第21話 幕間(秘密)
その日、通村とは血が繋がっていて、みさきとは血の繋がりのない男は墓地にいた。
墓は県をまたぐほど遠い所にある。
この場所を知っているのは自分と離婚した嫁だけだ。
ずらっと並ぶ墓石。
カアカアと泣き喚くカラスの鳴き声がうるさい。
ここへ来ると、あの世へ旅った者との別れを再認識させられる。
「お前さえ生きていてくれれば・・・私にとって子供はお前だけで良かったんだ」
墓石に線香を供えながら、こみあげてくる涙を堪える。
通村はこの場所を知らない。もちろん、みさきも知らない。再婚した嫁でさえ知らない。
そして、ここに誰が眠っているのかも。
「美波・・・」
嗚咽を漏らす。頬を涙が伝い、やがて決壊したダムのように溢れ出た。
通村は知らない。いや、知らされていない。通村に姉がいたことを。そしてその姉の名前が「美波」であることを。
それは男が隠し続けている秘密。
誰にも話したくない、誰にも知られたくない秘密だった。
事故物件請負人 通村洋二 モナクマ @monakuma
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