第17話
◇
ひなたはアホだ。恐らく俺が人生で出会ってきたどの女よりもアホだ。
とにかくひなたは小さな頃からアホで、そのアホさは親戚の中でも有名だった。
俺は俺より年上のこいつを、年上だと思ったことは只の一度も無い。
なぜなら冗談ではなく、本気でアホだからだ。
ガキの頃から、会う度こっちが好意を仄めかしているにも関わらず、これっぽっちも気が付かないアホ。
王子様みたいだから、とか訳の分からない理由で、よりにもよって俺の兄貴と付き合い始めたアホ。
付き合い始めたら始めたで、周りがドン引くくらいに兄貴に貢ぎまくったアホ。
死ぬほど傷付けられたのに、両家の話し合いの時にも「自分が悪いから」とか言って、ヘラヘラ笑ってるような救いようもないアホ。
でも、ひなたはアホだけど馬鹿ではない。
自分の駄目さを分かっていて、だから俺の気持ちも理解していて、それでも自分を変えられないからどうしようもなく落ち込んで、時々こんな風に心が折れてしまったように泣く。
"大切の仕方に正解はないよね?"
二年前、『大切の仕方』を理解できる日まで、結婚もしないし付き合いもしないと言った時、ひなたは俺にそう尋ねた。
ひなたの言う通りだ。
そんなもの人それぞれ違っていて当然だし、本来ならそうあるべきに決まっている。
でも、ひなたはアホだから気が付かない。
いくらひなたが頑張ろうと、そんなものの答えなんて何処にも在りやしないのだ。
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