第34話:防衛準備
山麓の村を出発してから二日目の朝、一行は静かな森の中に陣を張っていた。朝霧が地表を這い、周囲の木々を幻想的な姿に変えている。レインは小さな焚き火の前に座り、地図を広げていた。
「ここから『星の門』までは、さらに一日の行程です」
彼は指先で地図の上の細い道筋をなぞった。山の斜面を描く等高線が、ところどころ不自然に密集している箇所がある。険しい崖を示すそれらの印の間を縫うように、進路が記されていた。
「この先、道はさらに細くなる」
ケインが隣に腰を下ろした。彼は地図を見つめ、深く頷いた。「最後の区間は一列になって進まなければならない」
エドガー王子は焚き火を挟んで二人の向かい側に座り、山の頂を見上げていた。晴れた朝の空に、三角山の三つの峰がくっきりと浮かび上がっている。
「昨夜、また『監視者』と交信した」
彼は静かな声で言った。「『淵の影』の動きが活発化しているという」
「具体的には?」レインが尋ねた。
「まだ実体化はしていないが、現実の壁が薄くなっているらしい。特に三角山周辺では」
ソフィア王女が兄の隣に座った。彼女は温かい飲み物が入った杯を両手で包むように持っていた。その表情には心配の色が見えた。
「それは『淵の使い』の出現も増えるということね」
「おそらく」
エドガーは頷いた。「だからこそ、西側ルートを選んだのは正解だった。東側は既に『影の谷』を中心に敵の活動が活発化しているはずだ」
リーザとアイリスが防護薬の最終確認を行いながら、その会話に耳を傾けていた。
「今日から飲む防護薬を強化しましょう」
アイリスは小さな瓶を何本か取り出した。「特に夜間の危険が増すと思われます」
「全員に配布してくれ」
マルコスが言った。彼は警戒のために立ったまま周囲を見渡していた。「最前線と最後尾の騎士には特に念入りに」
アイリスが頷き、薬の配布を始めた。レインはエドガーとソフィアに近づき、静かに話しかけた。
「王子様、これからの道程はさらに厳しくなります。体調はいかがですか?」
「心配無用だ」
エドガーは微笑んだ。「アイリスの薬のおかげで、悪夢も減った。むしろ、使命への覚悟が日に日に強まっている」
「仮に『淵の使い』と遭遇した場合、どう対処すべきでしょう?」
ソフィアが実務的な質問をした。
「先の森での経験から、光が最も効果的です」
レインは特殊な結晶を取り出した。「創造の光」の残滓が宿るその石は、淡い青色に輝いていた。
「しかし、使用は慎重に」リーザが加えた。「結晶のエネルギーは限られています。満月の儀式までに温存しなければなりません」
ヴァルターは少し離れたところで、自分の従者と小声で話していた。彼は時折、レインたちの方を見ていたが、距離を保っていた。
「彼はまだ完全には信用していないようだな」
ケインがヴァルターの方を顎でしゃくって言った。
「当然だろう」マルコスが冷静に答えた。「昨日まで敵だった男だ。しかし、彼の情報は正確だった。それだけは認めなければならない」
朝食を終えた一行は、荷物をまとめ始めた。ケインがレインに近づき、低い声で話しかけた。
「『三点封印』のことだが」
彼は周囲に誰も聞いていないことを確認した。「本当に三人で成功するのだろうか?」
レインも声を落として答えた。
「『創造の書』によれば、一人での封印も可能です。しかし、その場合、封印者への負担は計り知れない」
「だから三人での分散封印が理想なのだな」
「はい。各自が得意な元素に集中することで、負荷を分散させます」
ケインは考え込むように自分の手を見つめた。
「私の血に本当に『創造者』の力が残っているのだろうか」
「守護者がそう言ったのです」レインは彼を励ました。「それに、元素結晶への反応も確かでした」
彼らの会話は、マルコスの合図で中断された。
「出発の時間です」
全員が馬に乗り、一列になって細い山道を進み始めた。
***
正午過ぎ、彼らは予定通り山の中腹まで到達した。空は晴れていたが、時折不自然な雲が山頂付近を覆っては消えていった。
「あれは通常の雲ではありません」
リーザが上空を指さした。「魔力の乱れが雲の形で現れているのでしょう」
皆が不安げに空を見上げる中、ヴァルターが馬を進めて隊列の前方に出た。
「ダーシー伯爵の手下は二十名ほどいる」
彼は言った。「彼らは主に『影の谷』と東側の稜線に配置されているはずだ」
「そこまで正確に把握しているとは」マルコスが疑わしげに言った。
「当然だろう」ヴァルターは冷静に答えた。「かつて私もその計画に関わっていたのだから」
彼の正直さに、マルコスでさえ何も言い返せなかった。
「さらに重要なのは」ヴァルターは続けた。「アラン・ダーシーの存在だ。彼は伯爵からある種の力を与えられている。おそらく『淵の影』から得た力だろう」
「どんな力だ?」エドガーが尋ねた。
「正確には知らない。しかし、伯爵は甥が『特別な任務』を持っていると言っていた」
この情報に、一同は緊張した。彼らが山を登るにつれ、危険はさらに増していくだろう。
「今日中に『休息の石』と呼ばれる場所まで行きましょう」
ケインが提案した。「そこには古くからの結界があり、一晩の休息には最適です」
全員が同意し、さらに高度を上げていった。山道はますます険しくなり、時には馬から降りて徒歩で進む区間もあった。
午後遅く、彼らは小さな平地に到着した。その中央には巨大な石が立っており、表面には古代文字が刻まれていた。
「『休息の石』です」
ケインが説明した。「何世紀も前から、この地を訪れる者たちの安全を守ってきました」
リーザとアイリスは石に近づき、刻まれた文字を調べた。
「確かに結界の術式ね」リーザが頷いた。「非常に古い形式だけど、まだ効力がありそう」
アイリスは石の周りを歩き、地面に生えている植物を観察した。
「不思議ね。この場所だけ、周囲と比べて植物が健康的に育っている」
「結界の効果でしょう」
レインも石に近づいた。彼は手をかざし、石の表面からわずかに放たれるエネルギーを感じ取った。
「創造者たちの技術です。山全体に彼らの痕跡が残っている」
マルコスは即座に野営の準備を指示した。騎士たちが荷物を降ろし、周囲を警戒しながら陣を張り始めた。
「この石の周囲に宿営します」
彼は言った。「結界の範囲内なら、『淵の使い』の襲撃も防げるでしょう」
夕方になり、彼らは焚き火を囲んで夕食を取っていた。山の上空は不気味な雲で覆われ、時折紫色の光が閃いている。まるで遠雷のようだったが、音はなかった。
「あれは何?」ソフィアが不安そうに尋ねた。
「次元の壁が薄くなっている証拠です」
レインが『創造の書』を参照しながら答えた。「『淵の影』の接近に伴い、現実の壁が揺らいでいる」
「危険なの?」
「直接的な危険はありません」リーザが答えた。「しかし、『淵の使い』の活動が活発化する兆候です」
エドガーは黙って空を見上げていた。彼の表情は読みづらかったが、決意に満ちているように見えた。
「明日、『星の門』に到着します」
彼は静かに言った。「そして、満月の夜に儀式を行う」
「準備はできています」
レインは頷いた。「『創造の書』の指示通り、儀式の段取りを確認しました」
「さらに、マルコス隊長と騎士たちが警備を固めます」
ケインが付け加えた。「『淵の使い』やダーシー家の妨害があっても、儀式を守り抜きます」
夕食後、彼らは交代で見張りに立つことを決めた。最初の当番はマルコスと二人の騎士、そしてヴァルターの従者の一人だった。
レインは寝る前に、エドガー、ケイン、そしてソフィアを呼び集めた。
「儀式の最終確認をしておきましょう」
彼は『創造の書』を開き、儀式の詳細を再確認した。三人はそれぞれ異なる元素を担当する。エドガーは火、ケインは水、レインは風。三つの力が結合すると、自然と土の力も呼応し、四大元素の封印が完成する。
「王子様は中央に立ち、私とケインさんはそれぞれ左右に」
「そして私は?」ソフィアが尋ねた。
「王女様は結界の外側で、魔力の流れを安定させる役割です」
リーザが答えた。「私とアイリスも同様に、結界の強化と維持を担当します」
「マルコスと騎士たちは外敵からの防衛を」
レインが付け加えた。
彼らは最後の細部まで計画を確認し、明日の最終準備に備えた。
***
その夜、レインは眠れずにいた。彼は「休息の石」の近くに座り、静かに真理の結晶を手に取っていた。
「先生、いよいよ明日が来ます」
彼は小声で語りかけた。「これが私がこの世界に転生した理由なのでしょうか」
結晶は微かに光を放ち、レインの心に安らぎを与えた。
「レイン」
振り返ると、アイリスが立っていた。彼女も眠れないようだった。
「考え事?」
「ああ」
レインは隣に座るよう彼女を招いた。「明日のことを考えていたんだ」
アイリスは静かに隣に腰を下ろした。夜空には星が無数に瞬き、三角山の峰が黒いシルエットとして浮かび上がっていた。
「怖くない?」彼女が小さな声で尋ねた。
「正直なところ、怖いよ」
レインは微笑んだ。「でも、これが私の使命だと感じている。賢者の商会から始まり、ここまで導かれてきたんだ」
「そうね」
アイリスも星空を見上げた。「私もそう感じる。エルフの森を出て、あなたと出会い、この旅に加わったこと。すべてに意味があったのね」
二人は静かな時間を共有していた。山の静けさが彼らを包み込み、明日の戦いへの準備をさせているかのようだった。
「あなたが転生者だと知った時、驚いたわ」
アイリスが不意に言った。「でも、それがあなたの特別さを説明していると思った」
「私はただの賢者の弟子だったよ」
レインは真理の結晶を見つめた。「ギルバート先生の教えがなければ、ここまで来られなかった」
「『創造者の血』を引いていることは知っていたの?」
「全く」
レインは首を振った。「先生は多くのことを教えてくれたが、それだけは語らなかった。おそらく、私自身が発見すべきことだったのだろう」
アイリスはレインの手に自分の手を重ねた。その感触は温かく、安心感を与えてくれた。
「明日、何が起きても」彼女は静かに言った。「私はあなたの側にいるわ」
「ありがとう」
レインは心からの感謝を込めて答えた。
静寂の中、遠くから奇妙な音が聞こえてきた。風のうなりのようでありながら、どこか不自然な響きだった。
「あれは…」
二人は立ち上がり、音の方向を見た。山の東側、「影の谷」の方角から、紫がかった光が見えた。
「マルコス!」
レインは警戒の声を上げた。マルコスと騎士たちはすぐに武器を手に取り、全員が目を覚ました。
「何かが近づいています」
リーザが言った。彼女は小さな魔法の光を手の上に浮かべ、周囲を探った。「魔力の乱れが激しい」
「『淵の使い』だ」
エドガーが剣を抜いた。「私の夢で見た存在と同じ気配がする」
「『休息の石』の結界の中にいれば安全です」
ケインが全員に指示した。「皆、石に近づいてください」
彼らは中央の石を囲むように陣形を組んだ。マルコスと騎士たちは外側に立ち、ヴァルターと従者たちもそれに続いた。
「来るぞ」
マルコスが低い声で警告した。
林の縁から、黒い影のような存在が現れ始めた。それらは前回遭遇したものより大きく、より明確な形を持っていた。人型ではあるが顔の特徴はなく、ただ二つの赤い点が目のように輝いていた。
「十体以上います」
リーザが数えた。「前回より多い」
「結界が彼らを止めるはずだ」
ケインが言った。しかし、彼の声には不安が混じっていた。
影たちは彼らの周りをゆっくりと取り囲み始めた。直接攻撃はしないものの、その存在自体が恐怖と不安を引き起こした。
「精神に干渉してくる」
ソフィアが頭を抱えた。「悪夢のような感覚…」
「アイリスの防護薬を飲んでください」
レインが言った。全員が急いで薬を飲み、その効果はすぐに現れた。精神への圧迫感が和らいだのだ。
影たちは結界の縁で立ち止まり、侵入できないでいた。「休息の石」の古い魔法が、確かに効果を発揮していた。
「奴らは何を待っている?」
マルコスが緊張した様子で言った。
「増援だ」
ヴァルターが声を上げた。「あれを見ろ」
彼が指さす方向に、一人の人影が近づいていた。その人物は黒いローブを身にまとい、顔は深い影に隠れていた。
「アラン・ダーシーだ」
ヴァルターの声には確信があった。「伯爵の甥だ」
アランは影たちの間を歩き、結界の前で立ち止まった。彼はゆっくりと頭を上げ、フードの下から冷たい目でレインたちを見つめた。
「よく来たな、『選ばれし者』よ」
彼の声は奇妙に響き、まるで別の声が重なっているかのようだった。
「淵の影の手下か」
エドガーが前に出た。「お前の主人は私を通して世界に入り込もうとしているが、私が許さない」
アランは不気味に笑った。
「おまえには選択肢がない。『淵の影』はすでにおまえの中に入り込んでいる。満月の夜、すべてが終わる」
「何を企んでいる?」
レインが問いただした。
「私たちは『淵の影』の到来を準備しているだけだ」アランは答えた。「かつて『創造者』たちが封じた力を解放する。そうすれば、この世界は変わる」
「変わるどころか、破壊されるだけだ」
ケインが反論した。「『淵の影』は混沌そのもの。この世界の秩序を破壊するだけだ」
アランはそれを否定するかのように首を振った。
「古い秩序は滅び、新たな秩序が生まれる。『闇の使者』である私たちは、新世界の支配者となる」
彼の狂気じみた確信に、レインは『創造の書』の警告を思い出した。「淵の影」は常に人々の欲望や恐怖につけ込み、手先を獲得してきたのだ。
「アラン、目を覚ませ」
ヴァルターが叫んだ。「お前は騙されている。『淵の影』は約束など守らない」
「ヴァルター」
アランは冷ややかな視線を向けた。「裏切り者が何を言う。おまえの存在は伯父上にも報告した。もう戻る場所はないぞ」
ヴァルターは動揺したが、後には引かなかった。
「私は真実を知ったからこそ、立場を変えたのだ。お前も本当の敵が何か、気づくべきだ」
アランはその言葉を無視し、再び全員に向かって言った。
「今夜は警告だけにしておく。明日の満月の夜、『星の門』で会おう。そこで最終決戦となる」
そう言うと、彼は手を上げた。影たちがうねるように動き、再び森の闇に溶け込んでいった。アラン自身も後ろ向きに歩き、ゆっくりと闇に消えていった。
彼らが去った後も、重苦しい空気は残っていた。
「奴らは満月の儀式を知っている」
マルコスが言った。「明日の夜、必ず妨害に来るだろう」
「私たちも準備を整えましょう」
レインは毅然と言った。「日の出とともに『星の門』へ向かい、到着後すぐに防衛体制を確立します」
全員が同意し、残りの夜は交代で警戒を続けることになった。攻撃はなかったものの、誰もゆっくり眠ることはできなかった。
***
夜明け前、レインは全員を集めた。
「今日は満月です」
彼は、まだ薄暗い空を見上げた。「『星の門』に到着したら、すぐに準備を始めましょう」
全員が荷物をまとめ、最後の登山に備えた。朝食として簡単なものを口にした後、彼らは「休息の石」を後にした。
「『星の門』までは約三時間の道のりです」
ケインが先導した。「最後の区間は特に険しいので注意してください」
彼の言葉通り、山道はさらに過酷になった。時には岩場を登り、時には細い稜線を慎重に渡らなければならなかった。
正午前、彼らはようやく目的地に到着した。三角山の三つの峰に囲まれた小さな盆地。その中央には古代の祭壇が設置されていた。円形の石の台座の上に、星形の模様が刻まれている。
「『星の門』です」
ケインが畏敬の念を込めて言った。「数百年に一度しか訪れる者のない聖地」
リーザは祭壇を注意深く調査した。
「驚くべき技術です。この石には強力な魔力が眠っています」
「準備を始めましょう」
レインは『創造の書』を取り出した。「まず、周囲に防衛線を張ります」
マルコスは騎士たちに指示し、盆地の入口と周囲の高所に見張りを配置した。ヴァルターと従者たちも彼らに協力した。
アイリスとリーザは、祭壇を囲むように魔法の結界を準備し始めた。彼女たちは『創造の書』の指示に従い、特別な魔法陣を描いていった。
「この結界は『淵の使い』から儀式を守るためのものです」
リーザが説明した。「完全に防ぐことはできませんが、時間稼ぎにはなります」
ソフィアは準備の間、薬や道具を整理していた。
「どれくらいの時間が必要なの?」彼女が尋ねた。
「儀式自体は約一時間」
レインが答えた。「しかし、準備と後片付けを含めると、三時間ほど必要です」
「日没から満月が昇るまでの間に行わなければならない」
ケインが付け加えた。「それが最も『星の門』の力が強まる時間帯だ」
エドガーは祭壇に近づき、その表面を手で触れた。
「不思議だ」彼は静かに言った。「ここに来ると、まるで帰ってきたような感覚がある」
「『創造者の血』が反応しているのでしょう」
レインは彼の横に立った。「この場所は、あなたの祖先が作ったものですから」
午後、彼らは儀式の準備に専念した。四大元素の結晶が祭壇の特定の位置に配置され、特別な魔法の線が石の表面に描かれた。
「ここに立ちます」
レインはエドガーに中央の位置を示した。「そして、私とケインさんがそれぞれ左右に立ちます」
彼らは位置取りを何度か確認し、儀式の流れを復習した。エドガーは古代語の呪文を完璧に暗記しており、自信を持って唱えられるようになっていた。
「アラン・ダーシーと『淵の使い』は確実に来るでしょう」
マルコスが言った。「どのタイミングで攻撃してくるでしょうか」
「おそらく儀式の最中」
レインは『創造の書』を参照した。「彼らの目的は封印を妨害すること。特に三人の『創造者の血』を引く者を分断させようとするでしょう」
「それさえ防げれば勝機はある」
ケインは決意を固めた様子だった。「我々三人さえ儀式を完遂できれば、『淵の影』は再び封印される」
準備が進む中、ヴァルターがレインに近づいた。
「お前を信じることにした」
彼は静かに言った。「あのアランの姿を見て、私は選択を誤っていたと確信した」
「ありがとう、ヴァルター殿」
レインは真摯に答えた。「あなたの力は大きな助けになります」
「グランツとして、できる限りのことをする」
ヴァルターは固く約束した。「騎士たちと共に、儀式を守り抜く」
夕方が近づき、準備はほぼ整った。レインは最後の確認をするため、全員を集めた。
「皆さん、今夜は重要な夜です」
彼は一人一人の顔を見た。疲労の色は見えたが、全員の目には決意が宿っていた。
「約五百年に一度の『淵の影』の封印儀式。この儀式が成功すれば、世界はまた長い平和を享受できます」
エドガーが一歩前に出た。
「私たちの行動が、この世界の未来を決める」彼の声は力強かった。「全ての人々のために、私たちは成功しなければならない」
全員が頷き、それぞれの持ち場に戻った。最後の準備を整え、夕日が山の向こうに沈み始めるのを見つめながら、彼らは決戦の時を待った。
空が赤く染まり、やがて紫色に変わっていった。満月の夜が迫っていた。
(第三十四話 終)
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