【KAC20252】『オレ、ずっと山田センパイに憧れていたんです……!』

つきレモン@カクヨム休止中

サッカー部部長、山田へのメッセージ

「どんな時も自分より部員のオレたちを気遣ってくれて、オレの憧れの先輩です……!」


 その言葉から始まった、サッカー部部長の山田へ向けてのメッセージ。

 今年の最後の大会を終え、もうこれで三年生は部活を引退する時期になった。


(あっという間だったなあ、こいつらともお別れだと思うと寂しくなるなあ……)


 サッカー部の跡を継いでもらう後輩たちに、今までの感謝と激励の言葉を頂くことになった山田。


 まず始めの言葉に胸が温かくなるのを感じながら、山田は続きをうながした。


「サッカーをする姿もマジでめっちゃカッコよくて、めちゃくちゃ憧れました! その、あの、えーっと、とにかく、センパイのさらなるヒヤク……をココロから願っていますっ!」


 語彙力はないにしても、その気持ちはきっと本当。

 山田も、二年間も一緒に部活をやっていれば、それが本心だということはしっかりとわかっていた。


「それは嬉しいよ。お前も十分成長してるからこのままいけばきっと上手くなれるぞ」


 山田は後輩にそう言っていつものさわやかな笑顔で微笑んだ。

 その後輩を見守るようにして囲んでいた、別の後輩がシュッとまっすぐ手を挙げた。


「あの! 俺もずっと山田センパイに憧れてたんです……!」


 お前もか、と次は少し小柄な一年生の後輩に視線が向く。


「大会のときは必ず差し入れを持ってきてくれる優しさとか、何度もカッコいいなあって思いました……! それで俺も真似しようとしたんですけど……」


 大会の差し入れは士気を高めるためにしか考えていなかったから、きっと彼が思っているほど大したことはしていない。


「気がついたら自分で全部食べちゃってました……!」

「お前なあ……。でも差し入れを用意しようと思ったのはいいと思うぞ」


 飽きれつつも笑う山田に、つられて周りの後輩も笑った。


 みんないいやつらだった。別れとなると寂しいものは寂しい。

 その気持ちを押し込めて、


「お前たちの憧れの的になれているのなら嬉しい限りだよ」


 山田がそう言うと、また別の後輩が手を挙げた。


「俺もセンパイみたいになりたくて、実は髪型を真似したんですけど……」

「うん? たしかにお前の髪型、俺と似てるな?」

「でも……俺には似合いませんでした!」


 後輩が頭をかきながら照れ笑いを浮かべると、周りの部員たちがクスクスと笑う。

 

「そうか? 変ではないと思うけどなあ?」


 山田はそう返すと、ぐるりと後輩たちを見回した。


(本当に、いい後輩たちだったな……)


 名残惜しさを噛みしめながら、山田は最後にこう言った。


「お前らがそんなに俺を憧れるなら、ちゃんと継いでくれよ?  俺がいなくなっても、サッカー部を頼んだぞ」


 そう言うと、後輩たちが一斉に「はい!」と元気よく返事をする。


 こうして、俺のサッカー部部長としての役目は終えることになったのだった。

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