数年越しの謝罪と感謝。

Kazukazu

1. 再開

 高校2年生の9月、僕は初めて転校をした。知らない街で、誰も昔の僕のことなんか知らない人達に囲まれて暮らしていくということを考えるのは、僕にとってとても心地よいことだった。

 知らない学校、知らない教室で参加した初めてのHR。転入生の僕は教壇に立ち、自己紹介を行った。初めてのことだったけど不思議と緊張はしなかった。

佐久間さくま つとむです。東京から引っ越してきました。短い間ですが、よろしくお願いします。」

朝の電車で考えた簡単な自己紹介を終え、僕は窓際の後ろから2番目の席に座った。後ろは授業中に居眠りとかできるから好きだけど、窓際はこの季節、寒いんだよなぁ。なんて思っていると、

「このクラスにはもう1人転入生が来ています。」

と先生がクラスに呼びかけた。途端に生徒たちがざわつき始める。僕も珍しいなと思いながら教卓の先生を見つめる。

「転入初日から遅刻しているみたいなの。もうちょっと待ってね。」

 先生の発言から数秒後、パタパタと廊下を走る音が聞こえたと思ったら勢いよくドアが開き、僕と同じもう1人の転入生が教室に入ってきた。

「お、おはようございまーす!遅れてごめんなさい!東雲しののめ れいです!これからよろしく……って、佐久間くん?!」

…誰も昔の僕のことなんか知らない人達に囲まれて暮らしていくことは無理そうだ。

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