第2話 親友との出会い

真生がダンジョンの入り口に足を踏み入れてから数分が経った頃。周囲の雑踏の中で、真生はふと誰かの声を聞いた。


「おい、久保!お前、ダンジョン行くんだろ?」


その声を振り向くと、そこにいたのは同級生の武多迫大和だった。大和は、学校で誰もが知っている人気者で、スポーツも得意、成績も上位。クラスの中でも常に注目され、特に女子からの人気が高かった。その姿勢はまさに「カリスマ」と言えるもので、真生とは対照的に、いつも周りに人が集まるタイプだった。


「武多迫、大和…?」


真生は少し驚きながらも、思わず声をかけた。武多迫大和は、その名前の通り、クラスの中でも目立つ存在であり、真生があまり目を向けられないタイプだとしても、もちろん知っている人物だった。


「お前、やっぱり来たんだな。お前みたいなやつが勇気出してダンジョンに行くなんて、珍しいじゃん」


大和は、少し茶化すように言いながら、真生に近づいてきた。大和の明るい笑顔を見て、真生は少し緊張を解けたが、やはり自分がその中に入ることで少し恥ずかしさも感じていた。


「でも、お前、どうせ一人で行くつもりだったんだろ? それなら、俺と一緒に行こうぜ!俺も最初は怖かったけど、二人なら心強いだろ?」


大和は、そう言って真生の肩を軽く叩いた。真生はその言葉に、何だか勇気が湧いてきた。しかし、それでも心のどこかで、まだ不安が残っていた。彼にとっては、ダンジョンの中で何が起こるのか、どう戦うべきなのか、全く見当もつかなかったからだ。


「でも、竹迫…お前だって、そんなに強くなるか分からないだろ?ダンジョンの中には、モンスターだっているし…」


真生は心配そうに言うと、大和は一瞬考え込み、次にこう答えた。


「俺も怖いよ。でもさ、せっかくこんなチャンスが来たんだ。今後の人生で、こんな経験できるのは一度きりだぞ?もしこれを逃したら、ずっと後悔するだろ?」


その言葉に、真生は思わず黙ってしまった。大和のような明るく前向きなタイプには、どこか頼りになるところがあった。もし一人で行くなら、きっと途中で怖くなって逃げ出してしまうだろう。しかし、竹迫と一緒なら何か違うかもしれない、そう感じた。


「それに、俺がいるんだ。お前も強くなれるって。最初から強い奴なんていないだろ?みんな、最初は弱かったんだし。だから、俺と一緒にレベル上げしようぜ!」


大和は笑顔でそう言うと、真生の不安を少しずつ和らげるように、自信を持った言葉を続けた。


「さあ、行こう!一緒に冒険して、強くなろう!」


その言葉に、真生は思わず胸が熱くなった。普段、あまり目立つことがなかった真生にとって、竹迫大和のような存在に励まされるのは初めてだった。彼の言葉には、ただの友達以上のものがあった。真生は心の中で、少しずつその決意を固めていった。


「うん、行こう…!ありがとう、大和」


そう言って、真生は一歩踏み出した。大和と一緒にダンジョンに挑戦することで、少しずつ彼の不安も薄れていくのを感じていた。


その後、二人はダンジョンの中へと足を踏み入れた。ゲートをくぐると、最初に待っていたのは、何もかもが異世界のような景色だった。空は薄い紫色に染まり、遠くの山々が異様に大きく、空気すらも違う感じがした。ダンジョンの中は迷路のように複雑で、どこに進めばいいのか全く分からない。


「よし、まずはモンスターを倒してみようぜ!」


大和が力強く言った。その言葉に、真生は頷いた。これからどんな冒険が待っているのか、未知の世界での経験が彼を少しずつ成長させるのだろうと、真生は胸を高鳴らせながらその一歩を踏み出した。


そして、二人はダンジョンの中で初めてのモンスター、「スライム」と遭遇することになる。この瞬間から、真生の冒険が本格的に始まるのだった。

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