第5話 デートの終わりとフルーツサンド

楽しいデートが終わって家に帰るとき、ふたりはバスに乗ったのだが満席で座ることができない。滝川はつり革をつかまえて立つと公太に言った。


「私の腰につかまって」

「……うん」


公太は滝川の腰に手をまわしてコアラのように抱き着く。

満席だったのは次のバス停までだったので彼らはすぐに隣同士の席に腰かけることができたのだが、少しの間だけでも滝川にとっては役得な体験となった。


バスを降りてしばらく歩いてふたりはようやく家にたどり着いた。

並び立つ家。お隣さん同士の関係。玄関の前に立って滝川は公太に訊ねる。


「夕食は何が食べたい?」

「軽いの……」

「そっか。オムライス食べたものね。じゃあ、フルーツサンド作ってくるね」

「うん」

「明日は何時に起こしにきたらいいかな」

「九時くらい、かな」

「今日はたくさん遊んだからね。公太君がいい夢を見られるように」


爽やかに一旦別れを告げてから滝川は自分の家に入る。

ふたりとも両親が多忙で滅多に家に帰ることがないため、実質的なひとり暮らしをしており滝川が家事のできない公太を世話している。

苺とクリームのたっぷり入った甘いフルーツサンドを手際よく作ってから、彼の家へともっていき、ふたりで一緒に食べてから雑談に花を咲かせてから外へ出ると空には星が瞬いていた。月明りに照らされて滝川の金髪が鈍く光る。


「公太君、また明日。おやすみ」

「……おやすみ。今日はありがとう。楽しかった」

「私も最高に楽しかったよ。いい夢を」


滝川は公太の右頬におやすみのキスをしてから、自宅に帰って風呂に入ってパジャマに着替えてベッドに入った。

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