当に戻ってくるのですね」
「はい」
レインは微笑んだ。「王子様もケインさんもきっと間もなく目覚めるでしょう」
彼はゆっくりと立ち上がり、祭壇の方を見た。昨夜の儀式で輝いていた石の表面は、今は静かな佇まいを取り戻していた。しかし、何かが決定的に変わったことを感じさせる雰囲気があった。
「成功したのでしょうか?」リーザが尋ねた。
レインは深く頷いた。
「はい。『淵の影』は二度とこの世界を脅かすことはありません」
「どうやって?」
アイリスが問いかけた。「単なる封印ではないのですね?」
「私たちは『淵の影』の本質そのものを変えた」
レインは静かに説明し始めた。三人の意識が『淵の影』の核心部に入り込み、その存在のパターンを根本から書き換えたこと。破壊と混沌をもたらす存在から、世界と調和する存在へと変えたことを。
「驚くべきことです」
リーザは畏敬の念をもって言った。「理論的には可能かもしれないと思っていましたが、実際に成功するとは」
「どのように成し遂げたのですか?」
ソフィアが尋ねた。
「三人の魂のパターンを組み合わせました」
レインは説明した。「前世の私の知識、エドガー王子の責任感、ケインさんの使命感。それらが新たなコードを形成し、『淵の影』のシステムを書き換えたのです」
アイリスの目が大きく開いた。彼女はレインがかつて話した「プログラミング」という概念を思い出していた。
「あなたの前世の知識が鍵だったのですね」
「それだけではない」
レインは首を振った。「三人が揃わなければ成し得なかった。『創造者の血』を引く我々三人だからこそ可能だった」
全ては運命に導かれていたかのようだった。彼が異世界に転生し、万物鑑定の能力を得て、賢者の商会を設立し、エドガー王子と出会い、ケイン族長と知り合うこと。全ての出来事が、この瞬間のために準備されていたのだ。
リーザが祭壇の方を見やった。
「マルコス隊長とヴァルターは?」
「彼らは先ほど偵察に出ました」
アイリスが答えた。「昨夜の戦闘で、ダーシー家の手下たちは退散しましたが、アラン・ダーシーの行方が気になるとのことでした」
レインは頷いた。儀式の成功後、『淵の使い』たちは消えたが、アラン・ダーシー自身がどうなったのかは気になる点だった。
談話の最中、小さな呻き声がエドガーのテントから聞こえた。ソフィアは即座に駆け寄り、テントのフラップを開けた。
「兄上!」
エドガーの意識が戻ったようだった。レインもアイリスの助けを借りながらテントに向かった。テント内では、エドガーがゆっくりと上体を起こし、混乱した表情で周囲を見回していた。
「ソフィア…レイン…」
彼の声は弱々しかったが、しっかりとしていた。
「成功したのか?」
「はい、王子様」
レインは安堵の表情で答えた。「完全に成功しました」
エドガーは深いため息をついた。その表情には安堵と共に、何か言葉にできない深い感情が見えた。
「不思議な経験だった」
彼はゆっくりと言った。「『淵の影』の中心部にいたとき、まるで世界の成り立ちそのものを見ているような感覚だった」
「私たちも同じ感覚でした」レインが同意した。
「それだけではない」
エドガーは真剣な表情になった。「私は『創造者』たちの記憶の断片を見た。彼らがなぜこの世界に来たのか、なぜ『淵の影』と戦ったのか」
「何を見たのですか?」
ソフィアが興味深そうに尋ねた。
「『創造者』たちは別の世界から来た存在だった」
エドガーは静かに語り始めた。「彼らの世界は『淵の影』によって破壊されかけていた。彼らはその破壊を逃れ、この世界に逃げてきたのだ。しかし、『淵の影』も彼らを追って来てしまった」
「それが五百年周期の危機の始まりだったのですね」
リーザが理解したように言った。
「彼らは『淵の影』を完全に倒すことはできなかった。だから封印することを選んだ」エドガーは続けた。「そして、いつか永続的な解決策を見つけることができる子孫が現れることを願って、自分たちの血を残したのだ」
レインは深く考え込んだ。これが全ての真相だったのか。彼らの存在自体が、何百年も前からの計画の一部だったのだ。
「私たちは『創造者』たちの遺志を継いだのですね」
「そう思う」
エドガーは頷いた。彼の表情には誇りが宿っていた。
この時、テントの外から騒がしい声が聞こえた。マルコスとヴァルターが戻ってきたようだった。レインとアイリスが外に出ると、彼らは急いで祭壇に向かって歩いてきていた。
「重大な発見がある」
マルコスの表情は真剣だった。「山の東側で、ダーシー伯爵の痕跡を見つけた」
「伯爵自身が?」
レインは驚いて尋ねた。彼は王城での出来事を思い出した。ダーシー伯爵は黒煙に包まれて消えたはずだ。
「直接の目撃ではない」
ヴァルターが説明した。「しかし、『影の谷』付近に伯爵の従者たちが集結している形跡がある。また、奇妙な気配を感じた」
「奇妙な気配?」
「『淵の影』に似ているが、より弱い何か」マルコスが答えた。「完全には消えていないのかもしれない」
この報告に、全員が緊張した。レインはエドガーのテントに戻り、状況を伝えた。
「予想はしていた」
エドガーは冷静に言った。「『淵の影』の本体は変化したが、既に影響を受けていた存在には、残滓が残るかもしれない」
「ダーシー伯爵は『闇の使者』でした」
レインは言った。「『淵の影』の力を取り込んでいたため、完全には浄化されなかったのかもしれません」
「確認する必要がある」
エドガーは立ち上がろうとしたが、まだ体力が回復していなかった。彼は一瞬よろめき、ソフィアに支えられた。
「王子様、まだ休息が必要です」レインは心配そうに言った。
「時間がない」
エドガーは断固とした調子で言った。「伯爵が何か企んでいるなら、早急に対処しなければ」
彼の意志の強さに、レインも譲歩せざるを得なかった。
「では、最低限の休息を取った後、動きましょう」
ケインもほどなく目を覚まし、状況を理解した。三人とも儀式の疲労から完全には回復していなかったが、新たな脅威に対処する必要性を感じていた。
***
正午過ぎ、彼らは小さな偵察隊を組織した。レイン、エドガー、マルコス、ヴァルター、そして二人の騎士が『影の谷』に向かうことになった。ケインはまだ体力が戻らず、祭壇に残ることになった。アイリス、リーザ、ソフィアも残り、彼の看護と祭壇の監視を担当することになった。
「無理はしないでください」
アイリスはレインに強く言った。「まだ完全には回復していないのですから」
「わかっている」
レインは彼女の手を軽く握った。「ただの偵察だ。危険な状況になれば即座に引き返す」
偵察隊は祭壇を後にし、三角山の東側に向かった。道は険しく、時折険しい崖を迂回しなければならなかった。エドガーの動きはまだ鈍かったが、彼は決して弱音を吐かなかった。
「まだ離れています」
ヴァルターが言った。「『影の谷』までは約一時間の道のりです」
彼らは慎重に進んだ。レインとエドガーは儀式の影響からまだ完全には解放されておらず、時折めまいや視界のぼやけを感じていた。
「『淵の影』は本当に去ったのか?」
マルコスが山の風景を見渡しながら尋ねた。確かに、空気は清浄で、昨夜まで感じられた不気味な気配は消えていた。
「本体は変化しました」
レインは答えた。「もはや世界を脅かす存在ではありません。しかし、その影響を強く受けた存在には、残滓が残っているかもしれない」
「ダーシー伯爵のような」エドガーが付け加えた。
一時間ほど歩いた後、彼らは小さな峠に到達した。そこからは『影の谷』が一望できた。谷は深く切り込み、底には薄い霧が漂っていた。
「あそこだ」
ヴァルターが谷の向こう側を指差した。そこには小さなキャンプが見えた。十数個のテントと、中央に大きな天幕が設置されていた。
「ダーシー家の色だ」
マルコスが確認した。「約二十名ほどいるように見える」
レインはさらに注意深く観察した。キャンプからは奇妙な紫色の光が見え、中央の天幕から時折黒い煙のようなものが立ち上っていた。
「何かの儀式を行っているようです」
彼は眉をひそめた。「『淵の影』の残滓を利用しようとしているのかもしれません」
「より詳しく調査する必要がある」
エドガーは言った。「しかし、このままでは危険すぎる」
彼らは隠れ場所を求めて、峠から少し下がった岩陰に陣取った。そこから交代で谷を監視し、動向を探ることにした。
レインが最初の見張りを務め、他の者たちが簡単な食事をとっていると、突然、谷から強烈な光が放たれた。紫色の光柱が谷底から立ち上がり、空に向かって伸びていった。
「あれは!」
全員が飛び出し、現象を見守った。光柱は数秒間輝き続けた後、突然消失した。しかし、その直後、谷全体が濃い霧に覆われ始めた。
「自然な霧ではない」
エドガーが警戒した。「魔力が感じられる」
霧は急速に広がり、彼らのいる峠にも到達しようとしていた。レインは不吉な予感を覚えた。
「撤退します」
彼は即断した。「状況が明らかになるまで、祭壇に戻るべきです」
全員が同意し、来た道を急いで引き返し始めた。しかし、霧の拡大速度は予想以上に速く、すぐに彼らの視界を制限し始めた。
「道が見えにくい」
マルコスが警告した。「互いを見失わないように」
彼らは一列になって進んだが、霧の中で方向感覚が鈍っていった。そして、突然耳を劈くような音が鳴り響いた。
「何だ?」
ヴァルターが剣を抜いた。音は谷の方向から来ていたが、霧のために正確な位置は判断できなかった。
「用心して」
エドガーも剣を構えた。彼の表情は緊張に満ちていたが、決意も見えた。
音は次第に大きくなり、やがて鳴き声のようなものに変わった。それは人間のものでも動物のものでもない、奇妙で不気味な音だった。
「何かが来る」
レインは感じた。彼は真理の結晶を取り出し、防御の準備をした。
霧が一瞬薄くなり、彼らは驚愕の光景を目にした。谷の方からは、巨大な黒い影が這い上がっていた。それは完全な人型ではなく、むしろ複数の人や動物が融合したような、おぞましい姿をしていた。
「あれは…」
マルコスの言葉が途切れた。皆が同じことを考えていた。あれはダーシー伯爵が「淵の影」の残滓と融合した姿なのではないか。
「伯爵が『淵の使い』と完全に一体化した」
エドガーが静かに言った。「もはや人間ではない」
影は彼らの方向を向き、再び恐ろしい鳴き声を上げた。その赤い目は憎悪と狂気に満ちていた。
「祭壇に戻らなければ」
レインは仲間たちを急かした。「あれと戦える状態ではない」
彼らは急いで山道を駆け上がり始めた。しかし、霧のために視界は制限され、道は滑りやすくなっていた。影は彼らの後を追ってきた。驚くほどの速さで岩肌を登り、距離を縮めていた。
「私が足止めする」
マルコスが剣を構え、立ち止まった。「王子様を安全に」
「駄目だ」
エドガーが彼の腕を掴んだ。「一人では太刀打ちできない」
「では、分散して撤退しましょう」
レインが提案した。「二手に分かれれば、少なくとも一方は祭壇に戻れるはずです」
迅速な協議の末、彼らは二つのグループに分かれることにした。レインとエドガーがヴァルターと共に北側のルートを取り、マルコスと二人の騎士が通常のルートで戻ることになった。
「気を付けて」
マルコスはレインたちに言った。「我々も全力で祭壇を目指す」
二つのグループは別れ、それぞれの道を急いだ。レインたちは険しい北側の斜面を登り始めた。通常のルートより距離は長いが、追跡者を撒きやすいと考えたのだ。
霧の中を進みながら、彼らは時折背後を振り返った。影は最初、マルコスたちの後を追ったようだったが、やがて立ち止まり、辺りを嗅ぎ回るような動きをした。
「気配を感じ取っている」
エドガーが警戒した。「我々の存在を探している」
彼らは息を殺し、慎重に進んだ。しかし、突然エドガーが足を滑らせ、小さな石が崖下に転がり落ちた。わずかな音だったが、霧に覆われた静寂の中では十分に目立った。
影の赤い目が即座に彼らの方向を向いた。
「見つかった」
ヴァルターが呟いた。彼の声には諦めが滲んでいた。
影は彼らに向かって這い上がり始めた。今や彼らの位置を正確に把握したようだった。
「走れ」
レインは仲間たちを促した。「全力で祭壇を目指すんだ」
三人は急斜面を必死に登り続けた。しかし、エドガーはまだ儀式の疲労から完全に回復しておらず、次第に息が上がってきた。
「王子様、私の肩に掴まってください」
ヴァルターが申し出た。彼は驚くほどの体力で、エドガーを支えながら進んだ。
「ありがとう」
エドガーは感謝の言葉を口にした。かつての敵が今や命を賭けて彼を守ろうとしている。世界は確かに変わりつつあった。
彼らは斜面の上部に到達し、祭壇の方向に向かって走り始めた。しかし、影もまた驚異的な速さで彼らを追いかけてきた。距離は徐々に縮まっていた。
「このままでは追いつかれる」
レインは冷静に状況を判断した。「どこかで足止めする必要がある」
「私が残る」
ヴァルターが即座に言った。「王子様とレイン殿は先へ」
「しかし…」
エドガーが反論しようとしたが、ヴァルターは既に立ち止まり、剣を抜いていた。
「これが私の贖罪だ」
彼は静かに言った。「グランツ家の名誉に賭けて、時間を稼ぐ」
レインとエドガーは苦渋の決断を迫られた。このまま全員が逃げれば、全員が捕まる可能性が高い。しかし、一人を犠牲にすることも耐え難かった。
「ヴァルター殿…」
レインは言葉を詰まらせた。
「行け!」
ヴァルターは叫んだ。「私は必ず後から追いつく」
彼の決意に、レインとエドガーはそれ以上の言葉を費やさなかった。二人は心に重荷を感じながらも、前に進んだ。
背後からは、ヴァルターの勇敢な声と、影の恐ろしい咆哮が聞こえた。戦いが始まったのだ。
「祭壇まであと少し」
レインはエドガーを励ました。「もう少しだ」
二人は全力で走った。霧が徐々に薄くなり、道も明確になってきた。祭壇が近いことを示していた。
突然、前方から人影が現れた。レインとエドガーは一瞬身構えたが、それはマルコスと騎士の一人だった。彼らも無事に祭壇の方向に戻りつつあったのだ。
「王子様! レイン殿!」
マルコスは安堵の表情を見せた。「無事だったか」
「ヴァルターが足止めしてくれている」
エドガーが簡潔に説明した。「急いで祭壇に戻るぞ」
四人は祭壇に向かって駆け出した。背後からは、依然として戦闘の音が聞こえていた。ヴァルターは驚くほど長く持ちこたえていた。
祭壇に到着すると、アイリス、リーザ、ソフィア、そしてケインが心配そうに彼らを迎えた。
「何があったの?」
アイリスが尋ねた。彼らの疲労と緊張した表情から、何か重大なことが起きたと察したようだった。
レインとエドガーは簡潔に状況を説明した。谷での発見、奇妙な儀式、そして彼らを追いかけてきた恐ろしい影について。
「ダーシー伯爵が『淵の影』の残滓と完全に融合した」
エドガーが言った。「もはや人間ではなく、純粋な『闇の存在』だ」
「しかし、『淵の影』本体は既に変化しているはず」
リーザが困惑した表情で言った。「どうして伯爵はこのような姿になったのでしょう」
「おそらく、彼は変化する前の『淵の影』の一部を取り込んでいた」
レインが推測した。「そして昨夜の儀式で本体と切り離されたため、独立した存在になってしまったのだろう」
彼らが議論を続けている間に、マルコスが警告の声を上げた。
「来るぞ!」
全員が振り向くと、霧の中から巨大な影が現れようとしていた。ヴァルターの姿はなく、彼は恐らく戦いに敗れたのだろう。
「祭壇の結界!」
ケインが叫んだ。「『星の門』の結界を活性化させるんだ!」
レイン、エドガー、ケインは祭壇の三角形の位置に立ち、古代語の呪文を唱え始めた。祭壇の石が淡く光り、周囲に透明なドームのような結界が形成され始めた。
影は彼らに近づき、結界に触れようとした。しかし、接触した瞬間、激しい光が放たれ、影は痛みに悶えるように後退した。
「効いている」
エドガーは安堵した。「この結界は『創造者』のものだ。『闇の存在』は入れない」
影は結界の外側をうろつき、弱点を探しているようだった。その姿は人型から徐々に歪み、より獣じみた形に変わっていった。
「彼の変化が続いている」
リーザが観察した。「『淵の影』の残滓がさらに彼を変え続けている」
「このままでは危険です」
アイリスが言った。「結界は一時的な防御にしかならない。いずれ弱まる」
「王都に報告を送らなければ」
ソフィアが提案した。「父上に状況を伝え、援軍を求めるべきです」
「通信結晶がある」
マルコスが言った。「しかし、使用するには強い魔力が必要だ」
レインとエドガーは顔を見合わせた。儀式の疲労から、彼らの魔力は通常より弱まっていた。しかし、試みる価値はあった。
「私が使います」
エドガーが決断した。「王として、父上に直接報告する責任がある」
彼はマルコスから通信結晶を受け取り、祭壇の中央に立った。結晶に魔力を注ぎ込み始めると、それは淡い青色に輝き始めた。
しばらくして、結晶の中に国王の顔が浮かび上がった。
「エドガー? 無事だったか?」
国王の声には安堵と心配が入り混じっていた。
「父上、儀式は成功しました」
エドガーは簡潔に報告した。「『淵の影』は永続的に変化し、もはや世界への脅威ではありません」
「素晴らしい!」
国王は喜びを表したが、すぐにエドガーの緊張した表情に気づいた。
「だが、別の問題があるようだな」
「はい」
エドガーは続けて説明した。ダーシー伯爵の変化、彼らを追いかけてきた恐怖の影、そして現在の危機的状況について。
「即座に救援を送る」
国王は毅然とした表情で言った。「だが、山岳地帯では部隊の移動に時間がかかる。少なくとも一日はかかるだろう」
「わかっています」
エドガーは冷静に応じた。「それまでの間、我々は結界で防衛を続けます」
「気をつけろ」
国王の表情に心配の色が深まった。「特に、お前とレイン殿、ケイン殿は儀式の疲労から回復していないはずだ」
「大丈夫です、父上」
エドガーは強く頷いた。「我々は『創造者』の力を持つ三人で、この防衛を維持します」
通信が終わると、エドガーは仲間たちに向き直った。彼の表情には決意と、わずかな疲労の色が混ざっていた。
「王都からの援軍は一日後だ」
彼は簡潔に伝えた。「それまで持ちこたえなければならない」
レインは祭壇の周囲を見回した。結界の外では、影がなおも獣のように這い回っていた。時折、結界に体当たりするように接近するが、光に触れると悲鳴を上げて退く。
「結界を維持するには、我々三人の力が必要です」
レインはエドガーとケインを見た。「交代で休息を取りながら続けましょう」
「課題は夜だな」
ケインが空を見上げた。「日中は太陽の光もあるが、夜になれば闇の中の『闇の存在』との戦いになる」
アイリスとリーザは薬の準備を始めた。疲労回復の薬と、魔力を補充する薬が必要だった。ソフィアもハーブの知識を活かして彼女たちを助けた。
「マルコス、騎士たちと交代で見張りを」
エドガーが指示した。「影の動きを常に監視し、変化があれば即座に報告を」
レインは一人、祭壇の端に立ち、真理の結晶を手に取った。
「先生、最後の戦いになりそうです」
彼は小声で語りかけた。「『淵の影』本体は変化させましたが、その残滓がまだ脅威となっています」
結晶は静かに輝き、彼の心に安らぎをもたらした。
午後が深まるにつれ、山の影が長くなり始めた。夕暮れが近づいていた。影はまだ結界の周りをうろつき、時折不気味な鳴き声を上げていた。
「様子が変わった」
マルコスが警戒の声を上げた。影が結界から離れ、谷の方向を見ているようだった。
レインたちは緊張して見守った。やがて、谷の方向から小さな影が複数現れた。それらは人の形をしていたが、自然な動きではなかった。
「『淵の使い』だ」
エドガーが剣を抜いた。「どうやら仲間を呼んだようだ」
小さな影たちは大きな影の元に集まり、まるで命令を受けているかのようだった。その後、彼らは祭壇を取り囲むように位置取りを始めた。
「包囲されている」
マルコスの表情が厳しくなった。「逃げ道はない」
「逃げるつもりはない」
エドガーは毅然と言った。「ここで決着をつける」
日が落ち始め、空が赤く染まる頃、小さな影たちは奇妙な動きを始めた。彼らは一様に手のようなものを地面に突き刺し、何かのエネルギーを引き出しているようだった。
「何をしている?」
ソフィアが恐れを抱いて尋ねた。
「地中の魔力を集めている」
リーザが状況を分析した。「結界を弱めようとしているのでしょう」
その推測通り、結界の光が少しずつ弱まり始めた。地中からの魔力供給が絶たれつつあるのだ。
「対策を」
ケインが言った。「このままでは夜までに結界が破られる」
レインは『創造の書』を再度確認した。そこには結界の強化方法について記述があった。しかし、それには三人の「創造者の血」が持つ全ての力を注ぎ込む必要があった。
「一つの方法があります」
彼は緊張した面持ちで言った。「『星の盾』と呼ばれる上位の結界を展開できます。これなら外部の魔力に頼らず、我々自身の力で維持できる」
「しかし?」
エドガーはレインの躊躇いを見抜いていた。
「しかし、それには三人の生命力を直接結界に結びつける必要があります」
レインは静かに説明した。「結界が攻撃を受けるたび、我々もダメージを受けることになります」
重い沈黙が流れた。その方法は効果的だが、三人にとって大きな負担となる。
「他に選択肢はないようだな」
ケインが静かに言った。「私は覚悟している」
「私も」
エドガーが同意した。「命を懸けてこの結界を守る」
レインも決意を固めた。三人は再び祭壇の三角形の位置に立ち、『創造の書』に記された特別な呪文を唱え始めた。
「光の民の末裔として」
「創造者の血を引く者として」
「我ら三人の生命を捧げ」
「星の盾を呼び起こす」
三人の体から光が放たれ、それが祭壇の中心で結合した。そこから新たな結界が生まれ、既存の結界を包み込むように広がった。それは以前より強い光を放ち、より鮮明な境界線を形成した。
「成功しました」
レインは安堵の息をついた。しかし、同時に体の中から力が抜けていくような感覚があった。
小さな影たちは新しい結界に驚いたように動きを止めた。大きな影は怒りの咆哮を上げ、直接結界に体当たりした。
その瞬間、レイン、エドガー、ケインの三人は同時に激痛に襲われた。彼らは膝をつき、苦痛の表情を浮かべた。
「レイン!」
アイリスが駆け寄った。「大丈夫?」
「問題ない」
彼は歯を食いしばって言った。「予想通りだ。結界が攻撃を受けると、我々もダメージを受ける」
「それは危険すぎる」
リーザが心配そうに言った。「夜を越せるかしら」
「越えねばならない」
エドガーは立ち上がり、仲間たちに勇気を与えようとした。「援軍が来るまでの辛抱だ」
夕闇が深まり、最後の日光が消えた頃、影たちの攻撃はさらに激しさを増した。大きな影は繰り返し結界に体当たりし、小さな影たちは一斉に結界を引っ掻くような動きをした。
三人は攻撃のたびに痛みを感じたが、結界は揺るがなかった。アイリスとリーザは三人に回復薬を定期的に与え、彼らの体力を維持した。
夜空に星が瞬き始めた頃、大きな影は突然攻撃を止め、後退した。小さな影たちも同様に距離を取った。
「何が起きている?」
マルコスが警戒して尋ねた。
しばらくして、影たちは奇妙な円陣を組み始めた。大きな影が中心に立ち、小さな影たちがその周りを取り囲む。彼らは何かの儀式を始めるようだった。
「これは…」
リーザが恐怖に目を見開いた。「融合の儀式かもしれない」
「融合?」
ソフィアが不安そうに尋ねた。
「小さな影たちが大きな影に取り込まれようとしている」
リーザは緊張した声で説明した。「ダーシー伯爵がさらに力を増そうとしているのでしょう」
彼らが見守る中、小さな影たちが一つずつ大きな影に吸収されていった。吸収されるたびに、大きな影はさらに巨大に、そしてより形を成さないものになっていった。
「まるで悪夢のようだ」
ケインが呟いた。彼の顔は青ざめていた。
最後の小さな影が吸収されると、残された大きな影はもはや以前の姿を留めていなかった。それは巨大な黒い塊となり、複数の赤い目と無数の腕のようなものを持つ、おぞましい存在に変わっていた。
「ダーシー伯爵の人間性は完全に失われた」
エドガーは静かに言った。「あれはもはや『闇の怪物』だ」
怪物は新たな力を得て、再び結界に向かって突進してきた。衝撃は以前より遥かに強く、三人は激しい痛みに倒れ込んだ。
「もたない!」
ケインが苦しみながら叫んだ。「力が急速に失われていく」
レインは痛みに耐えながら、必死に考えた。このままでは夜が明ける前に彼らの力が尽きる。そうなれば、結界は崩れ、全員が危険にさらされる。
「何か方法があるはずだ」
彼は真理の結晶を握りしめた。結晶は弱々しく光っていたが、次第に強さを増していった。
「レイン、手を!」
アイリスが叫んだ。彼女は彼の手にしがみつき、恐怖に目を見開いていた。
レインの手に持っていた真理の結晶が強烈に輝き始め、その光は彼の体全体を包み込んだ。彼は何かに導かれるように立ち上がり、祭壇の中央に歩み出た。
「何をする気だ?」
エドガーが心配そうに尋ねた。
「最後の手段です」
レインの声は静かだが、確信に満ちていた。「私の前世の記憶と、『創造者の血』の力を結合させれば、怪物を浄化できるかもしれません」
「だが、それには?」
ケインが恐れを抱いて尋ねた。
「はい。私が直接接触する必要があります」
レインは結界の方を見た。「結界の一部を開け、私が外に出る」
「駄目だ!」
アイリスが彼の腕を掴んだ。「それは自殺行為よ!」
「他に方法がない」
レインは彼女の手を優しく握った。「このままでは全員が危険だ。私なら『創造者の血』と前世の知識で、怪物の残存する『淵の影』のコードを書き換えられるかもしれない」
エドガーとケインは顔を見合わせた。彼らもレインの計画の危険性を理解していたが、他に選択肢がないことも分かっていた。
「私たちが結界を維持する」
エドガーが決断した。「レインの帰還のために」
ケインも同意し、二人は祭壇の位置に戻った。
「レイン…」
アイリスの目には涙が溢れていた。
「必ず戻ってくる」
レインは彼女の頬に触れた。「賢者の商会にはまだやるべきことがたくさんある」
彼は祭壇の中央に立ち、真理の結晶を高く掲げた。結晶の光が強くなり、彼の体を完全に包み込んだ。
「結界を開けてください」
レインがエドガーとケインに向かって言った。「一瞬だけで構いません」
二人は呪文を唱え、結界の一部に小さな開口部を作った。レインはそこを素早く通過し、外の世界に出た。開口部は即座に閉じられた。
「レイン!」
アイリスが叫んだ。彼女は結界の内側から、外に立つレインを見つめていた。
レインは怪物に向き合った。彼の体は真理の結晶の光に包まれ、まるで光の鎧を身につけているかのようだった。
怪物は新たな獲物を見つけて喜んだかのように鳴き声を上げ、レインに向かって突進してきた。しかし、レインは動じなかった。彼は真理の結晶を両手で掲げ、古代語で何かを唱え始めた。
「光よ、我が内なる『創造者の血』を呼び覚ませ」
真理の結晶の光が一層強くなり、レインの体から光の線が広がり始めた。それは彼の周りに複雑な魔法陣を形成した。
怪物は光に恐れを抱いたように一瞬躊躇したが、すぐに攻撃を再開した。巨大な爪がレインに迫ったが、魔法陣が盾となり、彼を守った。
「ダーシー伯爵」
レインは怪物に向かって語りかけた。「あなたの中にまだ人間の心があるなら、私の声を聞いてください」
怪物は応答として激しい咆哮を上げ、再び攻撃した。しかし、今度は複数の腕を使って、あらゆる方向からレインを襲った。
魔法陣は守りきれず、一本の爪がレインの肩を掠めた。鋭い痛みが走り、彼の集中が一瞬途切れた。
「レイン!」
結界の内側からのアイリスの叫びが聞こえた。彼女の声が、レインに新たな力を与えた。
「私は賢者の弟子、レイン」
彼は再び強く唱えた。「私は前世の知識と『創造者の血』の力で、あなたの中の混沌を浄化する」
真理の結晶が脈動し、レインの記憶の中から前世のプログラミングの知識が呼び覚まされた。それは単なるコードの記憶ではなく、システムの構造、パターンの認識、論理的思考の全てが一点に集中した。
「闇の中の光となれ」
レインは結晶を高く掲げ、まっすぐ怪物に向かって歩き始めた。怪物は混乱したように後退し、防御的な姿勢を取った。
「恐れているな」
エドガーが結界の内側から観察した。「レインの光を恐れている」
結晶の光はますます強くなり、夜の闇を昼のように照らし出した。山の頂が明るく浮かび上がり、まるで灯台のようだった。
レインと怪物の距離が縮まるにつれ、怪物の形が揺らぎ始めた。内部で何かが抵抗しているようだった。
「そうだ」
レインは励ますように言った。「あなたの中の人間性が戦っている。それを助ける」
彼は怪物に手を伸ばした。真理の結晶は彼の手の中で輝き、まるで太陽の欠片のようだった。
怪物は最後の抵抗として、全ての力を込めて彼に襲いかかった。無数の爪と牙が一斉にレインに向かって伸びた。
「レイン!」
アイリスの悲痛な叫びが夜空に響いた。
しかし、爪が彼に触れる直前、レインは結晶を怪物の胸に押し付けた。接触した瞬間、眩い光が爆発し、周囲全体が白い光に包まれた。
光があまりにも強烈で、結界の内側の全員が目をそらさざるを得なかった。光が弱まると、彼らが見たのは驚くべき光景だった。
レインは膝をついていたが、無事だった。そして彼の前には、黒い怪物の姿はなく、地面に横たわる一人の老人の姿があった。それはダーシー伯爵だった。しかし、彼の姿は大きく変わっていた。髪は真っ白になり、顔には深い皺が刻まれていた。
「成功した…」
レインは疲労と安堵の混ざった声で呟いた。
エドガーとケインは即座に結界の一部を開き、レインを中に入れた。アイリスが真っ先に彼に駆け寄り、強く抱きしめた。
「馬鹿なことを!」
彼女は涙ながらに言った。「どれだけ心配したと思ってるの」
「すまない」
レインは弱々しく微笑んだ。「でも、うまくいった」
マルコスと騎士たちは結界の外に出て、地面に横たわるダーシー伯爵に接近した。伯爵は生きていたが、意識はなく、極度に衰弱していた。
「何が起きたのだ?」
エドガーがレインに尋ねた。
「私は真理の結晶の力で、彼の中の『淵の影』の残滓を浄化しました」
レインは息を整えながら説明した。「しかし、それは彼の生命力の多くを消費してしまった。『淵の影』と融合することで得た力が、彼の命を維持していたのです」
「彼は…?」
「死なないでしょう」
レインは答えた。「しかし、もはや以前の伯爵ではない。彼の中の『闇の使者』は完全に消え去りました」
彼らはダーシー伯爵を結界内に運び入れ、応急処置を施した。老人は安らかな表情で眠り続けていた。
「驚くべき力だ」
ケインはレインの肩に手を置いた。「君の中の『創造者の血』が、真の力を発揮したのだな」
レインは疲れた笑顔を浮かべた。
「それだけではない。ギルバート先生の教えと、前世の記憶。そして…」
彼はアイリスの方を見た。
「大切な人たちを守りたいという思い。全てが一つになったのだ」
夜が更けていくなか、彼らは交代で休息を取り、結界を維持し続けた。ダーシー伯爵の変化により、外部からの脅威はなくなったが、彼らは念のため警戒を続けた。
***
夜明け前、東の空がわずかに明るくなり始めた頃、レインは静かに目を覚ました。彼は真理の結晶を手に取り、その輝きを確かめた。
「先生、すべてが終わりました」
彼は静かに語りかけた。「この世界での私の使命は果たされたのでしょうか」
結晶は穏やかに光り、彼の心に安らぎをもたらした。
「おはよう」
アイリスが彼の側に座った。彼女の顔には疲れの色があったが、美しい微笑みが浮かんでいた。
「よく眠れたか?」
「ええ。あなたは?」
「少しだけ」
レインは東の空を見つめた。「もうすぐ夜が明ける」
二人は静かに朝を待った。やがて、太陽の最初の光線が山の峰を照らし始め、夜の闇を追い払っていった。
「新しい日の始まりね」
アイリスは深い感慨をもって言った。
その時、マルコスが急いで彼らの元に来た。
「山の下から人が来ています」
彼は報告した。「王都の旗が見えます。救援隊です!」
全員が喜びの声を上げた。国王の約束通り、援軍が到着したのだ。
結界を解除し、彼らは山道を下りてくる救援隊を迎えに行った。先頭には王国の精鋭騎士団の姿があり、数十名の兵士たちが続いていた。
「王子様! レイン殿!」
騎士団長のジョセフが喜びの声を上げた。「国王陛下のご命令で急行しました。皆様のご無事を確認できて安堵いたします」
エドガーは彼を出迎え、簡潔に状況を説明した。救援隊は即座に周辺の警戒を強化し、負傷者の手当てを始めた。
ダーシー伯爵は特別な担架に乗せられ、王都への搬送準備が進められた。彼はまだ意識を取り戻していなかったが、呼吸は安定していた。
「国王陛下が全員の帰還を心待ちにされています」
ジョセフが伝えた。「特に王子様とソフィア王女、そしてレイン殿の無事を強く願っておられました」
準備が整うと、一行は山を下り始めた。レインは最後に振り返り、『星の門』と三角山の姿を目に焼き付けた。
「さようなら、創造者たちよ」
彼は心の中で別れを告げた。「あなたたちの遺志は果たされました」
下山は上りよりも容易だったが、それでも一日を要した。レイン、エドガー、ケインの三人はまだ疲労が残っており、ゆっくりと進む必要があった。
彼らが山麓に到達したのは、翌日の午前中だった。そこには王都から送られた馬車が待機しており、彼らを迎えるための準備が整えられていた。
「レイン殿」
ヴァルターの従者の一人が彼に近づいた。「主人の消息について、何か…」
レインは悲しげに首を振った。
「確かなことは言えません。しかし、彼は最後まで勇敢に戦っていました。彼の犠牲があったからこそ、私たちは生き延びることができたのです」
従者は深く頭を下げた。彼の目には涙が光っていた。
「グランツ家の名誉のためだったのですね」
「いいえ」
レインは静かに言った。「それ以上のものです。彼は真の商人として、人々の未来を守るために戦ったのです」
馬車に乗り込む前、レインはアイリスと共に少し離れた場所に立った。朝の光が平原を金色に染め、穏やかな風が草を揺らしていた。
「これで終わりなのね」
アイリスが深い感慨を込めて言った。
「いいえ」
レインは微笑んだ。「これは新しい始まりだよ。『淵の影』の脅威は去ったが、私たちにはまだやるべきことがある」
「賢者の商会を拡大して?」
「それだけではない」
彼は遠くを見つめた。「『創造者』の遺産を研究し、この世界の可能性を広げていく。それが私たちの次の使命だと思う」
アイリスは頷き、彼の手を取った。二人は静かに朝の光を浴びながら、新たな未来への第一歩を踏み出した。
長い戦いと冒険を経て、『淵の影』の脅威は永遠に去った。レインと仲間たちの前には、明るい未来が広がっていた。古代の謎、異世界の知識、そして友情と絆で築かれた新しい世界。賢者の商会の真の旅は、ここから始まるのだった。
(第三十六話 終)
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