解説、ウクライナ陸軍

第1話 機械化旅団

　ウクライナ陸軍は、旅団という単位を基本とした編成になっています。

　この旅団とは、概ね2000〜7000人の兵士が所属している部隊を示す、部隊編成上の単位のことで、主力となる戦闘部隊に加え、それを支援する補給、衛生、通信などの部隊が付属した、諸兵科連合部隊です。

　国によっては、このような編成上の基本となる単位が師団（一万人前後）になっていることもあり、例えば米軍やドイツ軍は師団が、日本の自衛隊には師団と旅団の両方が、編成上の基本単位として設定されています。

　この編成上の基本単位となる部隊に配属された隷下部隊の規模も、大隊が中心となっていることもあれば、連隊が中心となっていることもあり、国によっては師団の下に旅団戦闘団と呼ばれる旅団のような部隊が付いていたりと、かなり多種多様です。

　この部隊編成の単位については、かなり奥が深いので、興味がある方がいれば、ご自身で調べてみて下さい。

　さて今回は、ウクライナ軍において最も数の多い旅団の一つである機械化旅団の編成について紹介していこうと思います。

　まず、ウクライナの機械化旅団において主力となっているのが、機械化大隊です。

　機械化大隊とは、主に機械化歩兵（自動車化歩兵の場合もあり）を主力とした大隊のことで、概ね六百人ほどの兵士で構成されています。

　この部隊は、三個（機械化歩兵）中隊と迫撃砲中隊、それに対空砲、偵察、工兵がそれぞれ一個小隊ずつ、さらに後方支援隊で構成されています。

　規模で言えば、自衛隊の連隊を少し小さくした程度ですが、自衛隊の連隊が、一部を除いて自動車化歩兵で構成され、トラックを主力としているのに対し、ウクライナ陸軍の機械化大隊については、かなりの高い割合で、装甲兵員輸送車や歩兵戦闘車などの装甲車が配備されているものと思われます。

　それぞれの機械化旅団には、この機械化大隊が三つ配属されており（二個機械化大隊と一個自動車化大隊という編成もある）、これが旅団の主力になっています。

　次に紹介するのは、戦車大隊です。

　この部隊は三個戦車中隊、合計30両ほどの戦車を基幹としており、そこに、機械化大隊と同じような工兵小隊などの支援部隊が付属しています。

　それぞれの機械化旅団には、この戦車大隊が一つ配属されており、旅団における重要な機動戦力として機能しています。

　つまりウクライナ軍の機械化旅団には、機械化歩兵と戦車が3:1の割合で編成されていることになります。

　ちなみに、ウクライナ軍の戦車旅団は、戦車大隊が四個と機械化大隊が一個、それに小銃大隊（おそらく歩兵）が二個大隊編成されているため、歩兵と戦車の比率は3:4になります。

　歩兵部隊にまで戦車を付けていることから、ウクライナ軍が、戦車と歩兵による共同作戦を極めて重視していることが窺えます。

　また、かつては主に旧ソ連製の戦車や銃を中心としていたウクライナ軍ですが、現在は西側諸国で製造された兵器が主流となりつつあるそうです。

　次に紹介する部隊は、砲兵群です。

　群という特殊な部隊編成にはなっていますが、その内訳を見ると、概ね砲兵連隊に近いと思います。

　この部隊は四個大隊（自走砲大隊が二個、ロケット砲、対戦車砲大隊がそれぞれ一個）に、本部中隊で編成されており、前線部隊へと強力な火力を提供します。

　ウクライナ軍における砲兵の割合は、他国の軍隊と比較して、かなり多いような印象を受けました。

　現在のウクライナでは苛烈な砲撃戦が繰り広げられており、それだけに、各部隊に配備されている火砲も重要な役割を発揮していると考えられます。

　また、砲兵群の中には対戦車砲大隊が存在していますが、現在、第二次世界大戦で運用されていたような、『対戦車砲』を使用している国はほとんど存在していないので、おそらくは対戦車ミサイルや迫撃砲を運用しているものと思われます。

　機械化旅団には、これまで紹介してきた主力となる部隊の他にも、防空大隊、工兵大隊、整備大隊、兵站大隊、偵察中隊、狙撃中隊、電子戦中隊、通信中隊、レーダー中隊、NBC防護中隊、衛生中隊、無人機隊などの支援部隊が配属されていますが、基本的な任務は部隊名の通りなので、今回は、特に解説などはしません。（今後、詳細な編成などが分かれば解説します）

　以上が、ウクライナ軍の主力、機械化旅団に関する解説です。

　楽しんでいただけたとしたら幸いです。