ひなまつりライブ!

にゃべ♪

夢を叶えるトリ

 気がつくと暗い世界にいた。どこだか分からないものの、俺はすぐにピンとくる。ここは夢の中だ。夢の中で自覚があるのを明晰夢と言って、過去にも何度か見た事がある。俺は、取り敢えずこの世界を冒険する事にした。

 すると、すぐに人々のざわめきが耳に届く。俺はその音の正体を確かめるために歩き出した。


「えっ?」


 そこにあったのは行列。多くの人が並んでいた。見ていた俺も吸い込まれるようにその最後尾につく。一体これは何の行列なんだろう?

 列が進んで建物の中に入ってみると、そこはライブ会場だった。チケットとかないけど、まぁ夢の中だからいいのだろう。


「みんな~! 今日はひなのライブにありがと~!」


 ステージに登場したのは、俺の推しの人気ソロアイドルの桃山ひなだった。彼女のライブは『ひなまつり』と呼ばれていて、チケット争奪戦が行われる程の人気だ。俺も一度も生で見た事はない。

 夢の中とは言え、憧れのひなのライブを見られるだなんて最高だ。


「みんな~ひな祭りに集まってくれてありがと~!」

「うおおおお!」


 ライブは無茶苦茶盛り上がった。知ってる曲も知らない曲も披露されて、俺は声が枯れるほどコールする。普段は絶対やらないオタ芸も全力で踊りきった。

 サイリウムを握ったのなんて何年ぶりだろう。


「よ~し! もっと盛り上がってくよ~!」

「ひな~っ! 最高! うおおおお!」


 推しのアイドルと会場のオタク達が一体になる。これだよ! ライブはこの瞬間が最高なんだ! いつまでもこの世界に浸っていたい……。




 気が付くと、俺は見慣れた天井を眺めていた。どうやら至福の時間は終わったらしい。身体に残る心地良い疲労感は、マジでライブに参戦していたみたいだ。


「本当にあれは夢だったのか? もしかして」

「そうだホ。ボクが見せた夢だホ」


 カクヨムのトリに似た鳥が覗き込んできた。突然のトリの降臨に俺の息が一瞬止まる。そうか、俺はコイツの封印を解いたんだ。そうしたらお礼をするって言って、それで――。


「お前の夢は叶えたホ!」


 トリはそう言うとどこかに飛び去っていった。有難う。夢でも夢を叶えてくれて。ひなまつりを体験させてくれて。

 までも、出来ればリアルなライブを体験したかったなぁ。

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ひなまつりライブ! にゃべ♪ @nyabech2016

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