廃ビル 相葉視点

佐野と別れ一人廃ビルに入った相葉は薄暗いビルの廊下を慎重に歩く、未来視で見た場所の窓にはホームセンターの看板が立っていた。だが一階や2階は看板が見えるほどの高さに無い、つまりそれより上の階だ 

この先に何があるかそれとなく見えてはいる

意を決して階段を上る 

想定通りで受け入れ難い光景だ

そこには血の海が広がっていた

強烈な鉄の匂いと無惨なその光景に胃物を吐き出しそうになるが唾を飲んで目を逸らしなんとか堪える 上へ上がるため手すりを掴んだその手は震えていた   

3階に上がり人が居ないのを確認してホッとしたのも束の間上の階から何かが破裂したような音が聞こえた。

これはヤバい焦って階段を駆け上がると

そこにはさっき見た光景よりも血に塗れた地獄が広がっている。

非現実的なこの状況に何かを思い出しそうになるが嫌な気がしたので目を逸らす。

目をそらした先の開いたドアに動く何かの影を見つけ急いで物陰に隠れる。

奥から出てきたのは僕より小さそうな小柄な少女 左手は血に濡れて大きな何かを持っている 「やり過ぎた」

小柄な女の子が細々しい声を放った

「だろうね 瀕死じゃんせっかくの同郷だってのに 」

少女が声の方に顔を向ける

奥から少女の二倍ほど有りそうな長身の男が現れた 少女が持つその何かを触れる

それは人だったそして僕は知っている彼の事を 黒森ナオトそれが彼の名だ

一度話したことがある雨が降っていて傘がない彼と一緒に寮へ帰った

なぜ彼がいるのかよく分からないが助け出さなければあのままじゃ何もせずとも死んでしまう。

何とか助け出す方法は無いかと3人から目を離し周りを見渡す。 

すると

何してんの

あの少女が僕に気付き左手に持つナイフで首を斬る

コレは

「何してんの」

未来だ 僕はすぐさま身をかがめナイフを避けて表に出る

「なんで分かった?」

少女が少し不機嫌そうに刺さったナイフを抜こうとしている

諦めたのか太ももからさっきよりもゴツいナイフを2本出して構えた

「偶然? いやまさか… これで俺らと同じならひでぇ豪運だ」

いつの間にか黒森を担いでいた男の方が口に手を当てながら相葉を不思議そうに見ている

「あいつ嫌い」

少女の方は明らかにイラついていた

「あの 彼を返してもらえませんか」

自分でもびっくりしたこの状況をどうにかしようと言ったにしては馬鹿すぎだ

案の定二人の顔は不信感の塊と化した

「あ、相葉、、く」

知っている声が聞こえて気がついたようだ

「黒森くん そうだよ相葉だよなんで君がここに居るのかよく分からないけど

一緒に寮へ帰ろう」

僕は気がついた黒森くんに言葉をかけた

すると僕の視界はまた切り替わった

男が僕の腹に弾丸で穴を開けるらしい

「ちょいちょい お前ら知り合い?」

マジかよと男が頭をかく

じゃあ 男と少女は目を合わせ

きた

僕は男が銃の引き金を引くギリギリで体を動かしそのまま真っ直ぐ進むと少女が上からナイフを刺してくるので、それをまた避ける。

「は? 避けんなよ」

少女がまたも避けられた事で口調が崩れた

視界が揺らぐ分からない今見えているものは今いる場所と同じものなのか。

未来が見え続けると言うのはこういう事なんだなと涙と絡まり流れてる血を服の袖で拭う

まずは彼を助けようとそのまま足を進めた

「あんた未来でも見えてるの すごいね

じゃあ見えても仕方なくしてあげる」

「は」

見えたはずだった、見えたはずだが少女が何をしたのか見えない  速すぎる

その時すでに僕の目には血が写っていた

咄嗟に目を瞑るが想像した痛みはやってこない、恐る恐る目を開けると目の前には僕を庇うように誰かが立っている。黒森だ、そう気づいた時彼はナイフを庇った血だらけの腕を垂らし体を後ろに倒すが慌てて支えた事で地面にぶつかる事は無かった。 死角で見えていなかったが今のは相打ちだったようでもう一方の少女の方も頬が無惨に切れ震える手で押えている、だが不思議なことに傷の割に黄色い目の奥は波一つ立っていない。少女の異様な態度に目を当てていると

「すげぇ友達思いなんだな」もう片方の大きな男が近づいて話しかけてきた「お前もそいつも」男が少女の横に来ると少女を担ぎ上げる。

「じゃあ 今日のところはそちらの負けでお互い退散って事で 」

「は」 最初に反応したのは担がれた少女だった

「やる事はやったし 君を組織に返さなきゃね」男は少女を見てそう言った、見えたはずの少女の不服そうな反応も無視して

「そっちだって彼すぐにでも介抱しなきゃ同郷とはいえ死にはしなくとも後々尾を引きそうだし 少なくとも今やっちゃうほど2人ともつまらなそうに見えねぇし」

勝てる前提か 僕もそれで良いと抱き抱えたままの黒森くんの腕を自分の肩に回す。 その動きで察したように、彼は目で帰ることを拒んだ「君にも事情があると思うけど今はもう無理だ」 黒森くんもこれ以上拒む体力も無いのか身を僕に投げる「いつか会えたらまた仲良くしようねぇ」 男は薄気味悪い笑顔を僕に向けてた。

「ねぇ 任務は何とかなったよ だけどせっかくサンプルがいるのに何で置いて帰るの」 サンプル? あぁ 黒森くんのことかだから連れて帰ろうとしたんだ。

「まぁまぁ もういいの 良くは無いけど またどうせ会えるさ」

そう言いながらも2人は闇に消えていった。

僕は安堵で足の力が抜けそうになるが、何とか耐えて黒森くんを連れて階段を降りる。 すると最初の男たちが血まみれで倒れていた場所を過ぎた頃、1階と2階の間の階段で佐野くんが下から上がってくる。

良かった死体は見せずに終わった。

「お前遅––– は? 」

黒森くんを見た彼は取り乱すが ヘトヘトだった僕ら2人を下から支える。

やはり良いやつだ。

「とりあえず 下に降りて救急車–– 」

「いい 寮に帰して バレたく無い」 黒森くんが声を振り絞る、状況から考えて何か言えない事情がありそうだ。

「帰ろう 寮に」

僕も賛同したことで空気に押されたのか佐野くんは納得してくれた。

「てか 赤坂さんと浅見さんには何て言うんだよ 店きてから相葉が居なくなったこと誤魔化すの大変だったんだぞ」

「僕は黒森くんの応急処置だけして2人で寮に帰るよ 佐野くんは赤坂さんと浅見さんさんに僕が用事があって今さっき先に帰ったって言ってくれれば良いから」

「分かった……… 。 じぁ 2人で黒森くんを運ぼう 」

僕らは一階まで降りて 赤坂さんと浅見さんの説得に佐野くんが行き、その間黒森くんが教えてくれたリュックの置き場へ行きナイフをビニール袋へ入れて、服を着替えさせた。 「介抱してくれてありがとう 」「こっちこそ助けてくれてありがとう」 「…ごめん 迷惑かけて」黒森くんは起き上がって帰ろうと歩くがその足は辿々しかった「大丈夫? やっぱり病院–– 」「良いんだ 今までと同じだよ だから大丈夫 1人で帰るから」黒森くんの顔色は青白く今にも倒れてしまいそうだった、せめて肩は貸したいと粘って何とかふたりで帰る事になった。

寮に帰ると1番近い僕の部屋に黒森くんを寝かして、僕は救急箱を取りに広場へ走ったすると先に帰っていた佐野くんが救急箱を手に持ちこちらに走ってきた。

「黒森くんの容態は?」「今僕らの部屋で寝てもらってる」

僕らは部屋に戻ると血で真っ赤に染まった服を脱がせお湯で絞ったタオルで拭いた。着れる服が無いので佐野くんの体操着を借りて着せそのまま三人で泥のように寝落ちた

















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