第10話
その日は散々だった。
結局昼飯は食えず。次の時間は体育で。今時竹刀片手に授業してくる進路指導の先生で……。
散々だった。いやもう本当に散々だった。
体育のあとの授業で、空腹に耐えられずにノート立てて隠れて弁当食ってみた(友人曰くバレないと)けど。
「早弁じゃなくて遅弁か。流行か」とか先生に言われて笑い物にされるし。弁当の途中で今時絶対ないバケツ持って廊下立たされるし。グラウンド走ってた人たちにはクスクス笑われるし。
……散々だった。平凡な俺にとっては、今までで一番散々だったかも知れない。
「よかったな」
「何が……」
「初めて不良になった気分はどうだ」
「もう、サイアク……」
プラス方面ならまだしも、マイナス方面に足を踏み出したくはなかった。いや、まあ今でも赤点は取ってたりするけど。
(……はあ)
ふと、ため息のような息を胸の中に落としながら、机の中に手を突っ込む。置き勉だらけのそこにあるのは、一枚の手紙。
中にはたった一言。俺を呼び出した場所と時間が書いてあるだけ。それだけ。
「んじゃ部活さ行ってくら」
「んー」
「今日待つ日? 先帰る?」
「あー。今日は帰るわ。部活頑張れ、
「おう。気を付けて帰れよ」
俺を唯一と言っていいほど名前で呼んでくれる小学校からの友人は、サッカーに勤しみに行くらしい。頑張れ頑張れ。
眠くなった頬を抓ったら痛かった。やっぱり夢じゃないんだよな。
……いってー。
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