第09話 甘王笑住の心配事(1)
夜、お風呂上りの時間。
甘王姉妹の妹、
『普通の人はグイグイ来られると引いちゃうから加減間違えたらダメだよ。お姉ちゃん』
『おいかわ美少女を見るとね? 何が何でもお近付きになりたいって笑住も思わない?』
『思わない。そんなのお姉ちゃんだけだよ』
笑住がにべもなく放った言葉に、苺は『そっかな~?』と上体を大きく横に傾ける。
『ドライヤーするから今日はもう切るね』
『え~でも笑住が風邪引いたらお姉ちゃん嫌だしなぁ……』
『はいはい、心配ありがとう。明日は今日の分も付き合ってあげるから』
『約束だよっ!?』
苺の顔が笑住の見るパソコン画面にドアップで映りこむ。
笑住はその瞬間を逃さず保存した。
『お姉ちゃんは、なの姉と仲直りすること。そしたら約束してあげるから』
『菜花ちゃんとケンカとかしてないよ?』
『明日はデートなんでしょ? なの姉、拗れると面倒なんだから、しっかり甘やかしてあげるんだよ』
『面倒かなぁ? 菜花ちゃんはいつだって優しい……えと、はい。分かったから、そんな可愛く怒った顔見せないで。笑住』
笑住はギロリと鋭く睨み付けたが、苺はその笑住の顔を見て顔を惚けさせた。
『はぁ……(なの姉も大変だなぁ)』
『どうしたの? 一人でドライヤーできる? お姉ちゃんがいなくて寂しい? お姉ちゃんも寂しいからゴールデンウィークにでも帰ろうかな? ん? 笑住、顔赤い? 風邪!? 大丈夫!? 熱は!? お母さんに言って薬飲まないとっ!!!!』
笑住は『平気! おやすみ』と言って、やや強引に通話を終わらせ脱衣所へと移動する。
髪を乾かしたところで、母親の
「いっちゃんから連絡が何通もきてるけど……いつもの?」
「お姉ちゃんの心配性が出ただけ。無視していいよ」
苦笑する紅美と「おやすみ」を交わし、笑住は足早に部屋へと戻り布団に包まった。
ドライヤーを当て過ぎたことでクルンと癖の付いた毛先を伸ばしつつ、笑住は照明から下がる紐に手を伸ばし明かりを落とす。
「……ゴールデンウィーク、かぁ」
早く来ないかな、と頬を緩ませ眠りに就いた。
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