『骨を喰む真珠』うらばなし

北沢陶

登場人物の年齢【ネタバレあり】

 『骨を喰む真珠』の登場人物の年齢は、明かされている者もいれば曖昧な者もいるので、ここにメインの登場人物の年齢一覧(満年齢)を書いておきます。


まずは人間から。


新波苑子…21歳

新波栄衣…16歳

楢操…21歳

丹邨孝太郎…14歳

丹邨光将…51歳

丹邨登世…45歳


 先に満年齢と書きましたが、ここが大正時代の難しいところで、当時は年齢を数え年で言うのが普通でした(学校の入学など公的なものは満年齢が基準)。数え年というのは生まれたときに1歳、元日を迎えるごとに1歳加算されていきます。誕生日を迎えるまでは数え年が満年齢より2歳上、誕生日を迎えると満年齢が1歳加算されるので数え年が1歳上となるわけです。


 ですので苑子が年齢を訊かれたとき、「数えで二十三です」と答えていますが、満年齢でいうと21歳です。苑子は7月生まれで、年齢を訊かれた日は4月なのでまだ誕生日を迎えておらず、2歳の差ができているのです。操(苑子と同じ年の10月生まれ)も数えでは23歳ですが、苑子と同じ理由で数え年と満年齢で2歳の差があります。

 苑子と操が現代に生まれていたらまだ大学生だったかも……と考えるとなんだか不思議な気分です。



人魚は本作では長生きという設定なので、以下のようになっています。


丹邨礼以…約800歳

白潟譲…約600歳


 礼以、白潟より200歳年上です。


 といってもふたりとも人生(?)のほとんどを海を渡って暮らしてきたので、時間の感覚が薄く、この年齢もかなり曖昧です。本人たちに訊けば軽く100歳単位でぶれた答えを返してくるでしょう。白潟があと何年ぐらい生きるかという問いに、彼が「恐らく、あと数百年は」と非常に曖昧な答え方をしているのはそのためです。時間の流れという概念が薄いために、自分の正確な年齢も、一族の寿命もよく把握できていません。

 白潟の一族が陸に長く暮らすことができていれば、いずれ彼らも年齢や寿命に関して理解を深めることができたでしょうが、礼以と白潟自身のためにそれも叶わなくなりました。


 つまり白潟は自分があと何年生きるのか分からないまま、いつ忘れられるとも知れない礼以の幻影に苦しめられるわけです。


 人魚同士は人間のように見た目で年齢を推測できるか……という話ですが、白潟と礼以は種族が違うこともあり、互いが人魚だと分かった後も年齢を外見だけで推し量れた可能性は低いです。ただ言動から礼以は白潟のことを(坊やねぇ)と思っていたでしょうし、白潟は白潟で(こいつ年上だな)と考えていたでしょうね。


 実際には年下のはずの白潟が(苑子たちの目には)30歳前後、年上の礼以が20歳前後に見えるのは種族の違いに由来しています。白潟の一族は30代前半~半ばほど、礼以の一族は20代ほどで外見年齢の老化がほぼ止まります。具体的にどのくらいの外見年齢で老けなくなるのかは個人差があるかと。


 白潟は現代まで生きているという裏設定がありますが、作中からそれほど外見年齢は変わっていないかと思います。身分証明書などを偽造するのが大変そうですが、彼は人脈作りがうまいので何とかしているでしょう。


 礼以の最期を現代の白潟が忘れられているかどうかは、白潟のみぞ知る、です。


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