二口女と用心棒の合作企画

女神なウサギ

第1話 鬼

 クラブの奥深く、丸い形のステージがあるエリアで私達は足を止めた。あかりさんによると、ここは選ばれた人しか入れない無法地帯らしい。裏社会の人間がステージに立ってお金を稼ぐーー

だが、今日ステージに立っていたのは強面な人物ではなく、杖をついた1人のおじいちゃんだった。

あかりさんがきょとんとする

「珍しいな、おじいちゃんなんて」

だが、私は逆に身構えた

「いえ、おじいちゃんではありません。たぶん、鬼」

「鬼?」

私はステージの前にいる女性に声を掛ける

呂久呂ろくろさん!」

「あの人があなたと待ち合わせしている人?」

女性を振り向いて叫んだ

「詩音ちゃん、来ちゃダメ!!!」

老人は全身に力を込めた

「うー、がぁー!!!」

老人の姿が見る間に背が高くガッチリとした姿の鬼へと変わる

あかりさんが声を上げる

「化け物・・・!」

クラブのお客さんたちは悲鳴を上げて一目散に逃げ出した

「あかりさん、あれを倒します」

「あの怪物を!?ーー分かった、詩音ちゃんは下がっていて」

あかりさんが鬼に向かって駆け出した

「えりゃー!!」

あかりさんは鬼の攻撃を避けながら蹴りやパンチを繰り出していく。だが、一瞬のすきを突いて鬼があかりさんを捕まえた

「しまった!!」

私はすかさず駆け出して鬼の顎に蹴りを与えた。

鬼があかりさんを離してよろける

「大丈夫ですか!」

「ありがとう、助かったわ」

「鬼はより自分を傷つけた者を狙います。ターゲットは私になりました」

「そんな・・!!」

「ーー下がっていて下さい」

「でもーー」

「あかりさんには娘さんがいるんですよね?必ず家に帰らないと」

「詩音ちゃんの体格じゃ・・・」

私はバンダナを取る

「詩音ちゃん、その頭の口!!あなたも妖怪なの!?」

「ーー二口女の近藤詩音です。くっちゃん!」

私は振り返って後頭部の口を鬼に向ける

くっちゃんが歌を歌う

「カゴメカゴメ〜」

歌を聞いた鬼は怯んだ

「今だ!!」

"さあ、復讐の時間だよ"

髪を伸ばして鬼の首を絞める

あかりさんが目を丸くする

「すごい・・!!!」

だが、鬼は手刀で髪を切断した

「しまった!」

あかりさんが鬼の腹にパンチを食らわせる

「ーーぐっ、がっ、がっ・・・!」

鬼は後に倒れた

「やった!」

「ありがとうございます!!」

 私は呂久呂さんに駆け寄った

「呂久呂さん!」

「ありがとう詩音ちゃん、助かったよ」

「怪我がなくて良かったです」

「お姉さんもありがとうね。えっと・・」

「あかりです」

「あかりさん、ありがとう。まったく、人間界観光のはずがとんだ災難だよ」

あかりさんが首を傾げる

「人間界観光?」

呂久呂さんが首を伸ばす

「あなたも妖怪なんですか!?」

「ろくろ首さ」

「詩音ちゃん、この鬼はどうするの?」

「妖怪世界に連れて帰ってぬらりひょん様の力で地獄に繋ぎ止めてもらいます。呂久呂さん、お願いします」

「あいよ」

呂久呂さんが鬼をつかむ

「ドロロンパ」

鬼は呂久呂さんと共に消えた

「これにて一件落着だね」

 「あかりさん、今日はありがとうございました」

「こちらこそ助かったよ」

「いつか再会したらカフェでも行きましょう」

「うん!」

「娘さんを大事にして下さい。ドロロンパ」

そう言い残して私は妖怪世界へと帰っていった

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二口女と用心棒の合作企画 女神なウサギ @Fuwakuma

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