日常でふっと感じたり、思い出したりしたことを詩のように綴る
結陽 詩根(ゆいひ しいね)*12月多忙
私の大切な青春
そろそろ受験勉強を始めるから、
もう一緒に遊べない。
そう告げられた高2の夏、
とてつもない喪失感に襲われ、
ただ立ち尽くすしかなかった。
運命の人とまで感じた
大好きな先輩。
その独特な話術と
従順な犬のように甘える目に、
私の心は見事に奪われていた。
そんな先輩からの、突き放すような言葉。
今までの夢のような世界から、
急に現実へ引き戻されたようで、
心が追いつかないまま。
慣性の法則の実験だ!と言いながら、
一緒にホームと電車内を駆け抜けたあの日。
「良い年になって、ふたりとも結婚していなかったら、結婚しよう」
そんな誓いを紙に書いて、部室のロッカー裏に貼った。
「真夏の夜の夢」というタイトルで送ってくれた
あのピアノ曲は、難しすぎて未だに弾けないまま。
けれど、肌と肌が触れ合い、
強く抱きしめあった時の体温だけは、
鮮やかに思い出せる。
一緒に、青春の扉を一つひとつ開けていった人。
私を照らし、潤し、心を高揚させてくれた人。
先輩は、一浪の末に難関大学へ合格し、
今は大学で教鞭を執る。
子どもにも恵まれ、立派なパパになった。
私も、夫と二児の可愛い子どもたちに囲まれ、
穏やかに幸せを感じている。
あの高校時代の美しい思い出は、
私の胸にそっとしまわれたまま。
ときどき心の扉を開けば、
今も切ない気持ちがあふれる。
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