ただひとつのあこがれだけは…

天柳李海

ただひとつのあこがれだけは…

「どこのだれにも けせはしないさ」


咄嗟にこの歌詞がでてきた人と語り合いたい!!


私は海洋冒険小説が好きです。

今回のKACのお題を見て、このフレーズが脳裏をよぎりました。


まずご存知ない方も多いでしょうから。

これは、スティーブンソンの宝島を原作にした「アニメ・宝島」というアニメーションの主題歌です。

海賊王フリントが埋めた宝の地図を手に入れた少年ジムが、宝島への航海に出ることを夢見て、ワクワクする気持ちや憧憬――『あこがれ』をイメージした名曲です。


作曲はあのハネケンこと『羽田健太郎』さん。

You Tubeでアニメ公式チャンネルで第3話まで試聴できるので、どんなオープニング曲なのか、気になる方は見て欲しい。dアニメなら全話観ることができます!


歌詞の力と曲のせいか、少し落ち込んだ時に聴いても、勇気が湧いてくるような。

心にしみるんですよね。


「ただひとつのあこがれだけは~」はサビ部分です。

ここを聴くとぐっと胸が熱くなる。

自分の人生を重ねて聴いてしまうこともあります。


『アニメ・宝島』は1978年にテレビ放映された古いアニメです。監督は『あしたのジョー』で知られる出﨑統さん。作画監督も杉野昭夫さん。


子供向けアニメと思いがちですが、この監督演出作画絵面監督さんですよ。

ぜひ、『大人』こそ観て欲しい。


少年ジムとジョン・シルバー。

父親がいないジムは、シルバーの中に父親をみたり、男としての友情も感じています。

けれどシルバーは長年フリントの宝を探していた海賊の親玉でした。

その目的のためだけに、自分の人生を捧げて宝を探していました。


シルバーの生き様を感じる印象的なセリフがあります。

宝島の壮絶な冒険が終わって、シルバーは海賊として捕縛されます。

イギリスに戻ったら待っているのは絞首刑。


ジムは船倉に閉じ込められているシルバーの元を訪れます。

一杯のコーヒーを持って。

シルバーはそれをうれしそうに飲みます。ジムは彼に尋ねます。


「シルバーにとって一番大切なものは何?」と。

シルバーは高々とコーヒーを掲げます。

「今はこの一杯のコーヒーだ」(キラーン✨️)


ジムは怒ります。シルバーにからかわれていると思って。

そんなジムへ、シルバーは呟きます。


「俺にとってこの瞬間は、お前が入れてくれたコーヒーだ。だが明日になったらきっと変わっまうだろう。つまりな、ジム。俺にとって大切なものは何か。それは俺自身にもまだ……わからないんだ。フリントの宝を探した20年はとても楽しかった。宝を手に入れれば、俺の一番大切なものがわかる気がした。だが宝が全部俺のものになるとしても、宝は所詮、宝だった。俺にとっての「何か」ではなかった」


敢えて映像を見直してセリフを確認はしていません。ニュアンスはこんなかんじです。それでまだ続きがあります。


「俺にとって一番大切なものに出会うときがあるよな……。そうでなきゃ、あまりにもさびしすぎるよなぁ」って。


宝島の冒険も終わってしんみりするシーンなんですが、宝への執念は誰よりも凄かったシルバーの人柄がわかるセリフで。


とにかくシルバーは宝島の多彩なキャラクターの中で、本当に魅力的で格好いい海の男なのです。ビジュアルも、渋い声(若山弦蔵さん)も、まさに私の『あこがれ』が詰まっています。



◆◆◆


『あこがれ』といえば、帆船つながりで、まさにこの名前を冠した船がありました。

過去形です。今は違う名前、違う役割を担って、現在も就航しています。

見学で乗船したこともあります。

仕事の都合で体験航海は参加したことがありませんが。


あこがれが募るあまり、自分の小説に登場させました。

100万字を超えてしまった海洋ファンタジー小説ですが、主人公の愛してやまないロワールハイネス号のモデルの船です。大きさもほぼ同じだったりします。


物事がうまくいかなかったり。落ち込んだりした時。

「アニメ宝島」の主題歌を思い出します。


『ただひとつのあこがれだけは、どこのだれにも、けせはしないさ』


創作という心の火は、どこの誰にも消せはしない。

なんて置き換えて、自分を鼓舞しています。


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