第3話 公太のお願い
ポップコーンを交互に食べ進め、喉を潤すために飲み物を飲む。
同じ映画を隣同士で観ることができる幸せに滝川は浸っていた。
あっという間に上映は終了しエンドロールが流れると滝川は穏やかに言った。
「君がよかったら最後までいてくれると嬉しいな」
「うん。僕はいいけど」
「ありがとう」
エンドロールが終わる前に席を立つ客が一定数いるので、その間に席を立つと混雑もするし小柄な公太が人と衝突するかもしれない。
わずかな懸念も見逃さず完璧に対処する。
自分のわがままということにすれば自然な形でお願いをすることもできる。
全科目学年一位の明晰な頭脳を恋人と過ごすために使う。否、滝川はそのために学年一位にまで上り詰めたといっていい。他の順位ではダメなのだ。
一番でなければ彼の傍にいて守護できる騎士にはなれない。
公太よりも先に立ち上がって優しく彼の手をとって立ち上がらせ、映画館を出る。
外はまだ昼だった。
「滝川、今度は僕がわがままを言っても……いいかな?」
上目遣いで訊ねてくる公太に滝川の心臓が高鳴る。
この幼馴染はたまに反則的な可愛さを見せてくる。
強さが男らしさだと言われているが、可愛い男子がいてもいい。可愛くて何が悪い。
「うん。もちろんだよ」
「オムライスが食べたい」
「いいよ」
公太は軽く滝川の服の袖を摘まんで言った。
「今度は僕が案内するから……」
「ありがとう。よろしくお願いします」
ひとつひとつの仕草が大変に可愛らしい。
人によっては幼いと思われるかもしれないが、滝川には関係がなかった。
誰がなんと言おうと彼の可愛さは否定できない事実として存在している。
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