第160話 紅蓮の翼・新人面接ナウ その3
クレナイは実翼のウィングを、カムイは雷翼のウィングを起動させて衝突する。
クレナイの
「オラァ!!!」
「ぬおおおおおっっ!!!」
互いに1歩も後退せず、己の武器を押し付け続ける。
大剣の纏う赤いエネルギーとカムイの黒い波動が混じり、弾け、赤黒い余波をフィールドに飛び散らせる。フィールドに次々と荒い破壊の跡が刻まれていく。
「インフェルノの1撃を受け止めるとはな!!」
クレナイが1歩前に出る。カムイが1歩後退する。
僅か、ほんの僅かだがインフェルノの破壊力が上回っている。
「ロゼッタから譲り受けたこの『
両者の武器の間で爆発が起き、2人は爆風に飛ばされて距離ができる。
「いいねぇ! 神堂カムイ!!」
「やはり、闘争はこうでなくてはな……!」
クレナイの主武装は大剣『インフェルノ』と両足に装備した『フットサーベル』。
カムイの主武装は波動を出す両手『ウェイブアーム』と鎖付きの刃を出す『ブレードチェーン』。
クレナイは射程のある武器を持たないが、カムイは射程6mのブレードチェーンがある。間合いで言えばカムイの方が有利。
しかし、カムイはブレードチェーンを使わなかった。なぜならブレードチェーンは『捕まえる』ための武装。カムイの得意な近距離戦から逃げる相手に使うモノだ。
クレナイはそんなものを使わずとも自ら突っ込んでくる。この相手に対し、6mの距離を保ってジリジリとチェーンで削る戦法を取るなどカムイのプライドが許さない。
両者共に、近接戦以外興味なし。
「クレナイよ。貴様は強い。だが我との相性は最悪だったな!!」
クレナイはまっすぐと突撃する。
「最高の間違いだろ!!!」
クレナイの突撃はカムイの残像を穿った。
「なに!?」
「真・明鏡脚……」
モーション無しで高速移動するカムイの移動技。
人は無意識に相手の予備動作から相手の次の動きを読む。だがカムイの真・明鏡脚はその動作が無い(厳密にいえば限りなく少ない)ため、相手の読みを空振りさせて反応を遅らせる。今のクレナイにはカムイが数m間隔で瞬間移動しているように見えている。プロアスリート以上の常人離れした動体視力でも無ければまず初見で反応はできない。
カムイはこの技でクレナイの背後を取る。
「ちっ!」
クレナイは背後の気配を拾い、すぐさま振り返る。
「近距離しかできない貴様に負ける気はしない。この距離で最強は我だ!!」
左手を出すカムイ。大剣を振りかぶるクレナイ。先に対象に触れるのは間違いなくカムイの左手だ。
カムイとクレナイ……2人は同時に笑った。
「
クレナイは振り返り様に足を振り上げ、足裏から出したサーベルでカムイの左肩を斬り裂いた。
カムイの左腕が、落ちる。
「足の、剣……!」
フットサーベル。カムイは知らない、クレナイのもう1つの武器だ。
「とった……!!!」
クレナイは追撃の大剣を振るう。
「高出力モード!!」
クレナイの大剣が赤く迸る。斬撃の威力が大きく上昇した。ウェイブアームで防ぐことは不可能。
カムイは動きを止め、残った右手で手刀を作り、ゆっくり息を吐いた。
「
クレナイが大剣を振り下ろすと、カムイはそれを波動を纏った右手で受けた。
「馬鹿が! それじゃ受け止められ……」
「受け止めるのではない。受け流すのだ」
カムイは蝶を迎え入れるような柔らかい手つき大剣を受け、そのまま外側に流した。
クレナイは剣と手が触れた瞬間に自身の握力が消えたような錯覚に陥った。己の力を、完全にカムイに掌握された。
これがカムイの強み。格ゲーの世界から持ち込んだ異種武装で相手の常識の裏を衝く。
「我が愛用するキャラ、『
カムイは足を真上に上げ、クレナイの顎を蹴り上げた。
「効く……なぁ! オイ!!」
クレナイは受けた攻撃の勢いを活かし、体を
「ほう……!」
クレナイは足裏の剣でカムイの左眼を縦に斬った。
「やるな!」
「やっべ!」
クレナイは無理な体勢からのサマーソルトのせいで着地に失敗する。その隙を逃すカムイではない。カムイは全力で加速し、波動を纏った貫手にて、クレナイの胸を貫いた。
「……さすがだぜ」
「惜しかったな。スラスターの勢いをあと少し抑えていれば、我の追撃を喰らうことは無かっただろう」
クレナイはデリートされ、すぐその場に復活する。
「かーっ! 負けた負けた!」
クレナイはさっさと観客席に帰り、ツバサの前の椅子に座る。
「ツバサ。ありゃ文句なしだ。逃す手はないぞ」
「ワシも同意見じゃ」
「ウチに入る条件は3人抜き。それを変える気はないよ」
ツバサはフィールドに降り、大盾――アイギスを6枚展開する。
「ようやくだな」
カムイは体を修復させる。
「さぁってカムイちゃん。1つ聞くけどさぁ」
「なんだ?」
ツバサは見下した笑みを浮かべる。
「手加減は要るかな?」
「――笑止!!!」
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