月森君死んだなら私と付き合ってよ♪

三愛紫月

プロローグ

「月森君が好きです。月森碧つきもりあお君が好きです」


「何で二回言ったん?あーー、ごめん。俺は、星宮ほしみやの気持ちには、一生答えられない」


「いっ、一生ですか?それは、現世では無理って事?」


「うん」


「そんなに三村希子みむらきこさんがいいんですか?」


「なーんだ。知ってんじゃん。そう、俺は4歳の時からずっーーと希子、一筋なんだよ。だから、ごめん」


「三村さんは、早乙女優雅さおとめゆうがさんとお付き合いしてますよ!交際期間は、中学一年生からで、先日4年目を迎えました。月森君の入る隙はないと思います」


「そんなハッキリ言わなくてもいいじゃん。だから、星宮は浮いてんだよ」



 月森君が私に笑いかけてくれる。


 その笑顔に心臓がドキドキと悲鳴をあげた。


 あーー、私はやっぱり月森碧が好きなんだと再認識する瞬間。


「一度だけ、一度だけ、考えて下さい。お願いします」


「えーー。つうか、何で星宮は俺なんか好きなん?」


「俺なんかじゃないです。月森君の声、高身長、その指に顔。そして、優しい所。全部全部好きです」


「ハハハ。何だ、それ。じゃあ、来世だったら付き合ってやるよ!」


「来世って死んだらって事ですか?」


「あーー、死んだら、死んだら」


 はぐらかすように笑った月森君の横顔。


 やっぱり、堪らなく好き。


 私は……。



ピピピピ……。

ピピピピ……。


「うーーん」


 目覚まし時計を止めて、立ち上がろうとした瞬間だった。


 グワングワンと視界が回り、私はベットに倒される。



「な……何?もう一回起き上がろう」


 もう一度、起き上がろうとしてもグラグラと視界が回り……。


 後頭部が引っ張られて、ベットに倒されてしまう。


 嘘でしょ?


 枕元にあるスマホを取る。


【めまい、倒れる】

【めまい、危険】


 などと、スマホにあらゆる言葉を入力してみる。


 どうやら、脳に血液がいかなくて倒れたみたいだった。


「休むしかない」


 スマホで会社に連絡をした。


 最近は、休むのもメッセージを送れば済むから助かる。


 私は、昔から人付き合いが苦手だから……。



 そういえば、さっきの夢懐かしかった。


 私が初めて人を好きになったのは月森君だった。


 保育所で一度だけ話して……。


 高校で再会した。隣の席の月森君とは、人見知りなのに何故か話せた。


 気持ちを押さえられなくなった私は、月森君に告白した。


 ただのクラスメイトから恋人に昇格したかったから……。


 結果は、惨敗だったけど。


 SNSを検索する。


 会社の同僚の郁恵ちゃんが、それで初恋相手に再会して。


 ただいま、泥沼不倫裁判になってるらしい。



「月森……月森……。あった」


 高校生の頃と変わってない笑顔に安心する。


 最後の投稿は、一年前の今日。


【39歳まで一人だったらもらってやると約束した希子が、今日結婚した。まさか、同じ会社の部下と結婚するなんてな!おめでとう!希子】



 月森君、まだ好きだったんだ。


 新郎新婦と映る月森君の顔は、寂しそうで見ていられなかった。



「月森君……。付き合えなかったんだね」



 グルグルと天井が回るから、私はゆっくり目を閉じる。


 大丈夫だよ!


 来世は、私が月森君を幸せにしてあげるから……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る