ー16ー

第16話

「そんな顔しなくていいんだよ」

父の部屋で、面を外したおじさんは、汗をぬぐいながら笑っていた。

「良かった。竹宮は全力で向き合ってくれた」

おじさんは剣道具をまとめはじめた。

「おじさん…」

「君のお母さんは強かった。僕の負けだ」

おじさんは、私の方を向いて、こう言った。

「夢のような時間だった。僕もケジメをつけることが出来たよ」

「…」

「ありがとう、璃子ちゃん。何かあったら必ず連絡するんだ。力になるから。いいね」

私は頷くこともできず、ただおじさんの顔を見つめた。

「ごめん。璃子ちゃん。着替えるから、いいかな」

私は立ち上がり、父の部屋を後にした。


朝は、母とふたりだけの食事だった。

テーブルの向かいには、おじさんの分の食器がぽつんと伏せられたまま置いてあった。

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