第8話

「へへへ。ありがと、陸くん」



掛け合わせるものがなくなったパジャマは、私の身体を隠さなくなった。


剥き出しになった私の肌を見て、陸くんがひっそりと眉を寄せた。



「下に何か着ろっつってんだろ」


「いやあ、お風呂あがりだと暑くてねえ……」


「腹冷えんぞ」



陸くんが私のおへそにキスしながら言うから、低い声がお腹の中にまで響いた。


途端、スイッチがパチンと押されたみたいに、身体中の五感という五感が剥き出しになって、その瞬間から私の何もかもが敏感になる。


繊細に皮膚を這う温かい何かが陸くんの指なのか、はたまた舌なのか、すぐに分からなくなってしまった。


陸くんという存在は本当に凄い。手も、唇も、声も、眼差しも、呼吸一つですら、私の身体のどこかに触れれば、私の全てが目いっぱいに嬉しがる。



嬉しいよ、陸くん。私は陸くんにこんな風にされると、嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて、それから少しだけ怖くなるよ。


私はどこまで行っちゃうんだろう。どれだけ陸くんを好きになり続けたら、私は私を満足させられるのかな。


終わりが見えなくて、不安で堪らなくなる。私はいつも、太平洋の真ん中で小さなボートを漕いでいる気持ちになるよ。



随分と長いあいだ甘い波に揺られ続けた後、やがて陸くんの指が私の中から這い出て行った。


私の太ももの間に居た陸くんがトップスを脱ぎ捨てて、ベッド脇に置いてあるサイドテーブルへ手を伸ばす。



「あ、陸くん」


「んだよ」


「今日ね、付けなくても大丈夫!」



意気揚々と言った私とは対照的に、陸くんは「は?」と怒ったように顔を顰めた。

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