極限まで明かしつつ、何かを隠していて

本作は多数のファンを持つ長編「◆Ave Maria◆」のスピンオフに当たります。

描かれるのは、とある手術の準備から執刀を経て終了に至るまでの流れです。その描写は緻密です。作者自身が心臓の弱い(これは病気ではなく精神的にビビりという意味)人は一部を読み飛ばすよう促すほどに。

読むと現代における手術の流れがよく分かります。いや、評者には医学知識がありませんから、分かったつもりになるように騙されているのかもしれませんが。

あれ? この構図、どこかで見たことがあります。手術のスタッフの中に、神業と称される技術を持ち、何かを隠しているような人物が……

分かったような気になるけれども、何か隠されているような気がする、まるで白い布に一点だけ染みが入っているような……

その医師の白衣についた染みは、何なのか。それが垣間見えます。

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