第2話

 まじまじと見て、その建物に見覚えがあることに気づく。

 おそらく、マンションの窓から見える公民館だろう。

 

 しかし、その後ろに海はあるものの、公民館は赤色ではない。


「何故赤色なんだ?」


 思わずつぶやくが誰も反応せず、自分の声が響くだけだった。


 ふと、胸騒ぎを覚えて、急いで窓へ向かう。 

 そして公民館の方角を見る。窓の外では消防車が停まっていて、


 そう、公民館が燃えていた。


 まさに絵と同じ状況だ。

 これで赤色が使われている理由も分かる。


しかし、弟はどうやってこの絵を描いたのだろうか。

 俺が帰ってきた時には公民館は燃えていなかった。

  そして俺が帰ってきてドアを開けるまでに燃えたとしても弟はそれを描くことはできない。 

 俺の心にとある考えがよぎった。


 弟は未来予知ができるようになってしまったのではないだろうか。


そう考えると辻褄が会う。

 俺が絵を見ている絵は、よく見てみれば俺が置いたリュックサックや水筒の位置まで全く一緒だった。


 そして、公民館が火事になっている絵も、未来予知が使えれば描ける。


 そういえば、昏睡状態から回復した時からぼーっとしている時が多くなった。

 その時に未来を予知していたのではないか。


 絵を床に描いているのは俺たちにこれらを伝えようと、無意識にインパクトの強い方法を選んで描いているのではないか。


 いや、これらはあくまで妄想でしかない。弟に聞いてみなければならないが、とりあえず絵を消そう。


 消毒液とティッシュで絵をこすっていく。

 絵は俺の心情を表すかのようにぐちゃになって行く。


 そしてもう一つの考えたくもない可能性を考えないようにする。


 弟の能力は描いた現象を実現する能力なのではないかという可能性を……。



 弟はどうなってしまったのか……。

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可笑しい絵 OROCHI@PLEC @YAMATANO-OROCHI

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