第25話

編集長と飲んだせいか、少なくとも二つの動画は作り物と分かったせいか、ぐっすり眠ることができた。


目覚めもよく、朝は快適に過ごす。


出社して挨拶をすると、早速吉本太一の実家に向かう。住まいは町田だ。


動画に裏があったとして、行方不明者が三人とは限らない、と思う。


前も思ったとおり、あるいはかなえの友達の良子が言っていたとおり、もっといるのかもしれない。ただ知られていないだけで。


小田急線に乗り、町田まで行くと地図を見ながら進んでいく。


夕闇編集部は常に動いているからいい運動にはなる。なにを食べても、歩き回るからカロリー消費ができる。


調べたいこと、確かめたいことはいくつかあった。


緩い坂道を登っていくと、白い外壁の一軒家が見える。吉本太一、十四歳。


調べている中では一番若い。


インターホンを鳴らすと、顔色の悪い女性が出てきた。


やっぱり、今の時代でも専業主婦は多いのだな、と思う。いや、午後からパート、ということもあるかもしれないが。


「先日はお電話にご快諾頂きありがとうございました」


そう言って自己紹介をし、名刺を渡す。


「ご丁寧にどうもありがとうございます。私は吉本由香です」


そう言って名刺を綺麗に受け取り、頭を下げる。


平助の母親とは違い、しっかりした印象を受ける。


「あがってください。まずはお茶でも」


言われて靴を脱ぎ、リビングにとおされる。早くパソコン関連を調べたいが、話を聞くことも大事だ。言われたとおり、席に座ってお茶を頂くことにした。


「太一は生きていれば今年十五です。生きていると願いたいですが……」


「どんな子でしたか」


「活発な子でしたよ。サッカーが好きでサッカー部に入っていました」


そんな子も、オカルト動画を見ていたのだ。流行ったのだろうか。


「でも去年の五月四日深夜にいなくなって……厳密に言えば五月五日でしたが。警察は何も変わったことはないというんです」


「太一君は五月四日はなにを?」


「ゴールデンウィークでしたし、友達と遊びに出かけていましたよ」


「家に帰ってからは?」


「二階の自室にこもっていました」


「他に何か変わったことはありませんでしたか?」


由香は眉間にしわを寄せる。


「そうですね。五月二日、三日あたり、部屋で叫んでいたことがあります。普段はいつも落ち着いていて、サッカーで声を張り上げるとき以外は大声を出すような子ではないんですけど」


「なんと言っていたのですか」


「なんだよ、とか畜生、とかふざけんな、とか。夜中にも言っていたんです。飛び起きて、慌てて部屋を見に行ったのですが、入ってこないでくれと言われて。しばらく廊下で待っていたら、青白い顔をしてドアを開けて『起こしてごめん』と。音楽も聞こえてきたような」


「音楽?」


「気味の悪い……メロディーだけの。そうだ、とおりゃんせでした。太一が聞くような音楽ではありません」


「なんでそんな音が?」


「警察の方にも言ったのですが、それも不明でした」


「その時の部屋の様子は?」


「特に変わったことは……なかったと思います。部屋に入れてくれなかったので、見てはいないですけど。翌日は、綺麗に片付いていました」


「それが五月の二日か三日あたり」


確認するために訊ねる。


「はい」


玲奈は静かにお茶を飲み、言った。


「太一君のお部屋に案内してください」


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