第8話

『返事はいりません』


『え?』


『なんですか』


『……いら、ないんですか?』


『ハイ』





 彼女は一体何がしたかったのだろうか。すぐに辿り着いた答えは、罰ゲームか何かで俺に告白してこいとでも言われたのだろうということ。





『誰かに言うように言われたんですね……』





 じゃないと、こんな真っ直ぐに好きな奴のことなんて普通見られないだろうし。


 そんな、ただひたすらに(真顔で)見つめられたら、俺の方がちょっと困るというか。目力強いというか。ただの男子高校生には刺激が強すぎるというか。






『何をですか』


『いや、だから俺なんかに告白とか……』


『してはいけなかったんですか』


『え?』





 まさかと思って、もう一度彼女のことを見る。真っ直ぐに向けられた視線はとても真っ直ぐで、どこまでも澄んでいて。



 本当に、宝石のように輝いて見えた。






『返事はいりませんが、ワタシはアナタがスキです』


『……』


『それだけです』


『……え、っと。な、なんで』


『失礼します』


『っ、えぇ?!』





 彼女の引き際は、清々しいほど潔かった。

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