僕たちは正義のヒーロー

敷知遠江守

ヒーローは悪を退治する

 友達Aがちょっとこれを見てみろと言って携帯電話を見せた。


 僕の家は母さんから携帯電話でYoutubeを見る事は禁止されている。だけどAの家はそうじゃなく、こうして学校で動画を見ている。

 Aが見せてきた動画は大昔の三人の戦隊ヒーロー。今の戦隊ヒーローと違って、ピカピカしてなくて画面が眩しくない。それだけで何となく新鮮であった。


「なあ、これやろうぜ! 俺、このイーグルな! お前はこっちのシャーク!」


 Aは目を輝かせ、決めポーズを研究している。そこに友人Bがやってきた。

 Bも非常にノリが良く、お前はパンサーだとAに言われて、大喜びで動画を見て決めポーズを研究し始める。

 二人がやるなら仕方ない。僕もシャークになろう。


 こうして僕たちはあこがれの戦隊ヒーローになった。

 戦隊ヒーローの役割は悪を倒す事。


 女子のスカートをめくる奴を退治!

 掃除をさぼる奴を退治!

 弱い者いじめをする奴を退治!


 僕たちは正義のヒーローだから、教室の悪を許さないのだ。

 でも、どういうわけか、決めポーズをするとみんな笑い出してしまう。


 ある時、自習の時間に騒ぎ出した奴らがいた。

 僕たちはそういう悪を許さない。

 いつものように決めポーズをして悪を倒そうとした。

 ところがそこに先生がやってきてしまった。


 僕たちは職員室に呼ばれ、自習時間に騒いだ奴という事でこっぴどく叱られる事になった。

 そうじゃない。僕たちは正義のヒーローとして自習時間に騒いだ奴を退治しようとしたんだ。そう言ってAは先生に抗議した。だが……


「何を言ってるんだお前は。あの時、騒いでたのはお前たち三人だけだったじゃないか。退治する? そうやって他の子に暴力振るってるのか。そんな遊びは禁止だ!」


 こうして僕たちは正義のヒーローを禁止されてしまった。


 そんなある日の事だった。

 僕たち三人は、クラスの奴がいじめをしているのを目撃してしまったのだった。みんな恐れて見てみぬふりをしている。

 何とかしてやりたい。でも僕たちは正義のヒーローを禁止されている。

 どうすれば良いんだ……


「なあ。もう一度俺はイーグルになろうと思うんだ。だからお前たちもシャークとパンサーになれよ。先生が何だ。ヒーローは悪を許さないんだ!」

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僕たちは正義のヒーロー 敷知遠江守 @Fuchi_Ensyu

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