第3話 敵の進化
真生は、異世界の中で一歩踏み出した。その先に広がる未知の世界には、薄暗い森が広がり、どこか不気味な雰囲気を漂わせている。彼の周りには、何も聞こえない静けさだけが広がっていた。足元には不規則な岩が転がり、空はどこまでも灰色の雲に覆われている。
「さて、どうすればいいんだ…?」
真生は不安そうに周囲を見渡しながらつぶやいた。先程、スライムのような簡単な敵に勝ったことで少し自信を持ったが、次に進んだ先にどんなモンスターが待っているのか分からない。それに、もし敵が強かったら、どうやって対処すればいいのか。
「スライムみたいなやつがもっと出てくれたらいいけど、そんなにうまくいかないだろうな…」
不安もありつつ、真生は思い切って歩みを進めることにした。ここでダンジョンを攻略しない限り、外に出ることはできない。現実世界に戻れないかもしれないという恐怖が、彼をさらに駆り立てた。
「攻略しないと、このままずっとここに閉じ込められる。出ないと、何も始まらない…!」
その思いを胸に、真生は足を一歩ずつ踏み出す。森の中に入ると、空気が一層重くなり、草むらの隙間から何かがひょこひょこと動く気配がする。しかし、周囲にはその気配を感じさせるものの、姿は見当たらない。
「もしかして、敵はこの先にいるのか?」
一歩前に進むと、突如として地面が揺れ、岩の隙間から無数の小さなスライムが現れた。それぞれが青く光り、奇妙な粘液を垂らしながら、真生に向かってゆっくりと迫ってくる。
「おおっ、きたか!」
真生は一瞬、嬉しさを感じる。これなら、スライム程度なら自分の力でなんとかできるはずだ。しかし、その数が多すぎて、ちょっとした不安が頭をよぎる。
「うわ、けっこういるな…!」
小さなスライムたちは、一斉に真生に向かって跳ね回り、触れると粘液が体に絡みついてきた。真生は思わず身を引き、素早く『硬質化』を発動させた。
「硬質化!」
体が鋼のように硬くなると、スライムたちの攻撃は全く通用しなかった。真生はその硬い体を盾に、スライムたちの攻撃を防ぎつつ、隙を見て一匹一匹を叩き潰していった。
「うおおおおっ!」
真生は気合を入れて一匹、また一匹と倒していく。だが、すぐに他のスライムが新たに現れ、次々に攻撃を仕掛けてきた。
「これ…結構しつこいな…!」
真生は、スライムたちが次々に迫ってくる中で、必死に防御しながら攻撃を続けていた。しかし、その数の多さと、どんどん増えてくる敵に圧倒され、次第に疲れが見え始めていた。
「うわ、けっこういるな…!」
何匹かは倒したが、まだ周囲にはスライムが次々と現れ、真生の周囲を取り囲んでいた。その粘液が体に絡みつく感触が気持ち悪く、何度も身を引いては『硬質化』を使って攻撃を防いでいた。
「うおおおおっ!」
真生は気合を入れて一匹、また一匹と倒していく。しかし、あまりにも次から次へと現れるスライムたちに、どうしても息切れが見え始めていた。
ついに、残り一匹になったとき、スライムが再び動き出した。今度は、いつもとは違った動きで、勢いよく液体を飛ばしてきた。
「えっ!?」
真生はすぐにその液体を避けたが、その液体が背後にあった大きな岩にかかった瞬間、真生は驚愕の表情を浮かべた。岩の表面が泡を立て、徐々に溶け始めているのだ。
「やべぇ…!」
真生は内心で『硬質化』を使っておいて良かったと胸を撫で下ろす。もし、これを避けていなかったら、岩に触れた部分が溶けて、まるで酸で侵食されたかのように体が危険にさらされていたかもしれない。
だが、それがスライムにとってのチャンスとなった。溶けた岩を吸収するように、スライムがその岩の素材を取り込んでいったのだ。
「これ、もしかして進化したのか…?」
真生はその様子を見て、胸の奥に不安が広がった。今までのスライムとは比べ物にならないほど、大きく、そして強力になったように感じた。実際、そのスライムの姿は、まるで岩の硬さをまとったように見え、どこか別物に変わってしまったのだ。
「くっ、最悪のタイミング…!」
真生は心の中で叫びながら、再び『硬質化』を使い、攻撃の準備をする。しかし、岩を吸収したスライムはその硬さをまとい、今までのようには簡単に攻撃が通らない。
「硬質化でガードしてるけど、全然効いてない…!」
真生の拳が岩のように硬くなったスライムにぶつかるが、そのダメージはわずかにしか伝わらない。岩の硬さで、少ししかヒビが入らない。
絶体絶命――そんな状況の中、真生は頭の中で次の行動を考えた。もはやスライム相手にこんな戦いをしている余裕はない。体力も限界に近づいてきて、何とか打破する方法を見つけなければならない。
その時、ふと脳裏に浮かんだのは、先程手に入れた「ガチャ」のことだった。倒したスライムたちのポイントがあったことを思い出し、すぐに『ガチャ』を使うことに決めた。
「これで強くなれれば、なんとかなるはずだ…!」
真生は固く決心し、固有スキル『ガチャ』を発動させた。
『ガチャを開きますか?』
「はい。」
その瞬間、目の前にガチャの画面が現れた。新しいアイテムが追加されたと表示される。
『NEW武器ガチャが追加されました』
真生はガチャの画面をじっと見つめていた。必要ガチャポイントが750、今持っているポイントは1000ちょっと。スキルを引くのも良いが、今はスライムとの戦いで致命的な一撃を与えるために武器が必要だと思った。
「よし、武器ガチャを引こう!」
迷いなく『武器ガチャ』を選択し、ガチャが回り始める。画面に表示されたアイテムが一瞬で切り替わる中、真生は心の中でその結果を祈った。
「いいのでろ…!」
ガチャが止まり、結果が画面に表示される。
『Cランク:大地の槍(武器)』
「Cランク……」
真生は少しがっかりしながらも、槍が画面に表示されるのを見つめた。そのランクは高くはないが、それでも今の状況では十分に役立つ武器だ。素手で戦っていた自分にとって、槍は明らかに強力な武器だった。
「大地の槍か……。」
槍を手に取ると、重みがしっかりと伝わってきた。先端は鋭く、頑丈そうな金属でできており、槍自体が古びた風格を持ちながらも、なぜかその見た目には力強さを感じさせる。手に取った瞬間、真生はその威力を直感的に感じた。
「これで、岩スライムにも勝てるかもしれない!」
真生は新たに手に入れた槍を力強く握り、決意を固めた。今、目の前にいるスライムに勝たなければ、ここから先へ進むことはできない。この槍を使って、何としてでも突破しなければならない。
「行くぞ、岩スライム!」
槍を構え、真生は再び岩スライムに向かって突進した。スライムはその巨大な体をゆっくりと動かし、真生に向かって液体を飛ばしてきた。だが、今の真生には以前のように避けるだけの余裕はない。
「『硬質化』!」
すぐさま『硬質化』を発動し、体を鋼のように硬くする。それと同時に、大地の槍を一気に振り下ろした。
「くらえ!」
槍の先端がスライムの硬い岩の表面に突き刺さる。その瞬間、真生は力を込めて槍を引き抜こうとしたが、思った以上に硬い。しかし、岩スライムの体が少しずつひび割れていくのが感じられた。
「やった…!」
だが、スライムもそれに負けじと攻撃を返してきた。岩のように硬くなった体で反撃し、真生の体を吹き飛ばしそうな勢いで押し込んでくる。だが、硬質化した真生の体はその攻撃を受け流し、すぐに再び槍を構え直した。
「もう少しだ!」
再度槍を突き立てると、岩スライムの表面に大きなひびが入った。そのひびが少しずつ広がり、スライムの体が崩れていく。
「これで終わりだ!」
真生は力を込めて槍をさらに突き刺し、ついに岩スライムの体が粉々に割れ、崩れ落ちた。倒したスライムからは、ポイントが浮かび上がり、真生はそれを手に取った。
「ふう…倒せたか…。」
真生は汗を拭いながら、倒れた岩スライムを見つめる。その時、目の前に突然、ステータスウィンドウが現れた。
『レベルアップ!』
「おっ、レベルが上がった!」
真生は思わず叫んだ。レベルが3上がり、次の瞬間、もう一つのメッセージが表示された。
『ガチャポイント500を獲得しました』
「ガチャポイントか…!これでまた引けるな。」
今手に入れたポイントを使って、再度ガチャを引くことができる。しかし、それよりもまずは、次のステップを踏み出さなければならない。
「よし、この調子で進むぞ!」
真生は気持ちを新たにし、再びダンジョンの奥へと歩みを進めた。道の先に、どんな試練が待ち受けているのか分からないが、今の自分なら、どんな敵でも乗り越えられる気がしていた。
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