第八話 信玄、動く!

 もちろん信長も黙って殺られるつもりはなかった。

 織田家の主だった家臣が集められた。


「…俺達はどうすりゃいいんだ?」

 信長がみんなの顔を見回す。


 甲斐、信濃地方を制圧し『甲斐の虎』と恐れられる武田信玄が上洛に動こうとしていた。


「相手は百戦錬磨の武田の騎馬軍団だろ?

 今川の時みたいな奇襲は通用しないよね?」

 信長は頭を抱えた。


「…殿、武田が動くとなれば他の大名も動くかも知れません

 今のうちに味方を増やしておかないと…」

「そうは言ってもなぁ…

 長政だって返事寄越さないし…

 今のところ、味方は家康だけじゃん」

 信長は今にも泣きそうな顔をしていた。


「…またそんな情けない顔をして!」

 そこに帰蝶が現れた。

「…だってさ、朝敵指定なんだよ

 朝倉だけならなんとかなるけど、武田とか上杉が来たらヤバいって…」

 信長は絶望的な顔をしていた。

「あなた様がそんな弱気では、みんなの士気が下がります!

 もっと堂々として下さい!」

 帰蝶がみんなの前でかつを入れる。

 どっちが殿様か分からないくらいだ。


「さすが帰蝶様、相手が武田騎馬軍団でもビビってないぞ」

「…殿もあれくらい毅然としてればなぁ」

「力はあるのに…」

 家臣が口々に愚痴り始めた。

「お前ら!!聞こえてるぞ!!

 だったら帰蝶とお前らだけで武田を何とかしろ!!」

 信長は当たり散らして拗ねて出ていってしまった。


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