第4話 大地の轟
山に吹雪がやってきた。
別にそういった季節だから来たものではない。
おそらくは自身の加護が『氷の加護』に負けたのだろう。
そう考えたフェンリルは戦闘態勢に入る。
(遂に殺しに来たか…!)
フェンリルは胸を踊らす。
何百年ぶりかの好敵手。
「来てみろ!レイラ!」
すると正面に現れた者はーー。
「『
(!?レイラではない!?)
アベルだった。
アベルは風の刃を送ってくる。
「『
次の瞬間、土の壁が現れアベルの風の刃を相殺する。
(レイラはどこだ…?)
ここでフェンリルは加護の差を思い知らされる。
フェンリルの加護は地面に触れいているところから魔力を吸い上げるのみだったがレイラの加護は魔力を吸い上げることは勿論のこと、吹雪の中で身を隠すこともできる。
(しかも『選択』までできるのかよ!?)
『選択』。
それは自身の加護によって相手に起こす悪影響を味方に及ばせないために加護の恩恵を受ける者を一定時間ではあるが自身の他に1人だけ選べるというもの。
(一気に不利な状況から始まったな…!)
と、そこで木の影から氷の塊が飛んでくる。
「くっ…。」
(この不意打ちはつらい!この状況がずっと続くのか!?)
このままではまずいと感じ取ったフェンリルだが切り札を切るには早すぎる。
このままやられても死に、切り札を切った場合は不利な状況から脱出できるかもしれない。
(…仕方がない。)
そう判断したフェンリルはーー。
「我が加護をくださる偉大なる神よ。」
(!詠唱が始まった…!)
「この愚かなる神獣に力を与えてください。」
山全体がフェンリルの魔力に覆われる。
「…『
〜〜
「じゃあ作戦を話すよ?」
「どんと来い。」
「まず、私の加護が押し合いに勝つからフェンリルはこのままだと判断して切り札を切ります。」
「そんなに簡単にきってくれるか?」
「まあ相手も多少は粘ると思うけどあのフェンリル判断早いから。」
「なるほど…?」
「それで切ってくる切り札なんだけどこれがまあ強くて。」
「どんなやつなんだ?」
「『
「ん?つまり?」
「そのまんまだよ。山から土の手が出てきたりしてフェンリルの意のままに操れるの。」
「強いなぁ…。」
「でもそれは魔力消費が激しいはずだから3分から5分くらいしか持たないはず。」
「ふむふむ。」
「だから、ここからは追いかけっこの始まり。アベルは逃げに専念して。多分凌ぎ切るので精一杯になるから。」
「レイラは?」
「多分かくれんぼしてもすぐに見つかるようになるから逃げつつ隙を見て攻撃。」
「それを3、4分続けると。」
「うん。それで、できるだけ時間を稼いだら私の大魔法を放つから離れていて欲しい。」
「わかった。じゃあフェンリルの大魔法が切れたタイミングで俺たちが袋叩きにするってことだな。」
「いや、ちょっと違うかな。」
「ん?」
「袋叩きにするのは私だけでいいから渾身の一撃を放って。」
「渾身の一撃…。」
「うん。本当に一撃だけでいいから確実にフェンリルを殺せるような威力をもった攻撃をして。」
「だいぶ時間かかるけどいいのか?」
「大丈夫。多分途中からフェンリルは大魔法を全部私に注ぎ込むから。」
〜〜
(ここまでは計画通り…!後は頼むぞ、レイラ…!)
「かくれんぼは終わりか?レイラ。」
「その魔法使うとフェンリルって怖い顔になるよね。」
そう言いながらレイラは空に浮かんで氷魔法を放つ。
「無意味だ。」
しかし、レイラの魔法は山から触手のようなものが浮き出て相殺される。
「そのような小さな魔法は意味がないとわかっているだろう。」
「…そうだね。そろそろ真面目にやるよ。」
そう言ってレイラは杖に魔力を込める。
「『
そこで大量の水が押し寄せてくる。
「くっ…。」
(おいおいそれは…初級魔法だろう!?)
初級魔法でこれほどの質量と威力が出るものなのかと感嘆するフェンリル。
「『
次の瞬間、自身に降りかかった水が凍る。
「ちっ…。『
地面から出てきた棘が氷を砕く。
「…こっからは大魔法いくよ。」
「はっ、こいよ。」
レイラは再び杖に魔力を込める。
「『
今まで降っていた雪が横殴りに降る。
「これ、時間が経つにつれ凍ってくやつだろ…!」
「まだ終わってないよ。『
「うおっ!?」
瞬間、
「この程度…!ガイアっ!レイラを殺れ!」
山から大量の手が出てきてレイラを襲う。
(ここからが勝負どころだね。)
レイラはフェンリルの魔力が残り少ないことを魔眼で確認し、一気に麓の方まで逃げながら降りる。
「アベル!いる?」
「いるよ!もうちょい溜めたいんだが…」
「わかった!」
これならガイアでフェンリルが魔力切れを起こすと同時に放てそうだと考えるレイラ。
(いざとなったら私がトドメを入れないとね。)
そう思い、レイラは杖に魔力を込める。
「『
氷の壁がレイラを守る。
「『
大量の氷柱が生成され、放たれる。
(あとは質量で押していけば時間を稼ぎ切れるね。)
レイラは冷静にそう判断した。
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休日になるとすんごく書ける。
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