第22話 滝川は公太と針山と夏祭りを満喫したい
当日。駅前で公太君と待っていると針山さんが手を振って駆け寄ってきた。
「お待たせ~!」
黄色い生地に花柄の着物は明るくて元気で彼女によく似合っている。
三人で夏祭りに繰り出すとやはりというべきかたくさんの出店が並んでいた。
金魚すくいに射的などの遊びもあれば、焼きそばやイカ焼き、ホットドッグなどの食べものもあって食欲をそそる。私は右側に公太君、左側に針山さんの手をつないでいた。
ふたりともはぐれないようにと決めたのだが、ふたりとも喜んでくれた。
私と比べるとどちらの手も小さくて可愛らしい。彼らの手を守りたい。
と――私はりんご飴の屋台を見つけた。甘いものが好きな公太君が喜ぶかもしれない。
「公太君、りんご飴があるよ。食べる?」
すると彼は屋台に近づいて「りんご飴ください」と店員さんに告げて、お金を払って飴を受け取ると、それをなんと私に渡してくれたのだ。
震える手で受け取る。公太君からご馳走されるなんて夢みたいだ。
貴重なお小遣いを私のために使ってくれる喜び。それだけで胸がいっぱいになる。
「ありがとう。大切に食べるね」
「りんご飴一個くらいで大げさじゃない?」
ちょっと引いた顔で針山さんが言うと私は首を振った。
「大好きな人がくれたから嬉しくて……」
歯を立てるとパリパリとした飴の食感とりんごの爽やかな香りがした。
りんご飴は好きだけど大好きな人から貰ったものはいつも以上においしい。
気づいたら、完食していた。
時が飛ぶというのはこういう感覚なのかもしれない。
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