藤吉郎は城にも立ち寄り、柴田勝家に会いに行った。


「今度の作戦、私が成功するか?失敗するか?を間近で見たくはないですか?

 もちろん失敗する気はないですが、柴田殿にも損はないと思いますよ」

 藤吉郎は勝家の気を引く。

「…どういう事だ?」

「作戦決行の日、斎藤軍は必ず攻めてきます

 柴田殿が援軍として、その斎藤軍を撃退すればそれは手柄です

 砦が出来ていれば砦を守った事に、失敗していれば我々を救出した事になる訳ですよ」

 言葉巧みに勝家を誘導する。

「ふむ…、奴らには借りを返したいしな…

 良いだろう、決行の日が決まったら知らせを寄越せ!」

 藤吉郎は勝家の約束を取り付けた。


 そして2ヶ月後、作戦を決行した。


 藤吉郎達は満月の月明かりを頼りに丸太の筏で川を下り墨俣に着くと、筏を引き上げ並べ立てた。

 前面には約3mの筏を、横や後ろにはそれより短い筏を立てる事で効率を図った。

「急げ!壁さえ出来ればこっちのもんだ!」

 藤吉郎は陣頭指揮に立って進める。

「藤吉郎様!奴らが動き出しましたぜ!」

 小六の手下が報告に飛び込んできた。

「何だと!?まだ夜明け前だぞ!」

「音で勘づかれたようです!」

 松明たいまつを掲げて斎藤軍が迫ってくる。

「小六、戦える者を集めろ!

 夜明けまで足止めするんだ!夜明けには柴田殿の軍勢が援軍に来る!」

 元々が野武士集団である小六達は武器を取り斎藤軍に向かった。


 小六達は暗がりから奇襲を仕掛け時間を稼ぎ、勝家の援軍が来るまで持ちこたえた。

 藤吉郎も出来上がった砦の壁に織田家ののぼりを立てて完成をアピールした。

「猿め、本当に作ったのか…

 よし!砦を守るぞ!斎藤軍を蹴散らせっ!」

 勝家の軍勢は斎藤軍の横から攻め込み見事に撤退した。


 藤吉郎は織田家の武将が誰も出来なかった墨俣の砦を一夜にして作ってしまった。


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