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第7話
「なぜ、想いは届かないのでしょうか」
「あの…」
「どうして、願いは叶わないのでしょうか」
「先生?」
「結局、多くの人がそのままでいるのです。そのまま。何も報われずに」
「一体どうしたんですか?」
「そして、何も変わらず、人間がただそのままでいることにも、ある種のエネルギーは確実に消費されているのです」
「先生、やめてください」
「実に淡々と、恐ろしいくらいに」
「先生!」
「では、このエネルギーの正体について、答えられる人」
「…」
「瀬月璃子さん」
びっくりして目が覚めた。
高校の時、ほとんど喋ったことのない倫理の先生だった。
横になったまま、周りを見てみる。部屋は暗かった。
そうだ。あの後、夕食を取って、ホテルに戻って…。なんとなく居心地が悪くて、先にシャワーを浴びて、そのまま眠っちゃったんだ。
おじさんは夕食の時、ほとんど喋らなかった。当り前だ。手なんか握らなければ良かった。おじさんを困らせてしまった。
でも―。
浴室のドアが開く音がした。部屋に少しだけ明かりが差した。
おじさんは、静かに私の隣のベッドに座った。少しだけシーツの衣擦れの音がした。
このまま私が起きなければ、おじさんはもうすぐ寝てしまうだろう。つまり朝が来る。この夜が終わる。
私は、ゆっくりとベッドから体を起こして、おじさんの方を向いた。
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