Re:GAW

第31話 Re:GAW

 ログインすると、そこはあの沼地だった。

 夕日が沈みかけて赤く染めていた。

 キジナさんの言葉を思い出す。


「多分最初の沼地にログインするはずだ。真っ直ぐに私の所に来てくれ。大切な話がある」


 それを思い出し、走り出した。

 森に着いた時には夜になっていたが、星を頼りに進んで行った。以前は2日かかった距離も、今の体だと1日掛からずに進めた。

 明け方、ボクはキジナさんの家に着いた。

 そこではキジナさんが小川から水を汲んでいた。


「キジナさん、到着しました」


 そう声をかけると。

 キジナさんはびっくりしたような顔をした。


「随分と大きくなったな」

「ボスを倒したらこうなりました」

「成長か、いい傾向だ」

「はい」


 そんな会話をして、そこで気がついた。キジナさんの顔にはアザのようなものが浮かんでいる。


「ああ、これか。テルのクリア後に色々あってな。その話をしたいから、家に入ってくれ」


 そう言ってキジナさんは家に入った。

 キジナさんの家の中には、白に赤い線が入ったローブを着た人がいた。


「やぁ、シン。早かったね」


 紛れもない、ハギさんだ。

 当たり前なのだが、なんとなく驚いてしまった。キジナさんが「座って待っていろ」と言って、組んできた水を何処かに運んで行った。戻ってくると。


「さてと」


 そういって、話を始めた。


「キリが現実に戻れない、って話はしたな」

「はい」

「その原因だが、一応分かっている。テルとハギとキリはボスを倒した。でもそれは2匹だった。当時はテルとハギはコンビでログインしたから合わせて1体だと思っていた。テルとハギで1体、そしてキリでもう1体。だから合計で2体。そう思っていた。だが、たぶん違かったんだ。キリのボスはどこかにいて、そしてキリを狙った一撃を放った。結果、テルがゲームオーバーになり、キリのボスは自由に動けるようになった。もちろん全て仮定だが、おそらく大きくは外れていないはずだ。キリのボスは死んでいない。だからキリは戻れない。これが、キリが現実に戻れない理由だと考えている」


 ここまでいいか? と言われて「はい」を返した。


「と言うことはだ、キリのボスを見つけ出して倒せばいい。それが目的だ」

「分かりました。そのボスは、今どこにいるか分かりますか?」

「大体の検討はついている。それで話の続きだ」


 キジナさんは一つ息をついた。


「実は、キリにはなんとなく感じ取れていたらしいんだ。嫌なものとして。だから、今までキリは自分のボスとの戦いを避けていた。でもな、テルがクリアして、キリの気持ちは変わった。挑戦しようと思うようになったんだ。だから、キリは私と一緒にボスを倒しに行った。結果がこれだ」


 そう言って上半身の服を脱いだ。

 その下は「う、ぁ」真っ黒に爛れていた。


「厄介な攻撃だった。呪いの類いらしくてな。回復しない。私は種族の恩恵で動けるが」


 キジナさんは顔を歪めた。


「キリは動けない状態だ」


 溜息が聞こえた。それから。


「正直お手上げだ」


 それからもう一度、ため息をついた。

 暗い空気が流れた。

 その空気を一掃するような声だった。


「だから僕たちが呼ばれたんだよ、シン」

「どう言うことですか?」

「僕の職業、賢者セージはちょっとレアでさ。呪いの解呪ができるんだ。師匠とキリのダメージはは、僕の呪文でなんとかできる。でも精神的なダメージは、僕には治せない。だからそれはシンがやるんだ」

「ボクが、ですか?」

「シンにならできるよ。と言うか、きっとシンにしかできない。特別な役割だ」

「ボクにできるなら」ボクの心は決まっている「なんだってやります」


「決まりだ!」


 キジナさんの声が響いた。

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