俺だけ、無限に強くなれる件について〜最弱からの成り上がり

第20話 暴食

田中の言葉が真生の耳に響き、緊張が一層強まった。彼の歩みは、まるで地面を震わせるかのような威圧感を放っていた。その姿勢からは、真生がこれまでに直面してきたどの敵とも異なる何かを感じ取った。

真生は一瞬で身構え、素早く周囲の環境を観察した。部屋のレイアウトを確認し、もしものために逃げ道を確保しながらも、相手に隙を見せないよう警戒を強めた。

田中が一歩、また一歩と真生に近づく。その足音が次第に響く中、真生はその冷徹な目つきに見入られるような感覚を覚えた。まるで自分の動きを全て見透かされているかのようだ。

「お前の力を、しっかりと試してやる。」田中は再び冷酷な言葉を口にし、その目に決意を浮かべながら、突然、真生に向かって突進してきた。

真生の反応は鋭かった。彼は即座にその動きを捉え、身をかわしながら田中の背後を取ろうとする。しかし、予想以上に素早い。田中はその瞬間、身体を一度止め、真生の動きを見切ったかのように方向転換をしていた。真生が感じていた威圧感とは裏腹に、田中の動きは異常なまでに冷静で計算されていた。

「こいつ…ただの力じゃない。」真生は心の中でつぶやいた。田中の動きには力だけでなく、計算された冷徹な戦術が感じられる。予測を狂わせるその巧妙さに、真生は一瞬の隙を見つけることができず、次々と攻撃を受ける羽目になった。

田中の拳が真生の胸を直撃した。強烈な衝撃が真生を後退させ、すぐさま肩を捉えるような打撃が繰り出される。痛みにも関わらず、真生は冷静さを保ち、反撃のチャンスを狙う。田中の動きが非常に緻密であることに気づいた真生は、急激に戦略を切り替える必要があった。

「俺の力を試すつもりか…？」真生は冷静に問う。しかし、田中は不機嫌な顔で睨んで答えない。ただ一歩一歩、着実に真生に迫り、再び猛攻を繰り出してくる。

今度は真生が先に仕掛ける番だ。彼は身を低くしてスピードを活かし、田中の足元を突くように蹴りを入れる。だが、田中は瞬時に反応し、蹴りをかわすどころかその勢いを利用して真生を投げ飛ばす。

「くっ…！」真生は空中で体勢を整え、地面に足をつけて着地する。その瞬間、田中の足音が再び近づいてくる。圧倒的なスピードで迫る田中の動きを捉え、真生は一瞬の判断を下した。

「ここで決める。」真生はその足元を見て、田中が放った最後の一撃をかわしつつ、逆に田中の体勢を崩すために肩を当てた。

「やっと見つけた隙間…！」真生はその隙を突き、全身を使って田中の体勢を崩し、突き飛ばす。

だが、その反応の速さに、真生は驚愕する。田中はまるで倒れることなく、足を使ってすぐさまバランスを取り戻す。まるでそのまま回転するかのように体勢を整え、次の攻撃に備えていた。

真生（まき）は、冷や汗をかきながら必死に攻撃に耐えることに徹する。自分を「ゴッドハンド田中」と名乗っていた男が立ち、手にした剣を真生に向けて構えている。その眼には怒りと冷徹さが宿り、まるで何もかもを消し去るかのような迫力が感じられた。

「もう終わりだ。お前の無力さは、今に証明される。」

田中の言葉は冷たく、鋭く真生の心を突き刺した。真生は必死に戦ったが、何度も打ちのめされ、今や力尽きて地面に膝をついている。体中が痛み、力が抜けていく。しかし、その痛みさえも、田中の剣に比べれば些細なことに思える。

だが、その時、突然、黒い影が現れた。竹迫大和だ。彼は一瞬でその場に駆けつけ、真生を守るように立ち塞がる。

「遅くなったな。だが、これからが本番だ。」

竹迫大和は静かに言いながら、その鋭い目で田中を見据えた。竹迫の周囲に、少しずつ奇妙な力が集まり始める。それは、見る者に一種の圧力を感じさせるほど強大なエネルギーだった。

田中はその姿に気づき、思わず剣を構え直す。

「お前もまた、何か秘密を持っているようだな。」

竹迫は無言でうなずき、右手を軽く前に出した。その手のひらに浮かぶ輝く光が次第に強くなり、そして、竹迫の口から一言だけ発せられた。

「鑑定。」

その瞬間、竹迫の目が一瞬青く光り、彼の視界に映るすべてが一瞬で変わった。田中の体から、無数の情報が流れ込んできた。