第14話 お洋服を買いにいこう
「お洋服買いにいこう」
「いいね。公太君が似合う服を私が選んでみせるよ」
「そうじゃなくて。滝川のお洋服を買いにいくの」
「……へ?」
金曜日の放課後。帰り道をふたり並んで歩きながら雑談をしていると、公太がそんな提案をしてきたので滝川は思わず間の抜けた声を出してしまった。公太の服を選びに行くのなら話もわかるが、まさか自分のとは想像していなかったのだ。とはいえ、愛する彼の頼みなのだから、断る理由は何もない。
「私は構わないけど、どうして?」
問いかけに公太は「うーん」と唸ってから。
「滝川って前とずいぶん服の好みが変わったなーって思ってさ」
「ああ……言われてみればそうかもしれないね」
滝川は小学生時代は両親の意向もあってかフリルつきの可愛らしいドレスやゴスロリなどを着こなしていたのだが、成長するにしたがってパンツルックを好むようになった。
長い脚が映える簡素な着こなしはそれはそれで似合っており、どことなく王子様的な印象を見る者に与えていた。
「たまには趣向を変えてみるのもいいかもしれないと思って」
「……ありがとう」
「僕が滝川に似合う服を選んであげる」
胸を張って目をキラキラと輝かせて宣言する公太に滝川は嬉しくなった。
彼がこんな風に自分から提案をすることなど滅多にない。
「期待しても、いいかな」
「どれだけ期待してもいいからね」
「それは楽しみだよ」
明日はデパートで洋服を選ぶ目的を兼ねたデートだ。
予定が埋まり滝川は内心ワクワクの気持ちが高まる。
けれど、この時滝川は失念していた。
公太がどのようなものを好んでいるかということを。
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