織田軍は朝倉の金ヶ崎城へと侵攻した。

 もちろん朝倉の軍勢も迎撃に出ている。

 両軍のにらみ合いが続いた。


 先陣を切ったのは柴田勝家だ。

「野郎共!蹴散らすぞ!!」

 しかし、朝倉軍は防御に徹して反撃もしてこなかった。

「ふん!臆したか!?」

 勝家の鼻息は荒かった。


 しかし、信長の元に伝令が走り込んだ。

「殿!一大事にございます!

 後方から浅井の軍勢が朝倉ののぼりを掲げて迫ってます!

 浅井の裏切りです!」

 織田軍は大混乱に陥った。

「落ち着かんかっ!!!」

 信長は動揺する事なく一喝した。

「ここで挟み撃ちにされたら全滅してしまう!

 全軍退却だ!」

 信長はすぐに命令を出した。

「猿!殿しんがりは貴様に任せる!」

 殿しんがりとは撤退する時に一番後ろで敵の追撃を抑える部隊だ。

 一番危険だが無事に帰還すれば英雄扱いとなる。



 織田軍は一気に岐阜城まで退却した。

「殿!浅井家の裏切りは重大ですぞ!

 すぐに攻め込みましょう!」

 勝家は朝倉との戦いを中断させられて激怒していた。

「まあ、待て…

 みんなに黙っていたが、長政の裏切りは芝居だ」

 信長の意外過ぎる言葉に一同唖然としていた。

「…し、芝居とはどういう事です?」

「うん、長政達を仲間にするには浅井家を潰さないとダメだって事になってね

 …この裏切りで俺達が浅井家を攻め落として、長政は自決した事にするんだよ

 長政には改名してもらって、浅井家の家臣一同織田家に入ってもらうんだ

 これなら、長政達は朝倉にも幕府にも狙われないだろ?」

 信長の説明に誰も言葉がなかった。


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